厚労省の審議会が了承、初期症状の放置・対応の遅れ回避図る
厚生労働省は3月12日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の安全衛生分科会(分科会長・髙田礼子聖マリアンナ医科大学予防医学教室主任教授)を開催した。
厚労省から、企業に対し、一定の条件を満たす現場作業を対象に、熱中症対策を義務化し、違反した場合の罰則も設けることを柱とした労働安全衛生規則の改正案を提示、承認を得た。
夏場の猛暑が恒常化し、業務中に熱中症で亡くなるケースが相次いでいるため、対策を急ぐ。厚労省は今年6月1日に改正内容を施行したい考えだ。
改正案は、対策義務化の対象として、気温や湿度などから熱中症のリスクの高さを算出する「暑さ指数(WBGT)」が28度以上か、気温が31度以上の環境下で、連続1時間以上もしくは1日4時間以上の実施が見込まれる現場作業と定義。
熱中症の恐れがある人や熱中症の自覚症状が出ている人を現場で早期に発見、対応できるようにするため、事業所ごとに緊急の連絡先や担当者、搬送先などをあらかじめ明確に示しておくとともに、重篤化を避けるため作業から離したり体を冷やしたりするなど対応の手順を作成し、周知することを義務付ける。
守らなかった場合は企業や代表者らに6月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せる。
厚労省の集計では、職場で仕事をしている際に熱中症になった人は2023年度が1106人、このうち亡くなった人は31人に達した。
死去したケースの大半は、発見が遅れたり、医療機関に搬送しなかったりと「初期症状の放置・対応の遅れ」が原因となっていたことから、厚労省は対策強化が必要と判断した。
(藤原秀行)