本業のフォワーディング特化で世界トップ10プレーヤーへ
近鉄エクスプレス(KWE)の鳥居伸年社長は5月10日に開いた物流専門メディア向け決算説明会で、今後10年以内に売上高1兆円、営業利益500億円、航空貨物量100万トン超、海上貨物量100万TEU超を目標とする「長期ビジョン」を明らかにした。
近鉄エクスプレス鳥居伸年社長
鳥居社長は米中貿易摩擦や英国のEU離脱、荷主企業の動向、市場の需要変動など変化の激しい国際物流市場で欧米系メガフォワーダーと伍して戦っていくには、現在中心の日本を含むアジア市場だけでなく名実ともにワールドワイドのプレーヤーとして認知される必要があると指摘。
その上で「どのようにKWEを“日本発祥のグローバルブランド”へと認知・確立していくか。世界トップ10に入るためには売上高1兆円が一つの目安になる」と見通した。
欧米勢が積極的なM&Aで事業規模の拡大を進める中、勝ち残っていくにはコアビジネスであるフォワーディング事業に特化していく考えを表明。経営リソースをフォワーディング事業に傾注する“選択と集中”も視野に入れる。
市場からの評価に関しては「国内のお客さまからは欧米に強いと言っていただける一方、グローバルでは依然として日本ないしアジアのプレーヤーとの位置付けだ。前中計では業績面の目標をほぼ達成できたが、この要因はアジア地域での展開に頼るところが大きかった。その意味でも真のグローバルプレーヤーとはまだまだ認知されていない」とシビアな見方を示した。
2019~21年度にわたる新中期経営計画では長期ビジョンを踏まえ、これまでの財務数値目標を固定したスタイルから事業環境の変化に応じて毎年目標を見直していくローリングプランを新たに採用。「フォワーディングへの集中による事業規模拡大」を通じて最終期の21年度には売上高7200億円(KWE:5000億円、APLL:2200億円)、営業総利益率16.4%以上を目標に掲げる。
これについて鳥居社長は「利益目標にこだわり過ぎることで市場の変化への対応や次世代に向けた必要な投資を怠り、結果として従業員のモチベーション低下・喪失を招く懸念がある。持続的な利益成長は上場企業の使命だが、近視眼的な一過性の利益最大化は固執するところではない」と断言。
収益性の向上についても「販管費や人件費にすぐ手を付けるのではなく、コアビジネスであるフォワーディング事業の効率性を高める」とし、中長期スパンに立脚した事業運営と企業価値向上を追求していく考えを強調した。
設備投資額は3カ年合計で約250億円を予定。IT関連(ハードウエア、ソフトウエア、システム開発)、物流施設関連(倉庫・庫内設備・事務所)、車両関連、M&Aを主な使途に挙げ、このうちの大半をIT関連に充当する方針だ。
買収から3年が経過したAPLLに関しては「実事業でシナジーを数値として表せる部分が明確になってきた。インテグレーション・アンド・コラボレーションという形で双方のノウハウ、強みを利活用しながら展開していきたい」とした。
(鳥羽俊一)