都の支援事業に応募、9月末まで実施
山九は9月12日、東京都江東区青海に今年4月開設した新倉庫「お台場輸出入センター」で、水素を燃料に使い、稼働時に温室効果ガスを出さないFC(燃料電池)フォークリフトをトライアルで利用した様子をメディアに公開した。
東京都が展開している「燃料電池フォークリフトマッチング導入支援事業」に山九と山九海陸が連携して応募、トライアル事業者として認定され、トヨタL&Fから2.5tのFCフォークリフト2台を借り受け、倉庫内の作業に投入。8月2日から9月30日までの間、旧来のバッテリーフォークとの性能の差などをチェックした。
山九がこの日、メディアにお披露目したFCフォークリフトは音が静かで、スムーズに稼働しており、バッテリーフォークと遜色ない動きのように見受けられた。排気ガスの臭いがしないのも、労働環境改善の上で大きな利点になりそうだ。
FCフォークリフト
山九はグループで2030年度までにCO2排出量を20年度実績比で42%削減する目標を掲げている。新倉庫もCO2排出量削減や労働環境改善に配慮した「次世代型倉庫」を標ぼうしており、現場でFCフォークリフトを使うことにより、物流領域の脱炭素に貢献していきたい考えだ。
燃料電池のユニット。右上のプラグから水素を充填する
充填用プラグ
同日、新倉庫内で記者会見した山九 首都圏エリア 東京支店 お台場物流グループの永井孝幸グループマネージャーと、山九海陸 京浜事業部 物流部 東京・川崎物流作業課の里見洋輔課長は、FCフォークリフトはバッテリーフォークリフトと操作性はほぼ変わらず、乗り心地も良いため、長時間運転に適していると語り、本格的な利用に期待を示した。
同時に、普及には一段の運用コスト低減や水素供給のインフラ整備などが課題との見方を示すとともに、「3.5tなどもう少し大型の機器ができればいいと思っている。室内だけでなく屋外の大型貨物の荷役に使えるようになると有難い」と感想を述べた。
FCフォークリフトはこれまでに国内で400台以上が導入されているが、価格の高さなどがネックとなり、一気に普及が進むまでには至っていない。都は今回の事業を通じて実際に物流事業者の現場で操作性の良さなどを体感してもらうことで、導入の機運を高めていくことを念頭に置いている。
山九からは好感触が伝わってきただけに、都には今後も実効性のある支援事業を継続的に講じていくことが、物流領域の脱炭素化促進に向けて強く期待されそうだ。
(藤原秀行、川本真希)