国交省、「輪軸」のデータ不正でJR貨物に事業改善命令

国交省、「輪軸」のデータ不正でJR貨物に事業改善命令

「輸送の安全確保の仕組みを根底から覆す」と批判、再発防止策報告を指示

国土交通省は10月31日、貨車や機関車を整備する際、車輪に軸を取り付けた「輪軸」を組み立てる作業でデータを改ざんするなどの不正を行っていたJR貨物に対し、鉄道事業法に基づく事業改善命令を同日付で出す行政処分を科した。

国交省は、JR貨物の不正について「輸送の安全確保の仕組みを根底から覆す行為であり、到底容認できるものではない」と批判。再発防止策を報告するよう指示した。

輪軸をめぐっては、JR貨物以外の鉄道事業者でも相次ぎ発覚している。この問題で行政処分が出たのはJR貨物が初めて。

JR貨物は同日、「命令を厳粛に受け止め、講ずべき措置を確実に実施し、二度とこのような事態を起こすことのないよう、社員一丸となり再発防止および信頼回復に努めてまいります」との談話を発表、謝罪した。

JR貨物は9月、山口県の新山口駅で7月に貨物列車の脱線事故が起きた後、広島車両所で車輪に軸を押し込む作業をしていた際、社員からの申告があり不正が発覚したと発表。不正を行っていたのは北海道支社輪西車両所(北海道室蘭市)、関東支社川崎車両所(川崎市)、関西支社広島車両所(広島市)の3カ所で、計約600両分でデータの改ざんがあったという。

国交省が鉄道事業法に基づき、JR貨物に特別保安監査を行った結果、こうした不正の事実を確認。車輪に車軸を押し込む際の圧力が基準を超えた場合、基準値内に収まったようにデータを書き換えるなどしていた。

国交省は事業改善命令の中で、JR貨物では規定から逸脱した輪軸をそのまま使用する運用が、長く職場内で、口頭で漫然と踏襲されていたり、コストや手間を惜しんで規程に定められた作業を怠っていたりしたと説明。規程類自体、社内で体系的に整備されていなかったことも明らかにした。

圧力値が規定を逸脱した場合、事業所の管理者からの再圧入の指示を避けるためデータを書き換えていたと指摘した。

その上で、輪軸組立作業に関し、規程類を社内で体系的に整備することや適切に管理できる体制に改善すること、データ書き換えが容易にできない仕組みを確立することなどを求めた。

(藤原秀行)

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