【独自取材】「工事作業中の火花飛散」はご法度!

【独自取材】「工事作業中の火花飛散」はご法度!

東京消防庁が物流事業者に倉庫火災対策のポイント訴え

2月12日のマルハニチロ物流「城南島物流センター」(東京・大田区)、4月16日の東洋埠頭川崎支店と今年に入り物流関連施設の火災が相次いで発生している。前者では4人が死傷、後者は近隣施設に延焼する事態となった。

2017年には埼玉県三芳町で当時アスクルが運営していた物流センターから出火。東京ドームに匹敵する広さのフロアを焼損して大騒ぎとなった。一連の火災により、防火対策など大型倉庫の安全性を懸念する厳しい見方が産業界にも広がりつつある。

ロジビズ・オンラインではそうした流れを踏まえ、3月22日付で倉庫火災の実態をまとめている国内でも稀有な資料、東京消防庁統計「平成30年版 火災の実態」の内容を紹介。統計からは初期対応の重要性などを読み取ることができた。

【独自取材】 東京消防庁統計から読み解く倉庫火災の実態とリスク

このほど同庁が書面によるロジビズ・オンラインの個別取材に応じ、統計内容をより詳しく解説するとともに物流事業者への火災予防対策を提起。通常の庫内オペレーションに目配りするだけでなく、日々の防火意識や工事作業中の出火防止対策にも万全を期すよう訴えた。

「倉庫業以外の倉庫」で際立つ発生件数

同庁が書面で回答したところによれば、2008~17年の10年間で同庁管内(東京23区および29市町村)にて発生した倉庫火災は合計207件だった。単純に年平均すると20件程度で、この数値が多いのか少ないのか即座には判断しかねる水準だ。同庁も件数の規模については評価を示していない。

ただ数字をより詳細に見ていくと、倉庫火災には2つの特徴が浮かび上がる。まず年別の合計発生件数は08年の40件を最多に前半の5年は20~30件台と高めに推移したが、13年以降の後半5年はいずれも10件台とそれまでより低い水準に収まっているのが1つ目の特徴だ。

次に10年間の累計件数を事業者別に分類すると倉庫業19件、冷蔵倉庫業6件、倉庫業以外の倉庫182件となった。特に先ほど触れた08年は40件のうち38件が倉庫業以外からの出火だった。それ以外の年も7~8割が倉庫業以外の物件で占めており、14年と17年は全件が倉庫業以外だったという。倉庫業を含めた物流事業者の施設から出火した事案は全体の中で比較的低いウエートであることが2つ目の特徴といえる。

これら2つの特徴からだけで倉庫業の防火対策が進んでいると判断するのは早計だろうが、倉庫業以外の倉庫に該当する自家倉庫などについてはより注意が必要とはいえそうだ。

08年が火災件数に加えて焼損床面積(2421平方メートル)、損害額(4億7769万8000円)も突出している点は気になるところだ。この疑問に対して同庁は書面で「出火原因は放火16件、電気設備機器12件。損害規模が大きかった要因として小規模面積の施設1棟が焼損、周囲への延焼などが挙げられる」と応じたものの、その背景にある詳細な要因については判断できないと答えるにとどめた。

最近10年間の倉庫業から出火した火災状況一覧
年別合計倉庫業倉庫業以外の倉庫
倉庫業(冷蔵倉庫業を除く)冷蔵倉庫業
平成20年402-38
平成21年321130
平成22年223217
平成23年174112
平成24年262123
平成25年172-15
平成26年10--10
平成27年172114
平成28年152-12


表は東京消防庁提供

「避難経路や防火戸周辺に物を置かない」周知徹底すべし

それでは、倉庫火災の防止や万が一起きた場合の被害拡散回避へ普段からどういったことを心掛けるべきなのだろうか。同庁では立ち入り検査の結果などを踏まえ「倉庫は施設内に可燃物が多く収容され、また広い面積でありながら人が少ない。そのため火災の発見が遅れ大量の可燃物に着火・延焼して被害が大きくなりやすい傾向にある」と倉庫のウイークポイントにあらためて言及。その上で日ごろから喫煙管理や放火防止対策を講じるのに加えて、次のような取り組みを挙げた。

①工事作業中の出火防止対策に注意を払う

最近の事案では施設内の溶接や溶接作業中の火花が周囲の可燃物に引火して大きな被害が発生したものがあると指摘。「倉庫でもこれらの作業を行う際は思わぬところに火花が飛散する恐れがあると念頭に置き、周囲にある可燃物の片付けや養生を行うこと」を対策の一つに示した。

このほか消火器を準備して火災があった場合の連絡体制を確認してから作業するなど対応の手順に万全を期することも求めている。

マルハニチロ物流の事案は出火原因がまだ特定されていないもようだが、出火当時は火元とみられる5階付近で冷凍機の入れ替え工事に伴う配管の溶接作業が行われていたことが分かっている。物流業界など一部では溶接の火花が内壁に使われている断熱材に引火してフロアに燃え広がったとの見方もあるだけに、倉庫の改修工事などを計画・実施する際には必ず配慮すべきポイントだろう。

②避難経路や防火戸の周辺に障害物を置かない

同庁はまた、万が一火災になっても被害を最小限にとどめるため、従業員に避難経路や防火戸の周辺には物を置かないことを周知徹底すべきだと説明。「階段内や通路などに物を置いていると避難の支障になり大変危険。防火戸などの周辺に物を置くと防火戸が閉まらず火災が拡大する危険性もある」と警鐘を鳴らす。

併せて消防用設備などの適切な点検による施設の適正な維持管理についても触れた。こうした点を理解している倉庫では防火戸の付近や通路などに物を置かないよう注意表示を掲げ、庫内従業員への注意喚起に努めているケースも見られたという。

③従業員への啓蒙活動が重要

同庁は火災防止を十分に認識した施設の運用に加えて、従業員に対する防火意識や火災対応力を高める啓蒙活動の重要性にも言及している。さまざまな火災の事案を分析してきた経験から、初期消火で使用する消火器や屋内消火栓などの消防用設備は操作方法を訓練していないと実際に使用することはできないと明言。

「消火・通報・避難誘導など役割分担をはっきりさせ、実際の火災状況に即した実効性の高い訓練を日ごろから行うことが必要。訓練によって火災へ効果的に対応することができ、それが被害を最小限にとどめることにもつながる」と従業員への積極的な教育・訓練の実施を促している。

アスクルの事案では相当数の防火戸にベルトコンベヤーや商品が挟まって途中で止まるなどの閉鎖障害が発生したほか、火災発生通報の遅れに加えて屋外消火栓の操作不手際から十分な初期対応が取れなかったことも大規模火災の遠因とされている。

同庁が挙げた留意点は直近で発生した倉庫火災事案に当てはまるものばかりだ。物流の機能が社会インフラとして重要性を増す中、この3つの点についてより意識し、対策を進めることで倉庫火災を一段と減らしていくことは倉庫業をはじめ物流業界関係者の使命といえそうだ。

(鳥羽俊一)

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