【独自取材】CBREキャピタルマーケット部門統括責任者・辻氏インタビュー

【独自取材】CBREキャピタルマーケット部門統括責任者・辻氏インタビュー

「国境超える投資家資金で物流業界のさらなる活性化を」

4月1日付でシービーアールイー(CBRE)日本法人のキャピタルマーケット部門統括責任者に就任した辻貴史氏はこのほど、ロジビズ・オンラインのインタビューに応じた。

三菱商事やダイヤモンド・リアルティ・マネジメント(DREAM)で物流施設の開発・投資業務に長く携わってきた経験を持つ辻氏は、新天地のCBREでも売買仲介や不動産戦略・投資に関するコンサルティングなどの業務に注力する姿勢を強調。

併せて、CBREのグローバルネットワークを活用し、海外投資家による日本国内の物流投資拡大に加え、日本の機関投資家が欧米の優良物流施設に投資するのをサポートしていくことにも強い意欲を見せた。また、新たな取り組みとして、テナントの収益規模に応じて変動する賃料メカニズムの導入や投資対象となる物流関連アセットの多様化にも取り組みたいとの意向を示した。


インタビューに応じる辻氏

黎明期からマーケットに携わる

―これまで歩んでこられたキャリアを教えてください。

「三菱商事時代は物流事業の経験が長く、荷主企業として物流企業の皆さまとずっと接点がありました。その関係で、まさに物流不動産の黎明期から不動産ビジネスに携わるようになり、マルチテナント型物流施設の開発、物流施設特化型ファンドの組成、物流を核とした私募リートの立ち上げなど、日系企業としては先駆者的に手掛けてきました。直近の7年間はダイヤモンド・リアルティ・マネジメント(DREAM)でファンド運用に当たってきましたが、結果的に取得物件の半分以上が物流倉庫でした。物流業界とのつながりがDREAMのビジネス拡大を支えてくれました」

「CBREはグローバルカンパニーですし、個人的に愛着がある物流不動産を含めたインダストリアルの世界にもテナントリーシングやプロパティマネジメント、マーケット調査など、さまざまな点で非常に強みを持っています。自分自身の総合商社でのキャリアがさらに生かせるのではないかと非常に魅力を感じました」

―物流不動産ほど、この20年ほどで大きく姿を変えてきたマーケットは珍しいのではないかと思います。黎明期から関わってこられて、どのように振り返りますか。

「確かに倉庫が提供する機能はここ10~20年ほどで大きく変わってきました。従来の保管機能から、eコマースの成長により商業店舗の機能を提供したり、また流通加工サービスの多様化により生産工場の一部機能も果たしたりするようにもなりました。より高機能の近代型施設が求められる中、物流倉庫事業者だけではその施設開発需要を満たすことができず、一気に金融プレーヤーによる資金が流入し近代型大規模物流施設の開発を後押ししました。物流会社の倉庫に対する考え方、不動産会社のテナントリーシングに関する考え方、投資家の物流不動産に対する考え方の全てが大きく進化したという感じがものすごくしていますね」

―自身が物流施設開発に参加される上で重視してきたことはありますか。

「物流業界のプレゼンスを高めることは常に意識してきました。業界への注目度は10年前、20年前に比べれば相当高まっていて、物流倉庫のイメージも良くなってきています。すごくうれしいですね」

「2008年にリーマンショックが起きた後、一時的に不動産へのファイナンスが厳しくなり、物流倉庫でも開発に苦労した案件がいくつかありました。しかし、物流倉庫に資金提供する動きが比較的早く回復し、窮状から脱することができたのは、物流が経済環境の変化に関わらず常に必要なものであり需要の下振れリスクが限定的であるため、経済の下降局面でも強いセクターという特性が当時、機関投資家などの間で理解されたのが非常に大きかったと思います」

「当時、私も物流不動産の安定性を理解していただくため、投資家を対象としたバスツアーを何度も企画し、倉庫の機能が持つ重要性を現地で繰り返し説明しました。一般的にテナント企業は自分の倉庫の中を見られるのを嫌がられますが、物流業界をより理解してもらいたいと協力してくれる倉庫会社の方が多く現れ、本当に助かりました。三菱商事時代に培った物流業界の皆さまとの深い信頼関係が大変役立ちました。ツアーに参加された方々は物流倉庫の投資対象としての確実性、永続性を非常によく理解され、リーマンショック後は物流倉庫であれば投資したいと言っていただける投資家も増えました」

「地味ではあるけれどもキャッシュフローが安定しているとの認識が投資家の間で広まりましたし、物流業界もそうした強みに対する認知度を高めていこうと取り組まれた方が結構おられました。実際、オフィスビルは賃料が一時、半分に落ち込んだ物件もあったと聞きましたが、物流倉庫はそこまでの賃料の下落はありませんでした」

―手掛けてきた物流倉庫で印象に残っているものはありますか。

「横浜でリーマンショック前から手掛けていた開発案件ですね。新しい試みとして、フロアのセンターに初めて車路を設けました。今でこそ普及してきてはいますが、当時は業界の中でも建物の真ん中に車路を通す発想はまだ少なかったと思います。大切な倉庫床の面積を削ってしまうので一見無駄に思えますが、センター車路の両側がバースとなり荷役が円滑になるため作業の効率が上がります。さらに、車路が完全屋内なので雨天でもウイング車の積み降ろしが可能になります。このような点を評価いただき、完成当時から入居されている企業の方々は契約をずっと更新してくださっています。物流業界とのお付き合いが長く、テナント企業と緊密な関係を築いてきたからこそ、機能重視の発想ができたのだと自負しています」

「収益性を考えると、どうしても床の面積を増やす方に発想が行きがちですが、機能面を考えれば使い勝手を良くする方が物流倉庫としての価値が高まります。多少床を削っても機能向上を重視しようと努めた結果、賃料単価も上がりました。物件供給が増えてくるとテナント企業の奪い合いにもなりますから、少しでも使い勝手に魅力がある物件の方がテナントの入れ替わりも少ない。仮に契約が満了してもさほど間を開けずに次のテナントに入居いただけます」

店舗と物流倉庫の機能併設する再開発も

―CBREでは主に「売買仲介」「キャピタルアドバイザーズ(金融サービス)」「ホテルズ」の分野を担当されると伺っています。それぞれ具体的にどのような業務を進めていきますか。

「売買仲介は、当社のリーシング部隊との連携をより強化し、より専門性と付加価値が高い不動産取引機会の提供を目指していきたいと思います。キャピタルアドバイザーズは投資家の方々に不動産投資をアドバイスする役割を担います。海外の投資家が日本の不動産を購入したり、逆に日本の機関投資家が海外の物件を探したりする国境を越えた投資に対し、CBREのグローバルネットワークを活用しながら、物流倉庫を含めてさらにしっかりとサポートしていきたい」

「ホテルは日本の人口が減っていく中でも海外からの観光客が年々増加していることもあり、引き続き成長が期待できるセクターですので、日本のホテルの投資対象としての魅力をより国内外にアピールできるよう努力していきたいですね」

―海外の投資家は引き続き日本の物流施設に注目していますか。

「その通りです。ただ稼働物件は価格が高騰し、取引物件の数も限られてくるため、物流倉庫を開発段階から手掛けたいと考える海外投資家が増えてきています。投資のリターン水準が高い再開発などにもご関心を持たれているので、最適な案件をご紹介していきたいですね」

―物流倉庫の再開発は今後増えるとみていますか。

「件数は結構あると思いますね。最近で言えばeコマースの成長に伴い郊外の大規模な商業施設は全体的に採算が厳しくなっていますから、用途地域の問題もありますが、eコマースの商品発送拠点に建て替えたり、店舗と物流倉庫の両方の機能を持たせたりする再開発はあり得るのではないでしょうか」

「CBREは多種多様なアセットの取引を日々手掛けていますし、その取引量は日本でトップクラスですから、物件やテナント企業に関する情報は相当厚みがある。物流専業ではなく、商業施設にも精通しています。テナント需要の変化を捉えたアセットクラスを超えた取引にはすごく強みを発揮できると思います」

景気減速でもニーズは底堅い

―米中貿易摩擦などが景気動向に影を落としており、国内外で経済成長に減速感が出ています。物流倉庫の市場にも影響があるのでは?

「先ほどもお話しましたが、物流不動産が底堅い投資対象であることは、既にリーマンショックを通じて実証済みですので、景気減速があってもそのダメージは限定的だと思います。人口減少に伴う中長期的な物流の取扱量縮小という懸念材料もありますが、eコマースを中心としたライフスタイルの変化や物流施設が提供する機能の多様化により、新たなサービスを実現するための物流床の需要は引き続き伸びていくと見込まれます。訪日外国人の増加は消費を押し上げ、新たな物流ニーズも生み出されます。労働力不足という課題もありますが、テクノロジーの進化も飛躍的ですから、物流倉庫のニーズは引き続き底堅く推移するのではないでしょうか」

「物流倉庫は最近、従来は工場が担っていた流通加工機能を益々取り込んでいっています。例えばアパレルの縫製や食品の調理、精密機器の組み立て、コーヒー豆の焙煎などといったケースです。流通加工などの機能が増えれば当然床のニーズも拡大しますから、非常に強みだと思います」

「今後は物流倉庫にどれだけ生産の機能を取り込めるかが需要を獲得する上で大きな鍵を握るようになるとみています。コールセンターやデータセンターとの親和性も期待できます。もはや物流倉庫という名称では表現できない、マルチパーパス(多目的)な施設になってくる。役割を終えた商業施設にさまざまな流通機能を付加することで、そうした多目的な施設のニーズを満たしていけるのではないか」

―これまでの経験を踏まえ、新たに取り組んでみたいことはありますか。

「商業施設は店舗の売り上げに連動した賃料を採用しているところがあります。売り上げが伸びれば賃料も引き上げられる仕組みです。本来、ホテルやデータセンターなどを含め、オペレーショナルなアセット(運営次第で収益が大きく変わる事業用不動産)にはそういう傾向が強いと思います。物流倉庫にも同様の仕組みが導入できるのではないかと考えています。入居する当初はテナントの事業規模に合った賃料設定とすることで負荷を抑え、収益が拡大するのに伴って賃料も適正にアップしていく。物流倉庫のオーナーとしてもテナント企業の売り上げが伸びるよう、アセットマネジメントなどの面でサポートするモチベーションが生まれます」

「倉庫オーナーの側も旧来の『大家さん』という発想ではなく、テナントの良き『事業者パートナー』であるべきという感覚で、Win-Winの関係構築をより強く意識した工夫が必要な時代を迎えています。物流業界では全く新しい試みなので実現は容易ではないと思いますが、ぜひチャレンジしてみたいですね」

「他にも、欧米の物流倉庫も日本と同じように市場が成長していますから、日本の投資家にとっても長期的な投資対象として非常に魅力的なアセットだと思います。欧米の物流倉庫は日本と異なり、賃料も毎年着実に上昇しています。CBREのグローバルネットワークを使い、日本の方々にも良好な投資機会をご提供していきたいと考えています」

―ニーズが拡大しているコールドチェーンへの対応はどうお考えでしょうか。

「ご存じの通り、東京湾岸などで老朽化した冷凍冷蔵倉庫が多く見られますし、実際にリニューアルしたいとのご相談もいただいています。低温事業者が自社の施設を更新するために、土地建物を売却した上でリースバックし、その調達資金を内部の機械設備の更新に充ててリニューアルするケースも見られます。自社施設の更新のタイミングで外部倉庫の賃借に切り替えてオフバランス化しようというニーズはこれからも見込めると思いますので、ぜひ対応していきたいですね」

(藤原秀行)

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