関税・消費税の立て替え、3年連続で「独禁法抵触恐れ」と指摘

関税・消費税の立て替え、3年連続で「独禁法抵触恐れ」と指摘

公取委が調査結果公表、買いたたきなども列挙

公正取引委員会は6月6日公表した2023年度の荷主と物流事業者の取引に関する調査結果の中で、独占禁止法で禁じている買いたたきなどの行為に該当する恐れがある事例を公表した。

この中で、荷主が関税・消費税を直接支払わず、通関業者に立て替えさせる行為を「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する恐れがあると指摘。同行為を2021年度から3年連続で取り上げており、公取委として強く問題視していることを明示した。

このほか、コスト上昇分の運賃引き上げを物流事業者から求められたにもかかわらず、荷主が理由を明示せず運賃を据え置いたり、物流事業者が自助努力で解決すべき問題として協議を拒否したりしたケースが買いたたきに当たる恐れがあると指弾。コスト上昇分の適正な価格転嫁を促した。

公取委が今回公表した事例は以下の通り。

①買いたたき 
・荷主Aは、物流事業者から労務費等の上昇に伴うコスト上昇分の運賃引上げを求められたにもかかわらず、そのような運賃引上げに応じない理由を回答することなく、運賃を据え置いた(金属製品製造業)
・荷主Bは、物流事業者から労務費の上昇に伴うコスト上昇分の運賃引上げを求められたにもかかわらず、物流事業者が自助努力で解決すべき問題であるとして運賃の引き上げ協議を拒否した(プラスチック製品製造業)

②代金の減額  
・荷主Cは、物流事業者に対し、「協力値引き」と称して、契約書で定めていた運賃を一方的に5%差し引いて支払った(建築材料、鉱物・金属材料等卸売業)
・荷主Dは、物流事業者に対し、運賃の支払い方法を手形から現金振込に変更したが、その際に運賃を一律5%差し引いて支払った(物品賃貸業)

③代金の支払い遅延  
・荷主Eは、物流事業者に対し、契約書で定めた運賃の支払い日が金融機関の休日であった場合に、あらかじめ合意することなく、休日の翌営業日に運賃を支払っていた(金属製品製造業)
・荷主Fは、物流事業者に対し、運送業務のほかに新たに附帯作業を追加し、委託したが、荷主Fの経理部門がそのことを把握していなかったため、当該附帯作業に係る料金の支払が遅れた(その他の小売業)

④不当な給付内容の変更・やり直し  
・荷主Gは、物流事業者に対し、運送を行うこととされていた当日の朝に運送委託をキャンセルしたが、そのような突然のキャンセルに伴い物流事業者が負担した費用を支払わなかった(総合工事業)
・荷主Hは、物流事業者に対し、運送内容を突然変更したが、その変更に伴い物流事業者が負担した費用を支払わなかった(木材・木製品製造業)

⑤不当な経済上の利益の提供要請  
・荷主Iが物流事業者に対し、自身の事業所の構内での事故防止のためとして、荷役作業や車両移動時の立会者の派遣を求めたことから、物流事業者はこれに応じたが、荷主I
はその費用を支払わなかった(繊維工業)
・荷主Jは、物流事業者に対し、物流業務に附帯して輸入通関業務を委託するに際して、関税・消費税の納付を立て替えさせ、物流事業者が荷主による直接納付を求めても応じなかった(はん用機械器具製造業)

⑥割引困難な手形の交付  
・荷主Kは、物流事業者に対し、運賃として手形期間150日の約束手形を交付した(物品賃貸業)

⑦物の購入強制・役務の利用強制  
・荷主Lは、物流事業者に対し、自身が取り扱う自動車共済保険と定期貯金を契約するよう求めた(協同組合)
・荷主Mは、物流事業者に対し、自身の子会社が取り扱う保険の契約とワインの購入を強要した(道路貨物運送業)

(藤原秀行)

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