コスモ石油が説明、廃食用油の国内安定調達に意欲
コスモ石油は3月14日、東京都内で記者会見し、環境負荷が低い航空燃料「SAF」製造事業の展開について説明した。
2030年にSAFを年間30万kl供給するとの目標達成に向け、大阪府堺市のコスモ石油製油所内でこのほど竣工した、廃食用油を使ったSAFの量産可能な製造設備を4月から稼働させることにあらためて言及。同設備で26年にもフル稼働を始め、年間3万klを算出するとの見通しを示した。
30年時点で目標としている30万klの供給量のうち、廃食用油からのSAF精製が年間3万kl、とうもろこしなどから作るバイオエタノール原料のSAF製造が15万klで、残りは輸入する方向を想定していると解説。一般家庭や企業などから廃食用油をより安定的に調達できるようにするなど、国内でサプライチェーンをより確実に運営していくことに強い意欲を見せた。
堺市のSAF製造設備(コスモ石油提供)
会見でコスモ石油の高田岳志次世代プロジェクト推進部長は「プラントを動かしたり、輸送したりするのはわれわれも石油事業で慣れているが、廃食用油を小さな単位で集め、安定的に持ち込んでもらい処理するのはかなり手間もかかるところ。その部分をしっかりやっていくことが大事なポイントだ」と強調した。
SAF事業ではコスモ石油と日揮ホールディングス(HD)、レボインターナショナルの3社が2022年に立ち上げたSAFFAIRE SKY ENERGY(サファイアスカイエナジー)が原料の貯蔵や製造などサプライチェーンの主要部分の運営を担う。高田部長はフル生産に入った後、サファイアが製造説委の効率的な運転方法の検討や年間の生産量をさらにアップできる技術の開発などを担うとの見通しを示した。
会見に同席したサファイアの山本哲COO(最高執行責任者)は「世界では廃食用油の争奪戦になっている。レボさんを通じて自ら安定的に廃食油を調達していくことを目指す」との決意を表明。「こういったものを新たに作り上げていくことが自分たちでできるんだ、みんなで参画して脱炭素社会を作り上げていくんだということの第一歩だと思う。(SAF製造のための廃食用油回収の取り組みが)社会行動変容のトリガーになればいいなと思っている」と期待を込めた。
同じくサファイアの西村勇毅COOは「SAFは物づくりではなく価値づくりだと思っている。未来の話ではなく(国内での量産設備解説が)実現したことが、(環境負荷を減らす脱炭素の)さまざまな事業の1つの試金石になることができたのではないか」と自信を見せた。
会見する(左から)コスモ石油・高田氏、サファイア・山本氏と西村氏
撮影に応じる3氏
(安藤照乃、藤原秀行)