多様な顧客向けの商品取り扱う「汎用倉庫」で稼働、食品ロス回避や庫内作業の効率化目指す
日立製作所と九州を地盤とする卸売業のヤマエ久野は8月28日、多様な顧客向けの商品を取り扱う汎用倉庫の食品カテゴリー発注業務で、AIを活用して需要を予測し、適正な在庫量を勘案して自動発注するシステムを4月に稼働させたと発表した。
新システムは日立が手掛ける先進技術を活用したLumadaソリューション「Hitachi Digital Solution for Retail/需要予測型自動発注サービス」を応用した。ヤマエ久野は新システム採用で、稼働開始後2カ月(6月末)の時点で複数の熟練担当者が1人・1日当たり約3時間を要していた発注業務時間を約1時間半に短縮(約50%削減)できたという。
特定の取引先からの大幅な受注増を検知し、過学習を抑制する「スポット特売機能」を実装。需要予測精度が安定化し、熟練担当者が算出した発注数量と同水準で発注計算が実施できることを確認した。
また、汎用倉庫は各倉庫やエリアによって多様な特性が出るため、標準化された需要予測自動発注システムでは効果の最大化が難しい傾向があるが、倉庫のサイズや取り扱いアイテム数が異なるなど状況の違いに応じた、最低在庫や発注頻度の「自動チューニング機能」などを取り入れ、4拠点に新システムを適用することに成功した。
ヤマエ久野の汎用倉庫内(左)と新システムを使った発注業務の様子
今後、ヤマエ久野は販売エリアの拡大に対応するため、発注作業担当者を集約しながら作業の生産性を高めていく計画。「2024年問題」への対応として、仕入れ先からの入荷回数や仕入数をコントロールすることで倉庫内作業の効率化の実現も目指す。
両社はヤマエ久野の業務効率化や働き方改革、食品ロスの削減を推進するとともに、新システムで算出したデータを活用したサプライチェーン全体の最適化を図る。
「Hitachi Digital Solution for Retail/需要予測型自動発注サービス」は2019年以降、全国チェーンの総合スーパーやドラッグストア、大手衣料品店、食品卸売業など、多様な業種や商品に提供してきた。発注業務の自動化が難しい卸売業者の「汎用倉庫」へ導入したのは初めて。
需要予測型自動発注システムの概念図(いずれも両社提供)
(藤原秀行)