先進技術駆使した「自動物流道路」を10年で実現提唱

先進技術駆使した「自動物流道路」を10年で実現提唱

国交省審議会が整備の在り方で中間取りまとめ

国土交通省は10月31日、社会資本整備審議会 道路分科会 国土幹線道路部会が策定した「高規格道路ネットワークのあり方」の中間取りまとめを公表した。

高規格道路(高速道路)に関し、2050年に「世界一賢く・安全で・持続可能な基盤ネットワークシステム(WISENET)」を実現することを目標に設定。そのための方策として、道路管理のDX促進、自動運転実現のための技術整備、EV(電気自動車)普及のためのSA・PAでの急速充電器整備などを列挙した。

また、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」など、構造的な物流の課題克服と温室効果ガス排出削減を図るため、先進技術を駆使して自動化・省人化を図る「自動物流道路(オートフロー・ロード)」を整備することを提唱。「関係者と連携して実現可能性を早期に見極め、今後10年での実現に挑戦していくことが重要」と国交省に検討を始めるよう促した。

国交省は中間取りまとめと併せて、国交省道路局が今後取り組む具体的な政策を明示した「WISENET2050・政策集」も発表。この中で、自動物流道路の検討を始める考えを明らかにした。

自動物流道路に関しては、既に日本が人口減少局面に入り、税収や高速道路の料金収入が大きく伸びていくことは考えにくい中、構想が先走りするのではなく、まず巨額に達することが見込まれる整備費用をどう確保するのか、自動物流道路の展開で得られる利益が費用をどの程度上回る可能性があるのか、慎重に議論していくことが強く求められる。

海外の自動運転カート構想など引用

中間取りまとめは、高規格幹線道路網(高速道路網)は計画されてきた1万4000kmの約9割りが開通するなど、着実に整備されてきたものの、暫定2車線区間が全体の4割を占めるなど「サービスレベルの面では都市間の移動性(都市間連絡速度)が諸外国に大きく劣後するとともに、大都市圏および地方都市における渋滞は経済的にも環境面でも大きなロスを生じるなど、多くの課題を抱えている現状にある」と指摘した。

併せて、災害に対する脆弱性や物流危機、インフラ老朽化などへの対応も重要と強調。道路管理のシステムのDXとGX(温室効果ガス排出削減のための再生可能エネルギー普及促進などの活動)を徹底的に推し進めるよう提唱した。

自動物流道路は、道路空間を最大限活用し、自動車に頼らず徹底した省人化を図る低炭素な物流システムを導入することを想定。主要都市間を結ぶ地下トンネルに自動運転カートを走らせる物流システムを計画しているスイスや、低コストのリニアモーターを使って完全自動運転の物流システムを検討している英国の事例を引用した。

その上で、「逼迫する物流需要を踏まえれば、こうした発想を実現していくスピード感が重要であり、通常であれば 30 ~50 年とかかるパラダイムシフトを 10 年で実現する気概を持って当たることが重要である」と訴え、検討を進めていくよう求めた。

物流関連ではこのほか、SAやPA、道の駅などの拠点施設について、中継輸送のドライバー交代やダブル連結トラックの休憩、防災、高速バス乗り継ぎといった機能を持たせて高度化していくことが重要との見解を示している。


(国交省資料より一部引用)

(藤原秀行)

中間取りまとめと政策集はコチラから(国交省ホームページ)

政策カテゴリの最新記事