ライナフと三井住友海上、「置き配」の盗難リスク補償する損害保険を運送事業者向けに提供へ

ライナフと三井住友海上、「置き配」の盗難リスク補償する損害保険を運送事業者向けに提供へ

利用促進図る

オートロックマンションでも利用可能な「スマート置き配」を手掛けるライナフと三井住友海上火災保険は10月24日、置き配で届けた荷物が何者かに盗まれるリスクをカバーする新たな損害保険を、運送事業者向けに提供すると発表した。

三井住友海上の100%子会社で損害保険代理店の三井住友海上エイジェンシー・サービスも連携。運送事業者と消費者の双方が安心して荷物を扱える環境を整え、置き配の普及促進を後押ししたい考え。ライナフが保険を運送事業者に紹介し、三井住友海上と三井住友海上エイジェンシー・サービスが加入手続きなどを担う。

保険の加入申し込みは今年11月ごろをめどに受け付けを開始する予定。ライナフと三井住友海上は初年度に100件の加入獲得を目指す。

政府がトラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場混乱が懸念されている「2024年問題」などへの対策の一環で、置き配の利用を促すポイント制度導入を打ち出していることから、今後さらに利用が広がるとみて、ライナフと三井住友海上がタッグを組むことにした。

新たな損保商品は、運送事業者が置き配した「ECサイトなどを通じて購入した物品」の全てが補償の対象となる。運送事業者が注文者の指示に基づいて置き配をした後、盗難事故に遭った場合、注文者に対して購入金額を補償する。ライナフの「スマート置き配」を利用していない運送事業者も損害保険を利用できる。

保険期間は1年間で、標準的な補償内容の場合、支払限度額は1配送当たり1万円、最低保険料は年間10万円でそれぞれ設定する方向。

ライナフと三井住友海上は日用品の利用にとどまりがちだった置き配が、損害保険のカバーにより、付加価値のより高い商品にも広がっていくことを期待している。

東京都内で10月24日に記者会見したライナフの滝沢潔代表取締役は「盗難に遭った場合に誰が補償するのか、の課題により置き配が進んでいない。三井住友海上さんとの協業でそうした課題を解決できる」と意義を強調。

三井住友海上公務第二部の町田雄一課長は、運送事業者にとっても保険の利用で不安解消につながると指摘した。


会見後の撮影に応じるライナフ・滝沢氏(右)と三井住友海上・町田氏

「置き配」についてライナフが行ったアンケート調査では「置き配導入対応後、置き配を利用したことがあるか」について、約6割が「利用したことがある」と回答。「利用したことがない」と答えた際の理由は、「盗難」「紛失」の不安を懸念する声が寄せられていることが分かった。

一方、大手物流会社のデータによると2021年1月~22年3月の間、実際の「盗難」や「紛失」などによる盗難保険の適用率は0.0008%と、10万件に1件未満だったという。


「スマート置き配」の仕組み(記者会見の写真以外はいずれもライナフ提供)

(藤原秀行)

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