TOB相手、「依存度さらに高める可能性」と指摘
外航海運事業を手掛ける富洋海運は11月6日、100%子会社で資産管理などを担う堂島汽船(大阪市)を通じ、兵機海運に株式公開買い付け(TOB)を実施していることに関連して、兵機海運からの質問事項に回答したと発表した。
この中で、TOBの狙いについて、富洋海運側から今年5月、資本・業務提携を提案したのに対し、兵機海運が何も評価を示さず謝絶したと説明した上で「対象者の株式所有比率を上げることで、対象者と真摯に協議をする動機を高めつつ公開買付者の提案に対して評価をして頂き、当該評価を受けて更に対象者の企業価値向上に向けた協議を加速すること」と従来の見解をあらためて表明した。
同時に、「対象者の意思決定に圧力をかけることや公開買付者及び富洋海運に有利な資本業務提携を応諾させることを狙いとしたものではありません」と明言。「あくまでも対象者との資本業務提携を早期に実現することを狙いとしており、対象者の経営の独立性は維持することを想定しております」とアピールした。
加えて、「対象者を持分法適用会社とすることまでは企図していない」と重ねて明言。株式保有比率は19%を上限としていることを訴えた。
事前に兵機海運へTOBの件を相談しなかった理由を問われたのには「公開買付者としては、仮に対象者との協議を継続した場合においても、対象者内部において真摯にかつ迅速に業務提携の検討が進まない可能性が高いものと考え、本公開買付けを開始するに至りました」と解説した。
富洋海運は回答内容を説明するのに併せて、兵機海運がTOB開始後、鉄鋼製品の製造・販売などを手掛ける大和工業グループと資本・業務提携の協議を開始することで合意したと発表した点に言及した。
直接の意見表明は避けたものの、兵機海運の大和工業グループ関連の年間売上高が総販売実績の27.8%に達し最大の取引先になっていると指摘し、「大和グループへの依存度を更に高めることに繋がりうる提携については、兵機海運及びその株主の皆様におかれましては、同じく兵機海運株主でもある富洋海運グループの対質問回答報告書の内容を踏まえ、慎重なご検討をいただきたいと考えております」と説明、兵機海運の動きをけん制した。
(藤原秀行)