KDDIスマートドローンとNEXT DERIVERY、奈良でドローン「レベル3.5」飛行の処方薬・災害時医薬品配送実験

KDDIスマートドローンとNEXT DERIVERY、奈良でドローン「レベル3.5」飛行の処方薬・災害時医薬品配送実験

人口減少に対応、飛行ルート開通

KDDIスマートドローンとコミュニティメディカル、エアロネクスト子会社のNEXT DELIVERYは4月1日、奈良市で2月26~28日にかけて、ドローンの「レベル3.5」飛行による処方薬配送と災害時の医薬品配送に向けた薬局起点のドローン物流実証実験を行ったと発表した。

奈良市は昨年2月にも月ヶ瀬・柳生でドローンを使った荷物配送の実証実験を実施した。今回は東部地域の課題の一つとなっている地域医療で、高齢化などに伴い需要の増加が予想される医薬品の配送実証実験を展開した。

東部地域には5カ所(柳生・田原・月ヶ瀬・都・興東)の診療所があり、それぞれ違いはあるものの、取り扱い医薬品の種類や在庫状況の関係で1~2割の患者が院外処方となっている。その一方、東部地域には調剤薬局がひだまり薬局田原店とひだまり薬局(都)の2店舗しかなく、院外処方では処方薬をひだまり薬局もしくは市街地の薬局まで取りに行く負担が発生している。

東部地域から市街地までは車で約30分、遠い場所では1時間以上もかかる上、路線バスは約2時間に1本程度と限られており、薬局までの交通手段が課題となっている。今後は高齢化や免許返納などが進む中で、処方薬を取りに行くことが難しくなる住民が増えることが予想され、自宅などでの処方薬の受け取りが望まれている。

地域課題の解決策の1つとして、ドローンを活用して服薬指導から処方薬の受け取りまでを在宅で行う実証実験に踏み切った。

実験ではオンライン服薬指導用の通信機器を持たない患者を想定し、まずひだまり薬局田原店から患者宅へオンライン服薬指導を受けることができるタブレットをドローンで配送。その後、ひだまり薬局田原店から遠隔でオンライン服薬指導を行った後、ひだまり薬局田原店から患者宅へ処方薬をドローンで届けた。

飛行ルート:ひだまり薬局田原店↔患者宅
飛行距離:片道約1.4㎞
配送物:処方薬
飛行時間:約4分


タブレットによりオンライン服薬指導を受ける様子


処方薬を受け取る様子

また、奈良市は今年1月、災害時における迅速な医療救護活動の展開を図るため、一般社団法人奈良市薬剤師会と「災害時の医療救護活動に関する協定」を締結。協定は地震や風水害などの災害が発生した際に、奈良市と奈良市薬剤師会が相互に協力をして、医療救護活動を実施するための必要事項を定めており、具体的には、災害時に薬局等から救護所または避難所へ、医薬品等の供給を行うことを盛り込んでいる。

今年1月に発生した能登半島地震では、道路が寸断され陸送できない地域に医薬品などの物資を配送する災害対応にドローンが投入されている。特に、東部地域の山間部で、災害時は土砂崩れや倒木、道路の崩壊などで道路の寸断が想定される。

そのため、災害発生を想定し、薬局から東部出張所(二次避難所)へドローンによる医薬品の供給ルート確保の実証実験も行った。

災害から避難中に負傷された患者や、孤立集落化を想定し、ひだまり薬局田原店から東部出張所(二次避難所)へ医薬品(消毒液、絆創膏、湿布薬、鎮痛剤)をドローンで空輸。飛行ルートを開通したことで、今後、GPSの座標を利用して薬局を起点としたドローンによる医薬品の配送が可能になったという。

飛行ルート:ひだまり薬局田原店→東部出張所
飛行距離:片道約6.5㎞
配送物:医薬品(消毒液、絆創膏、湿布薬、鎮痛剤)
飛行時間:約15分


配送物の様子


オンラインで症状確認する様子

実験の結果、オンライン服薬指導と組み合わせ、ドローンによる処方薬配送オペレーションを確認。ドローンによる災害時の医薬品配送オペレーションの実効性も明らかになった。

また、飛行ルート上の電波は途切れることなく、周辺環境への影響もなかったため、安全運航が可能な処方薬、医薬品の配送ルートを開通できた上、無人航空機レベル3.5飛行により、実装を見据えた省人化や効率化の実現を確認できた。

実証実験における各社の役割
奈良市:事業化検討・関係各所調査・フィールド提供等
KDDIスマートドローン:プロジェクト統括・機体提供・運航
株式会社コミュニティメディカル:調剤業務・服薬指導
NEXT DELIVERY:機体提供・運航


(左から)コミュニティメディカル・吉谷淳至第3グループマネージャー(一般社団法人奈良市薬剤師会副会長兼務)、奈良市・仲川げん市長、KDDIスマートドローン・森嶋 俊弘ソリューションビジネス推進2部長)

(藤原秀行)

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