ニチレイロジ、業革や共配拡大などで21年度に連結売上高12・9%増の2270億円目標

ニチレイロジ、業革や共配拡大などで21年度に連結売上高12・9%増の2270億円目標

新中計公表、ASEANのソリューション事業拡大も推進

ニチレイロジグループ本社は5月20日、東京都内の本社でメディア向けの2018年度事業報告会を開催した。

19~21年度を対象とする新たな中期経営計画に関し、人手不足下でも低温物流を持続できるようグループ横断的に効率化を図る業務革新をさらに加速させる方向性を明示。

19年度の目標として、自動化ソフトを駆使して仕事を効率化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で年間18万時間の業務を置き換えることを盛り込んだほか、トラック予約システムを20拠点に導入することや、30拠点で入荷検品へのタブレット端末利用件数を拡大することなどを打ち出した。

併せて、収益力アップのため、3PL事業で共同配送を拡大し、利用する顧客企業の物流効率化を一層促進できる体制を整備。ASEAN(東南アジア諸国連合)域内で物流のソリューション事業を広げていく路線も示した。

各施策を基に、連結売上高は18年度実績の2010億円から最終年度の21年度に12・9%増の2270億円、営業利益は114億円から11・4%増の127億円まで高める計画だ。

梅澤一彦社長は業務革新について「前中計は新技術の実証実験やテスト導入を中心に進めてきたが、新中計は実際の現場での活用に軸足を移していく」と表明。「成長に向けて従業員のリソースを単なるオペレーションから価値創造業務へとシフトしていかなければならない。今後も最優先業務として取り組んでいく」と重ねて強い決意を示した。


事業説明会に臨む梅澤社長

従来型の3PLから全体最適可能なモデルへ進化

新中計は、基本方針として、
①【基盤強化】=持続的な成長に向けた企業
・業務革新推進による事業基盤の強化
・事業成長に資する戦略的人事施策の遂行
②【成長戦略】=事業成長を実現する革新的な物流ソリューションの展開
・新たな3PLモデルの確立
・ASEANにおけるソリューションビジネスの拡大
③【国内事業】=国内既存事業の安定拡大による収益力の最大化
・大都市圏の新設拠点活用によるエリア収益力最大化
・カテゴリー化によるエリア全体の高効率運用の実現
・関西ネットワーク化による輸配送機能強化
④【海外事業】=海外事業の積極拡大
・欧州港湾地区の事業基盤強化と内陸地区の運送拠点の整備
・中国事業の拡大
――の4点を柱に据えた。

このうち①では、達成を目指す姿として、庫内作業に関わる多様なデータをデジタル化し、そのデータを有効活用して効率的な作業への意思決定ができることを表明。次期中計で「意思決定の自動化」に前進させるとの流れを描いた。

19年度の定量目標としては、前述のものに加え、倉庫内のラック化を推し進めて1万6000パレット分を達成することや、AI(人工知能)による自動配車システムを全国の13拠点に取り入れることも記した。

併せて、地域限定で働き続けられる人事制度の普及、女性活躍促進から「ダイバーシティ」促進への運動進化による多様化尊重などを手掛ける。

②は、3PL事業で新たな共同物流に本腰を入れる。個々の荷主企業から請け負った荷物を物流事業者側で取りまとめて混載する従来型の共同物流から、ニチレイロジが全体窓口として機能し、参加企業各社の情報や課題を可視化して全体最適につなげていく次段階の共同物流に歩みを進める方針を掲げている。

「既に中四国で先行的に新たなモデルを運営しており、さらなるブラッシュアップを図りながら全国展開し、ニチレイロジならではの高度な低温物流インフラを構築していく」(梅澤社長)方針だ。

ASEANは既に展開しているタイとマレーシアで新規顧客拡大を図るほか、マレーシアは「ハラル物流」の取り扱いを増やすことも視野に入れている。それ以外の国は現地企業との連携も検討しながら進出の可能性を引き続き探る。

梅澤社長「急激な景気減速が大きく影響とは想定せず」

③は、既に公表している沖縄の那覇新港物流センターを機能させ、沖縄をハブ拠点とした輸出入ルートを確立するほか、名古屋みなと物流センター(20年4月稼働予定、冷蔵能力3万635トン)を業務革新のモデル拠点として展開していくことなどを表明。

他にも、関西地区の低温物流ネットワークの在り方を見直し、20年4月からは保管と運送を一体運営する形へと移管して効率化とサービスレベル向上を図る戦略を進める。

④は欧州港湾築の事業基盤強化として、英国やオランダで港湾エリアの物流拠点を拡充するほか、内陸部の輸配送ネットワーク拡充などを図る。中国事業は上海で常温・低温センターを活用して顧客の大手コンビニの取扱量をさらに高めるほか、新規顧客の獲得にも注力する。

梅澤社長は国内外で景気減速が懸念されていることに関連し、新中計期間中の市場環境について「急激な景気減速の影響が大きく出てくるとの想定はしていない。それ以上に加工食品への需要が強いだろうとみており、当社のような低温物流のリーディングカンパニーへの需要もますます増えてくるのではないか」と展望。

海外担当の桑原高明取締役常務執行役員は、ASEANでの展開をめぐり「特に明確な時間軸は持っていない。次のターゲットはインドネシア、フィリピン、ベトナムというところで、一般的な市場調査は終わっているので、どのビジネスモデルで進出するのか、どういったところと組むのかという点の検討を行っている」と説明。「むやみやたらに出ていくというよりは新たなところ1カ所に出るような形で次々と進んでいければいいと個人的には思っている」と語り、着実に事業展開していく姿勢を見せた。

(藤原秀行)

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