【現地取材】運輸審議会、「標準的な運賃」見直し案審議で公聴会開催

【現地取材】運輸審議会、「標準的な運賃」見直し案審議で公聴会開催

「最高値か最低値か明確に」などの意見も

国土交通省は2月13日、国交相の諮問機関「運輸審議会」(会長・堀川義弘元三井住友DSアセットマネジメント副社長)が、貨物自動車運送事業法に基づいて告示している「標準的な運賃」の見直し案を審議するため、運輸業界の関係者から意見を聴取する公聴会を東京・霞が関で開催した。

標準的な運賃をめぐっては、政府が取りまとめた「2024年問題」への対応に関する政策パッケージで、トラックドライバーの待遇改善を促進するため内容見直しを主張。

国交省が設置した官民の検討会は昨年12月、地域ごとに設定している距離制・時間制の運賃表(タリフ)で打ち出している運賃を平均8%程度引き上げるとともに、算定根拠となる原価のうちの燃料費を1リットル当たり120 円に変更し、燃料サーチャージも120 円を基準価格に設定することなどを提案した。運送事業者が荷主企業や元請け運送事業者との運賃改定交渉に活用してもらい、適正な利益を確保できるよう後押しするのが狙い。

この日の公聴会には見直し案に賛成と反対の立場から公述人が計2人出席。全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長(松浦通運社長)は見直し案へ全面的に賛同する意向を示し、早期の改正を求めた。

一方、運送会社に勤める加藤光世氏は標準的な運賃の見直し自体には賛意を示しつつも、今回の見直しに関し、どの階層の運送会社に支払うべきものなのかが明示されていないことなどを理由に、原案での見直しに異議を唱え、内容の一部修正を要望した。

運輸審議会は23年度中をめどに、標準的な運賃の見直しを答申する見通し。公述人の意見がどの程度反映されるかが焦点となる。


公聴会に臨んだ堀川会長(中央)ら運輸審議会委員


公聴会の会場

公聴会は冒頭、国交省物流・自動車局の小熊弘明貨物流通事業課長が、標準的な運賃を改正する狙いなどを説明。標準的な運賃の見直しを施行した後に「ドライバーの賃上げ状況などの実態把握に努めるとともに、トラックGメンによる、適正な取引を阻害する疑いのある荷主や元請け事業者に対する厳正な是正指導を講じていく。適正な価格転嫁の実現を図るため、公正取引委員会や中小企業庁などの関係省庁と一層連携していく」との決意を示した。

続いて、加藤氏が反対の立場から公述に臨んだ。「運送業で働く者として、今回の標準的運賃の設定は大変意義があり、運送業にとって(環境改善へ)大きな一歩になると実感している」と国交省などの対応に謝意を表明。

その上で、標準的な運賃が示している金額が「どの階層の運送会社に支払われるべきもので、必要最低限の金額なのか、これ以上収受してはいけない金額なのかが明確ではない」と指摘した。

運送事業者の下請け構造を踏まえ「標準的運賃を収受する運送会社が上流であれば、実運送会社が収受できる運賃は現状とほぼ変わらない。いわゆる『中抜き』業者が増えるだけになる」と懸念を表明し、最高値か最低値なのかなどを明確にするよう求めた。

併せて、利用運送の手数料に荷主企業からの支払い法定下限値と利用運送会社側の収受法定下限値を設けることや、定期的に内容を改定する流れを明確にすることも訴えた。

馬渡副会長は「依然としてドライバーの賃金向上を図るための運賃が収受できておらず、荷主への浸透が途上」と分析。「標準的な運賃は今後も引き続き、トラック運送事業者が荷主と運賃交渉を行う際に大きな後押しになる。所要の見直しについて全面的に賛成する」と明言し、荷主が標準的な運賃の内容を理解、順守するよう理解促進の活動を求めた。


意見を述べる加藤氏(上)と馬渡副会長

公聴会の終了後、メディアの取材に応じた堀川会長は「ご意見を審議会に持ち帰り、審議を進めていきたい」と語った。

(藤原秀行)

政策カテゴリの最新記事