TOPPANグループなど、へき地医療改善へドローン活用した「空飛ぶAED」実用化目指す

TOPPANグループなど、へき地医療改善へドローン活用した「空飛ぶAED」実用化目指す

国内初、山梨・北杜で実証実験

TOPPANホールディングス(HD)は3月19日、山梨県北杜市、TOPPANHD傘下のTOPPAN、TOPPANデジタル、エアロダインジャパンの3者と連携し、一定の条件を満たせば補助者なしでドローンを飛ばせる「レベル3.5」自律飛行で、AED(自動体外式除細動器)を空輸する実証実験を、同市で3月10~12日に実施したと発表した。

心臓発作などの救急医療が必要なケースでは、数分以内にAEDを使うことで生存率を高められるが、過疎地域は距離や地理的な制約で救急車到着まで数十分を要するところもある上、人口減少などに伴い救急、医療、消防職員の人手不足深刻化が見込まれているだけに、対応が急務となっている。

 
 

また、過疎地域の心肺停止事例は3分の2が住宅内で発生しており、家族が患者を残して近隣の公共施設にAEDを取りに行くのは困難なため、より早くAEDを住宅へ届けられる仕組みが求められている。

こうした事情を打開するため、4者がタッグを組み、ドローン活用に乗り出した。TOPPANHDは、レベル3.5自律飛行で、AEDを集落間でドローン配送したのは国内で初めてと説明している。

実証実験は、へき地医療の救命救急迅速化を目指し、AEDをドローンで出発地点から最大約7km離れた集落まで運び、心肺停止患者の発生からAEDを使用するまでのデモンストレーションを実施。ドローン活用の有用性を確認するとともに効率的な配置方法や飛行ルートの組み方を検証、自動化に向けた技術的・規制的課題を抽出した。

今後、4者はTOPPANグループが持つ「ハイブリッドToF(Time of Flight)」センサーを活用した精密着陸技術やエアロダイングループが持つ自律飛行技術などを組み合わせ、北杜市で実用化を目指すとともに、AEDドローンの社会実装を推進していきたい考えだ。


実証実験の様子

実証実験の概要と成果

目的 

へき地医療におけるAEDドローンの飛行実証

場所

山梨県北杜市須玉町増富地域、明野地域

期間

2025年3月10日(月)〜12日(水)の3日間、計7回の飛行

概要

消防署から遠い中山間地域の民家で心肺停止事案が発生したと想定。119番通報とともに、近隣の公共施設に設置されたドローンポートからAEDドローンが自律飛行し、通報があった民家までAEDを配送。救急車よりもどの程度早くAEDを届けられるかを実証。

検証項目

・AEDドローン到着までの所要時間の確認と救急車到着との比較

・ドローンの自動運航で対応可能な地域範囲の確認

・AEDドローンの最適な配置場所・飛行ルートの設定

・自動精密着陸の実現に向けた、TOPPAN独自の「ハイブリッドToF」センサーを用いた障害物検知(電線など)

・TOPPAN独自の「消火フィルム」をドローンのリチウムポリマーバッテリーに装着をした状態で、飛行が可能か検証

結果

【全体】

  今後増えていく過疎地でのAEDドローン活用の有用性が確認できた。また、それらを社会実装していくための最適な配置方法や飛行ルートの設定方法を確認できた。

  

【結果と考察】

  ・最長距離6.2km離れた民家の軒先まで飛行させた際には、時速54kmで直行し通報から約10分で到着した。一方、消防署から同時に出動した救急車は到着まで約40分かかり、緊急性を要する場面でのAEDドローンの有用性を証明した。

  

・エリア内で広範囲に点在する7つの集落をカバーする効率的なルートを設計し、地区内の民家ほぼ全てをカバー出来た。

  

・従来のセンサーでは検知が難しい電線など小さな障害物を「ハイブリッドToFセンサー」で検知した。着陸時の障害物回避の対策としての有効性を確認した。

【課題】

社会実装に向けて、手法と要素技術の有効性は確認できた一方、機能連携や小型化など、プロセス全体の自動化に向けた技術課題が明確になった。また、AEDドローンのマルチユース化や実用化に向けての課題も明らかになった。

 
 


救助者がAEDを受け取る様子(デモンストレーション)


「ハイブリッドToF」センサー電線検知画像(左がセンサー画像、右がカメラ画像)

(藤原秀行)※いずれもTOPPANHD提供

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