マテハンに150億円投資、ロングテール商品でも迅速配達可能に
アスクルは5月23日、埼玉県上尾市に開設した新たな物流拠点「ASKUL関東DC(ディストリビューションセンター)」をメディアなどに公開した。
日本GLPが開発した物流施設「GLP上尾」を1棟借りしている。地上5階建て、賃借面積は10万4951 ㎡で、アスクルとしては全国11拠点中、2番目の規模。
法人向けEC「アスクル」と個人向けEC「LOHACO(ロハコ)」の両方の商品保管・出荷を担う東日本の基幹拠点として運営、関東から東北エリアをカバーする。最大21万アイテムを在庫することが可能という。稼働開始は今年6月の予定。
「ASKUL関東DC」が入る物流施設の外観
おなじみのマークも敷地内に
開所式であいさつするアスクルの吉岡晃社長CEO(最高経営責任者)
4~5階は出荷が低頻度、3階は高頻度から中頻度、2階は高頻度の商品をそれぞれ保管。頻度に最適のマテハン設備を取り入れている。
自動化機器を積極的に投入し、出荷を迅速化。マテハン設備には約150億円を投じている。現在は「AVC関西」(大阪府吹田市)から出荷している東日本向けのロングテール商品(出荷頻度がそれほど高くないもの)の取り扱いを関東DCに移し、ロングテール商品であっても東日本エリアで迅速に配達できるようにする。
出荷能力が余剰になっているLOHACO専用拠点「AVC日高」(埼玉県日高市)を閉鎖し、新拠点に機能を集約。物流施設賃借コストの抑制と出荷の適正化を図る。また、新拠点はロングテール商品を集約・拡大し、1箱にまとめて発送することで売り上げ単価をアップさせる構想を立てている。
物流拠点の公開と併せて、自動化設備のデモンストレーションも披露した。アスクルで初めて搬送コンベアーの代わりに、トーヨーカネツが取り扱っている中国Zhejiang LiBiao Robot(浙江立鏢機器人)製の自動仕分けAGV(無人搬送ロボット)を160台採用。高頻度のデジタルピッキングエリアに投入する。出荷量に合わせて現場に投入する台数を柔軟に変えられるようにする。
自動仕分けAGV
また、ギークプラスの自動ピッキングシステム「PopPick」(ポップピック)も導入。AGVが商品を保管している棚の下に潜り込んで作業スタッフの元まで運ぶGTPタイプで、AGVは444台、ピッキング作業をするステーションは28台取り入れている。入出荷と保管の業務を大幅に効率化することを目指す。
合わせて、入荷した商品を保管場所まで自動搬送する愛知機械テクノシステムの6輪台車搬送AGV「Carry Bee Dragon3」を12台活用する。これもアスクルの物流現場では初の試みとなる。入荷エリアから保管場所まで作業スタッフが繰り返し往復する搬送業務を自動化し、作業負荷を大きく減らす計画だ。
自動ピッキングシステム。AGVが商品の入った棚を持ち上げて搬送している
6輪台車搬送AGVが商品を運ぶ
さらに、プラスオートメーションの工程間搬送ロボット「LUC-L1500V」1台を採用し、今年6月にPoC(概念実証)をスタートする。エレベーターに乗り込んで他の階との間を垂直移動できる。従来は作業スタッフがハンドリフトで移動させていた作業を効率化することを目指す。国内で初の試みという。
このほか、環境負荷低減策の一環として、拠点内で使用する折り畳みコンテナの一部に、アスクルの使用済みクリアホルダーを利用した再生材を取り入れる。当初は1万1500個でスタートし、徐々に個数を増やす予定。
デジタルピッキングシステムを使い、ピッキングした商品を梱包するエリア
自動封函機
出荷エリア
(藤原秀行)