静岡・焼津の協同組合に寄贈、マグロの円滑輸送サポート
出光興産は11月21日、ディーゼルエンジンのトラックやバス、乗用車の排ガスを浄化する装置「DPF」が目詰まりを起こさない無リン・無灰のエンジンオイル「AshFree」(アッシュフリー)を普及させて運送業界のトラック運行・管理の負荷を軽減し、「物流2024年問題」などへの対応を促進する取り組みを展開すると発表した。
出光は同日、静岡県焼津市内で、静岡県貨物運送協同組合に所属している運送会社を代表し、ハッスイトランスポート(同市)にAshFreeを寄贈するイベントを開催。焼津特産のマグロを全国へ円滑に輸送できるようサポートする方針を宣言した。
出光は同組合の所属企業にAsh Freeを提供して効果を実感してもらい、現在使っているエンジンオイルと公正な条件で比較してもらいたい考え。
AshFree
DPFはマフラーに取り付け、排ガス中の粒子状物質(PM)を捕捉、除去している。しかし、軽油の燃焼で生じるススや、ディーゼルエンジンオイルに含まれる金属添加剤が焼えて生まれる灰が堆積するため、トラックの走行距離が増えると目詰まりを起こし、浄化機能が低下してしまう。
目詰まりの程度がひどくなると、車両の走行を30分ほど止め、手動でエンジンを高回転でアイドリングさせて詰まったススを燃やす「手動再生」が必要になる。荷物の輸送に支障を来すなど、トラックドライバーや整備士の大きな負担となっている。手動再生時も軽油を消費するため、コストの面でも重荷になっていた。
出光は排ガス規制強化の流れを受け、20年以上前から無灰の新たなディーゼルエンジンオイルの開発を続け、2022年に発売までこぎ着けた。AshFreeは金属添加剤を使わないことで、灰の発生を防げるという。
新品のDPF(上)と、通常使ったDPF(中)を比べるとススなどでひどく汚れているのが目立つ。AshFreeを使ったDPF(下)は汚れが大きくは目立っていない
AshFreeにオイルを交換するデモ
式典に参加した出光潤滑油二部の佐藤俊仁セールス&マーケティング課長は、トラックの経年劣化が進むと手動再生の頻度が増し、トラックを走らせることができない待機時間が長くなってしまうと指摘。マグロ配送でも、東京の豊洲市場で荷降ろしまでの待機時間が長く、手動再生が増える環境にあり、輸送の負荷が増してしまう恐れもあることに言及した。
その上で「エンジンオイルを通して経営改善に貢献していきたいと強く思っている」と語った。
同じく出光潤滑油二部の霜崎英紀セールス&マーケティング課チーフエンジニアは、AshFreeを使うことでDPFのメンテナンス費用が減り、手動再生の時間解消でドライバーや整備士の労働時間抑制にもつなげられると強調した。AshFreeは一般的なディーゼルエンジンオイルより値段は3倍程度高いが、霜崎氏はトラック1台当たり年間で26万円程度、経費を抑えられることなどから「トータルで見ればメリットの方が大きい」と自信を見せた。
既にAshFreeを使った経験を持つハッスイトランスポートの佐伯靖則代表取締役は「手動再生しなければいけない状況は突然来る。時間は30分程度かかるし、非常に困っていた。忖度なしで申し上げるが、AshFreeを採用した結果、手動再生はほぼ皆無になった」と説明。遠方に向かうトラックは原則全てAshFreeを使っており、静岡県貨物運送協同組合に所属している他の運送会社にも使ってほしいと期待を寄せた。
撮影に応じる(左から)静岡県貨物運送協同組合・恒松公太資材販売課主任、出光興産・佐藤氏、ハッスイトランスポート・佐伯氏。一番右は焼津市のマスコットキャラクター「やいちゃん」
(藤原秀行)