東京港が待ち時間解消に荷主企業等と連携
オフピーク搬出入とモーダルシフトを促進
2024年問題への対応で当面の課題となるドライバーの待ち時間削減に、東京港が本腰を入れている。ふ頭周辺の交通混雑を緩和するため、ハードの整備を進めるとともに、荷主に対して午前中などコンテナターミナルが比較的空いている時間帯に搬出入を行う「オフピーク搬出入」や、トラック輸送を内航船・鉄道に転換する「モーダルシフト」を呼びかけている。
複数の荷主と物流企業が連携
クボタ、本田技研工業、コマツ、三桜工業、白石カルシウム、鶴見製作所の荷主6社と、吉田運送、みなと運送、鈴与、日新の物流会社4社が連携して、東京港のオフピーク利用に向けた共同プロジェクトを開始する。港湾エリアにあるシャーシー置場をコンテナ中継輸送の「デポ」として活用し、港のオフピークに、コンテナターミナルとの間をピストン輸送することで、ドライバーの待ち時間を解消する(図1)。
クボタを代表とする企業グループがプロジェクトを企画、「令和6年度 東京港オフピーク搬出入モデル事業」に応募して採択された。今年9月から来年2月まで半年間をかけて、プロジェクトの実施から取りまとめまでを行う。野村総合研究所が事業プロモーターとして取り組みに伴走する。
現状、輸入コンテナは一般的に、午後から夕方にかけて東京港のコンテナゲートから搬出して、翌朝一番に荷主の拠点に届けられている。一方、輸出コンテナも午前中にコンテナ詰めを行い、東京港に向かうことが多く、ゲートに着くのは午後・夕方になる。そのためゲート前の待機時間は午前中に比べて午後に長くなる傾向がある(図2)。
ゲートが混雑する時間帯を外してコンテナを搬出・搬入するというアイデアは従来からあった。大手トラック事業者が車庫などを活用して行っている例もある。しかし、中小の事業者では、帰り荷やデポ、車両やシャーシーの確保などが課題となり導入が難しい。
それに対して今回、東京都はこのモデル事業のために24 時間営業の時間貸しシャーシープールの一部を暫定的に「東京港デポ」として確保した。これを1社単独ではなく、モデル事業に参画する荷主と物流会社が共同で利用する。
協力物流会社間で各社のコンテナ発着情報を共有して帰り荷をマッチング。東京港コンテナターミナルと東京港デポ間のピストン輸送の共同化も検討する。一方、荷主の拠点側にもそれぞれ「荷主最寄デポ」を用意、道路混雑の少ない夜間に荷主最寄デポと東京港デポ間を移送して、それぞれの指定時間に出荷または納品するというスキームだ。
東京都の担当者は「これまで港の混雑はトラック事業者の問題として捉えられてきた。しかし、トラック事業者単独ではできることに限界がある。荷主が取り組みを主導することで、一歩進んだ共同化の実現や朝一納品などの制約条件にも踏み込める」と期待する。
2024年問題への対応を支援
東京港は現在、4つのコンテナふ頭で年間約408万TEUの外貿コンテナを取り扱っている(23年)。これは全国の取扱量の約4分の1、東日本の約6割にあたる。東京港には北米・欧州・アジアなどを結ぶ多様な航路が就航し、日本各地の地方港とのフィーダー航路網も充実している。また大井コンテナふ頭はJR貨物の「東京貨物ターミナル駅」と隣接、後背地の首都圏には都心部を中心とする道路ネットワークが形成されており、東京港はマルチモーダル輸送の要としての役割を果たしている。
港のさらなる機能強化に向けた取り組みも進んでいる。従来はふ頭のキャパシティ不足や、トラックが夕方に集中することなどから、時期や時間帯によっては港周辺で交通混雑が発生していた。そこで東京港では、中央防波堤外側コンテナふ頭を新設、青海コンテナふ頭を再編・整備するなどして港全体の処理能力の強化を図っている。
ICTを活用した効率化にも取り組んでいる。21年7月には全国の港で初めてふ頭周辺の混雑状況を見える化した。トラックがコンテナターミナルに入場するまでに要した待機時間等を、トラックに搭載された専用GPS端末の位置情報を活用してリアルタイムで公表している。
コンテナ搬出入の予約制も開始した。国が開発した新・港湾情報システム「CONPAS(コンパス)」を活用して、22年8月に大井コンテナふ頭の一部で予約制事業を開始、実施ターミナルや利用対象者などの規模を順次拡大している。
一連の取り組みの結果、東京港周辺の道路混雑は大幅に緩和された。過去のピーク時と比べるとゲート前に並ぶトラックの待機列の長さは7割削減され、これに伴い待ち時間も大幅に短縮された。停滞したトラックが周辺道路を埋め尽くす風景ももはや過去のものとなっている。それでも、時期やターミナルによってはトラックが集中することはある。
今年4月に物流関連2法が改正されて、2024年問題への対応策として、発荷主・着荷主に荷待ちと荷役時間を合計2時間以内に収めることが義務付けられることになった。今のところ港湾は対象から外れているが、手をこまねいているわけにはいかない。
そこで東京都が今年度、荷待ち時間の削減に向けて新たに打ち出した対策が「オフピーク搬出入」だ。その基礎データを提供するため、各ターミナルの時間帯別所要時間や、年末年始・大型連休前後などの混雑状況を分析した結果の公表も今年度中に開始する。
物流の2024年問題で最も直接的な影響を受けているのがトラックの長距離輸送だ。一度に大量の貨物を輸送できる内航船や鉄道へのモーダルシフトは、有効な代替策と目されている。東京都も今年度、荷主企業のモーダルシフトを後押しするため、各種の支援制度の新設や拡充を行っている。
しかし、オフピーク搬出入とモーダルシフトはいずれも物流に関わる関係者の協力がなければ効果を発揮しない。そのため東京都はトラック事業者だけでなく、荷主やフォワーダーとも連携して取り組みを進めていく方針だ。
特に先のモデル事業は、東京港の混雑解消に貢献するだけでなく、安定的な輸送力の確保やトラックの生産性向上、脱炭素化への貢献など、荷主と物流企業の双方にとっての大きなメリットにつながる。プロジェクトに参加する各社も継続的な実施を見据えて、取り組みを拡大していく意欲を持っている。持続可能な物流の未来に向けた企業間連携の先導役となることが期待される。
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東京都港湾局 港湾経営部振興課
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