物流関連主要団体・企業の2023年頭所感・あいさつ その1(抜粋)
「サステナビリティ」が全ての起点
NIPPON EXPRESSホールディングス・堀切智社長CEO(最高経営責任者)
NXグループは今年、新たな経営計画をスタートします。引き続き、2037年にありたい姿である長期ビジョンを目指すことに変わりはなく、さらにその実現に強くこだわってまいります。そのために重要なポイントとなるのは「グローバル市場での成長の加速」、「日本事業の再構築」、「サステナビリティ経営の推進」の3点です。
1点目のグローバル事業の成⻑の加速に当たっては、これまで以上に、お客様志向の考え方をベースにグループ全体でお客様の物流をサポートしてまいります。お客様のサプライチェーンに対し、価値の高いEnd to Endソリューションを提供していくことでビジネスの領域を拡大していくことを目指します。また、M&Aでグループに加入したcargo-partner社との連携を強固なものにして成長を加速させます。
2点目の「日本事業の再構築」においては、マザーマーケットである日本で、経営資源の適切な配置を行い、高収益な会社になることを目指します。ここで重視するのは、マーケットインの考えに基づいて事業構造や組織を見直すことです。
3点目の「サステナビリティ」については、物事を考える上での、全ての起点、ベースとなる観点です。事業を通じて、社会課題の解決に貢献することは、これまでもNXグループが果たしてきた役割であり、今後もこれまで以上に積極的に取り組みます。ただし、従来のやり方を継続しているだけでは、社会課題の解決に繋がらない世の中へと既に変化しています。特に脱炭素と人手不足の2点は物流事業における最重要の社会課題です。
これらの問題を解決していくためには、私たち物流事業者自身が意識を変え、行動を変える必要があります。自動化やDX等の技術導入は今後の鍵となりますので、地道な取り組みと合わせて力を入れて取り組みます。
龍が大きく飛ぶように、新たな挑戦やプロジェクトへの積極的な取り組みを
センコーグループホールディングス・福田泰久社長
これからの国内の経営上の最大のリスクは人材の確保です。私はこの課題に対処するために外国人労働者の就業規制の緩和を何年も前から訴えてきましたが、政府や関係各所の理解が進み、ドライバー職も解禁される見込みとなっています。また、いわゆる「年収の壁」問題に対する税制対応も進んでいますので、各部門で今まで以上に登用人材の多様化と活用を図ってください。さらに、業務の自動化・無人化、DXやAI、ロボットなどの技術を活用した効率化のスピードアップも不可欠です。
物流部門では2024年問題への対応が本格化しますが、現在の安定した利益創出と成長が物流事業以外への多岐にわたるチャレンジを可能にしています。中核事業として、諸課題への的確な対応とサービスの磨きをかけながら、今後も拡大を図ります。
国内で少子化が進む中、成長の活路として海外事業を強化しており、2023年度通期の国際関係の売上高は初めて1000億円を超える見込みです。昨年、ホールディングスに「国際事業本部」を設置しましたが、M&Aや未進出国での拠点開設などをさらに進め、グローバルな事業展開と領域の拡充に力を入れていきます。
2024年は辰年です。龍(りゅう)が大きく飛ぶように、新たな挑戦やプロジェクトへの積極的な取り組みをお願いします。同時に、グループ全体や異業種のグループ会社同士の横のつながりを強化し、コミュニケーションを深めながら自らの成長につなげてください。
社会を止めないことの責任と誇りを胸に持ち続けて
三井倉庫ホールディングス・古賀博文社長 グループCEO
「未来を描き、動き動かし続ける人」。これは昨年4月にこれからの当社グループを担う人材の採用・育成の基本方針として策定した、当社グループが求める人材像を表す言葉です。物流のプロフェッショナルでありながら、お客様のビジネス全体、そして世の中への深い理解と洞察力を持ち、その未来を一緒に描く。その実現のために、主体的に動き、周囲を動かし、物流を動かし、お客様の心まで動かしていく、という想いが込められています。
ぜひ、皆様一人ひとりが少しでもこの人材像に近づけるように、そしてそれ以上の存在になれるように意識していただきたいと思います。そして、私たちのパーパス(存在意義)である「社会を止めない。進化をつなぐ。」です。私たちを取り巻く環境はこれからも激しい変化を続けていくでしょう。しかし、これまでがそうであったように、これからも社会を止めないことの責任と誇りを、胸に持ち続けてほしいと思います。そして世界をより良い方向に動かし、心豊かで持続可能な社会を実現するため、物流の未来を見据え、本年もグループ一丸となって進んでまいりましょう。
「地球規模で考え、地域から行動」を強く意識しよう
郵船ロジスティクス・岡本宏行社長
今年の 4 月には(中長期経営計画の)“TRANSFORM 2025”の集大成となる最終フェーズの 2 年目を迎えます。目の前にいるお客様、そしてその先のサプライヤーやベンダーのサプライチェーンまでを含めたサプライウェブに、より一層踏み込んでいってください。目の前のお客様に寄り添いながらお客様の戦略を深く理解し、”Think globally but act locally(地球規模で考え、地域から行動する)”を強く意識してビジネスの拡販に取り組んでいきましょう。
“TRANSFORM 2025″を達成する上で、ESGがますます重要になっており、当社は昨年11月、2030年までに実現を目指す、温室効果ガス排出量中期削減目標を発表しました。高品質なサービスを提供するだけではなく、これまで以上にESGを意識してお客様に提案を行ってください。お客様の事業のさらなる成長、そして持続可能な社会の実現に貢献するため、常に長期的な視点を持って当社ならではの価値を提供していきましょう。
郵船ロジスティクスにとって最大の資産は従業員の皆さんです。当社が今後さらに大きく羽ばたくためには皆さん一人ひとりの成長が不可欠であり、事業と皆さんが連動して持続的に成長できる環境の構築を目指します。また、人材育成に積極的に投資することで、マネジメントのプロとして活躍する強いマネージャーの育成に注力していきます。
郵船ロジスティクスの今を支える皆さんが築き上げた社風・文化こそが、当社がさらに成長を続けていく上で重要な基盤となり、人を、ビジネスを、社会をより良い未来へつなげていくと信じています。
耐え忍んで次の芽を咲かせる1年に
SBSホールディングス・鎌田正彦社長
物流事業の成長のために倉庫への投資は必須です。千葉県野田市に今年2月、4万坪の「野田瀬戸物流センター」が竣工するほか、千葉県富里市でも倉庫建設に着工し、倉庫面積100 万坪が視野に入ってきました。「野田瀬戸」では、4万坪のうち1フロア1万坪をEC用区画とし、「EC物流お任せくん」のサービスがいよいよ本格始動します。
この事業の目的は、一つは将来日本でEC化率が大きく高まった際に、お客様の物流ニーズに高品質な物流で応えること、もう一つは大手宅配会社の度重なる値上げに対して、安定したローコストの宅配網をつくり上げることです。ロボットや宅配網拡大の投資など、相当な覚悟が必要になりますが、全社で協力してこの一大事業を成功に導きましょう。
2024年も電気・燃料費の高騰、最低賃金引き上げ、人手不足と、厳しい環境が続きます。そして物流の「2024年問題」です。残業管理を徹底し、万全の管理体制の構築が求められます。このような環境においては、規模と組織力がある会社が生き残れます。私たちはこの状況を、むしろ業容を拡大するチャンスと捉えるべきです。
今年は、耐え忍んで次の芽を咲かせる「耐芽(たいが)」の一年です。厳しいなかでも予算を達成し、良い一年になることを願っています。
(藤原秀行)