プロロジス施設の1.1万㎡賃借、オートストア導入し保管効率アップ
ユメノソラホールディングス傘下で同人誌などの委託流通事業を手掛ける虎の穴は4月17日、千葉県八千代市で昨年11月に稼働を始めた新たな物流拠点「とらのあな物流センター（TLC）」をメディアに公開した。
同拠点はプロロジスの物流施設「プロロジスパーク八千代1」の約1万1400㎡を賃借して開設。多岐にわたる商品を効率的に保管し、迅速に入出荷を済ませるため、ノルウェーのオートストア製自動倉庫システム「AutoStore（オートストア）」を採用しているのが特徴だ。
現地で取材に応じた虎の穴の鮎澤慎二郎社長はTLCを有効活用し、今後も伸びが見込まれる通販事業の物流を強化していく方針を表明。さらに、長年同人誌などの保管・出荷を受託してきた経験を生かし、今夏以降、3PL事業を展開していきたいとの考えを示した。
TLCが入るプロロジスの物流施設（虎の穴提供）
オートストアの前で撮影に応じる鮎澤社長（右）
独自の商品識別コードが活躍
東京・秋葉原に本社を置く虎の穴は1996年設立、同人誌の受託販売を展開してきた。現在は同人誌のほか、コミックやフィギュアなど多岐にわたる商品を取り扱う。個人のクリエイターらが作った同人誌などの流通・委託販売を虎の穴が担っており、同人誌の取扱量は年間2万冊を超えるなど、日本が誇る“オタク文化”の隆盛を支えている。
以前は実店舗「とらのあな」での委託販売が主軸だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で実店舗の運営が厳しくなり、ビジネスが転換点に直面したのを契機に、ECの取り扱いを伸ばし、2022年度には流通総額が300億円を突破。旧来のような人海戦術では作業量が膨れ上がっていくのに対応しきれないことが懸念されたため、プロロジスの物流施設へ移転し自動化・省力化を積極的に図ることにした。
TLCには各クリエイターなどから同人誌やコミック、フィギュアなどが毎日届けられており、TLCで仕分けて保管、入出荷をこなしている。虎の穴の主力製品の同人誌は、形やサイズが多種多様でページ数もまちまちな上、入荷の時点で一般の書籍のようなバーコードがなく、ISBNなど管理の番号も振られていないため、同社で管理のための独自の商品識別コードを使用している。
さらに、個人のクリエイターが納品するため、入荷前に知らされていたのとは異なる数量や形状のものが届いたり、入荷予定日が直前に変更となったりと、一般の企業や店舗を相手している時よりもイレギュラーが多い。本体の製品と別におまけの商品が入荷することも多く、それぞれを関連して出荷しなければならない。当然ながらSKUも多く、鮎澤社長は「まさに究極の『多品種少量』。作業の平準化やピッキングのミス防止、保管効率向上という課題を解決する上でオートストアが一番適していた」と語る。
TLCへのオートストア導入はオカムラやGROUNDがサポート。現在はTLC内の約1700㎡にオートストアを設置し、メディア公開時点で4万2000個のビン（製品を納めるコンテナ）と42台のロボットを配置、総SKUの5割程度の4万～5万SKUを取り扱っている。
TLCのオートストア内でロボットが自在に走行する
オートストアには、ABC分析した上で出荷頻度がSからCの商品のうち、トップクラスのSではなく、AマイナスからB程度のものを納めているという。予約時点で完売するほどの大人気商品は、かえってオートストアに入庫してしまうと時間がかかってしまう。従来は庫内で煩雑に置かれ、SやAクラスほどではないにせよ、一定程度の出荷があり、スタッフが頻繁に歩き回って庫内をピッキングしていた商品をオートストアに保管することで、スタッフの歩行距離を大幅に減らし、保管スペースをより効率的に使えるよう工夫している。
現状はメディアに公開した4月時点で、オートストアからの出荷作業を行うポート1カ所当たりで1時間に100件程度の出荷を実現している。1日当たりではトータル約1万件、繁忙期は約2万5000件に到達すると想定しており、いずれは能力を3万件まで引き上げたい考えだ。
鮎澤社長は「20年にわたり、個人クリエイターの方々の商品を取り扱い、出荷してきたノウハウがある。オートストアを導入したことを契機に、3PL事業にチャレンジしていきたい。（オートストアなどへの）投資回収を早めていく狙いもある」と語り、自社のノウハウを生かして日用雑貨品などの庫内作業の受託を目指す考えを示した。今後はWES（倉庫自動化システム）の独自開発も視野に入れているという。
出荷のポートで作業するスタッフ
（藤原秀行）
