先進物流施設の需要「首都圏は今後2年間堅調に推移」

先進物流施設の需要「首都圏は今後2年間堅調に推移」

CBRE不動産フォーラムで市場展望(前編)

シービーアールイー(CBRE)は6月7日、東京都内で不動産市場を展望するフォーラムを開催した。

登壇した担当者は賃貸物流施設に関し、都市部で続く大量供給に対し需要も旺盛で順調にスペースを消化できていると解説。特に首都圏は今後2年間需要が堅調に推移すると述べ、市場動向に関して前向きな予測を示した。一方、地方部でも物流施設の需要が出てきているとして、物流業界の発展継続へ開発事業者らの積極的な対応に期待を示した。フォーラムの模様を2回に分けて紹介する。


開発事業者らが多数参加したフォーラム会場

今後1年間に完成予定の物件、床の5割強でテナント内定

最初にCBREリサーチの高橋加寿子シニアディレクターが登壇し、マーケットの概況を解説した。大規模なマルチテナント型施設(LMT)は2016年ごろから加速度的に貸室総面積が増え、19年は首都圏と近畿圏を合わせて約300万坪と08年実績の2倍強になる見通しを示した。

需要も引き続き堅調で、19年から20年にかけて首都圏は空室率が5%前後で推移し、大量供給の影響から一時は20%を上回っていた近畿圏もおおむね10%前後と安定した状況が持続すると予想。「需給のバランスが大きく崩れることはない」との見解を明らかにした。

こうした状況を踏まえ、実質賃料は首都圏、近畿圏で19~20年にかけて四半期ごとで平均1・7%程度の成長が見込まれると話した。

高橋氏は首都圏に絞って見ると、19年第1四半期のエリア全体の平均空室率は4・9%で、17年末時点で予測していた8・9%の半分程度に収まっていることから「需要は過去の予測より強くなっている」と指摘。

さらに現状は19年第2四半期(4~6月)以降、20年第1四半期までに完成していく物件の総面積の58%で既に契約を締結しているか入居が内定していると分析。17年の時点で同じく今後1年間の完成物件を見た際は23%だったのと比較し、「いかにリーシングが好調かよく分かる。それも過去最高の供給量を経た後の数字なので、需要が次々に湧いてきている状況だ」との見解を示した。


首都圏と近畿圏の空室率推移と予想(CBRE資料より引用)

物流企業が“攻めの姿勢”鮮明に

高橋氏はその背景として、内閣府の機械受注統計の推移を基に、物流業界の設備投資意欲が16年ごろから好転していると説明。「eコマース拡大や人手不足の波が重なってきていることを踏まえると、過去からの挽回と、効率化・省人化といった新時代への戦略的投資の両方が物流施設需要を押し上げている。景気動向よりむしろ業界内、企業内の構造改革によってもたらされており、今の時代に必要な需要量といえる」との持論を展開した。

入居テナントに関しても16~18年ごろは物流施設の契約をする割合は荷主企業が半数以上を占めていたが、19年はこれまでの累計で物流企業が約6割と盛り返してきており、「こうした点からも物流施設の“攻めの姿勢”がうかがえる」と語った。

最後に、これまで言及してきたさまざまな要素を考慮し、首都圏のLMT需要は「EC拡大だけでなく物流業界の積極的な投資意欲を背景に、今後2年間堅調に推移する」と予想した。


市場を展望する高橋氏

地方エリアの需要が今後さらに顕在化も

続いて、CBREインダストリアル営業本部の長島淳アソシエイトディレクターが、「ドライバー不足時代の地方都市の可能性」と題し、トラックドライバーの不足が物流施設開発に及ぼす影響を考察した。

長島氏は、ドライバーの拘束時間上限などを定めた厚生労働省の改善基準告示を順守した場合、現実的にドライバーが荷物の輸送に充てられる時間は1日当たり6時間になり、東京や大阪、名古屋など都市部から運ぶことができるエリアは限られるとの見方を示した。

物流業界でも労働環境改善の潮流が強くなる中、長距離を運ぶ場合にルートの途中でドライバーが交代する「中継輸送」などの取り組みが広がっており、拠点を分散する需要が生まれていると解説。「これまであまり注目されていなかった、物流集積がそこまで進んでいない地域が注目されている」と述べ、一例として東北北部の岩手県北上市や、関東と中部・関西の長距離輸送の中継点として静岡県新富士市を挙げた。

併せて、CBREに寄せられたニーズでも、3大都市圏以外でも16~18年にかけて九州が30万坪、東北が17万8000坪など一定量出ていると表明。同時に「各エリアでニーズに比較して実際の募集面積がまだ十分でない」と課題にも触れた。

その上で、物流施設ユーザーへのアンケート調査結果と合わせて「雇用を確保しやすく、中継拠点としても利用可能で、拠点開設のコストがリーズナブルな地方エリアの需要が今後ますます高まる可能性がある」と総括。

一方で「その受け皿となる供給が十分ではなく、需要が顕在化しないまま終わってしまうということが起こり得る。確かに地方エリアでの供給は決して容易ではないが、雇用不足から生まれる需要はもはや避けては通れない課題。その課題を捉えた取り組みこそが、物流業界が健全かつ持続的に成長していく上で必要不可欠。デベロッパーとしても十分魅力的な案件であり、新たな投資のチャンス」と呼び掛けた。

(藤原秀行)

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