調査結果発表、千田社長「会社全体の構造的問題」と謝罪
日本郵便は4月23日、全国の郵便局で配達時の前後にドライバーの酒気帯びの有無や健康状態を確認する法定の点呼業務の執行状況を調査した結果、集配を担っている3188局の75.0%に相当する2391局で、必要な項目の全て、もしくは一部を実施しない不適切な点呼があったことを確認したと発表した。
調査した点呼執行数40万9000回のうち、不適切だったものは26.1%の15万1000回に達した。13支社の全てで不適切な事例を確認している。
郵便局に調査期間中、1回でも点呼に不備があった場合は不適切だったと分類している。不備の具体的な内訳は現在調査しているという。
(日本郵便公表資料より引用)
ドライバー自身が普段飲酒しないためにアルコールのチェックをしなかったり、管理者がいる時だけチェックしていったりといった事例が見られたほか、点呼を実施していないにも関わらず書類上は適切に行ったかのように偽って記録していた悪質なケースもあった。
また、日本郵便社内の点呼マニュアルの内容自体に不備があり、その内容に沿って点呼をしていたケースも不適切事例に含まれているという。
同日、東京都内で記者会見した同社の千田哲也社長は「今回の問題でお客様をはじめ、関係の皆様に大変なご不安、ご心配をおかけしていることを心よりおわび申し上げる」と謝罪。「国土交通省から厳しい行政処分が下されることが想定される。役員一同、極めて重大な事案と受け止め、再発防止策を確実に実施することを全力で果たしていきたい」と述べた。
会見の冒頭に謝罪する千田社長
「会社全体の構造的問題ということが明確になったと受け止めている。書類が整っていれば点呼できていると考えた。(本社や支社にも)実態を把握するというガバナンスが欠如していた」との見解を示し、不適切な点呼がいつから始まったのかとの質問に対しては、詳細は調査中と述べた上で「かなり昔から(ルールの)不徹底が行われていたのではないかと思う」と語った。
点呼を適切に行っていないにもかかわらず、記録上は適切に実施したと虚偽の報告をしていたケースが相当数あると言及。問題全体への責任に関しては「経営として知らなかったというのは許されない。経営の責任は非常に重い」と指摘、国土交通省からの行政処分の内容などを踏まえ、役職員の処分を検討する考えを明らかにした。
不適切な点呼の発覚で郵便・物流業務に影響が出る恐れがあることについては「決してオペレーションに影響が出るようなことは起こしてはいけない。そのために必要なコストがかかるのであればちゃんと出しながら、仕事をちゃんとやりきっていくことを最優先したい」と話した。
再発防止策としては、2025年度上半期中をめどに全集配局で正確な点呼記録が可能なシステムを導入することなどを列挙した。
この問題では日本郵便が今年1月、近畿支社管内の小野郵便局(兵庫県小野市)の「東条旧集配センター」で、法定の点呼業務を適切に実施しないまま郵便物などの配達を行っていたことを確認。
当該事例を踏まえ、近畿支社管内で配達などのみ担っている同規模の郵便局178カ所を対象に、1週間の点呼業務執行状況を調査した結果、期間中に何らかの不備があったのが約8割の140カ所に上った。点呼を行っていなかったり、虚偽の点呼記録があったりしたという。
そのため、日本郵便が全国に対象を広げて3月から調査を続けていた。
日本郵便は4月23日、総務省と国交省に調査結果を報告した。総務省は同社に対し、再発防止策と全国一律の郵便・物流業務維持策に関する報告徴収命令を出した。期限は6月30日。
国交省も点呼を義務付けている貨物自動車運送事業法に則り、各地の郵便局などへの監査に踏み切り、実態把握に乗り出す見通し。
(写真・中島祐、本文・藤原秀行)