独自のプロジェクト進捗公表、人材獲得競争激化受け岡山県外に活動拡大
岡山に本拠を置く両備ホールディングス(HD)を中心に交通運輸事業などを展開している両備グループは6月10日、岡山市内で記者会見し、グループで独自に展開している路線バスやトラックなどの事業のドライバー・乗務員の採用活動「宇宙一本気(マジ)な乗務社員採用プロジェクト」の進捗状況を公表した。
プロジェクトは2023年6月~24年6月に「シーズン1」と称して活動を展開。新型コロナウイルス禍や「2024年問題」の下、1年間で200人を採用するとの目標に対して実績は216人に達した。採用への応募は1054人に上ったという。
両備グループは会見で、24年11月に始めた「シーズン2」も年間200人採用の目標を維持し、今年5月末までの7カ月間で応募が468人に達しているが、応募数自体はシーズン1に比べて2割減り、採用数も累計で94人と目標の半分に届いていないことに言及。人材獲得競争の激化が響いていると説明し、地道にプロジェクトを継続するとともに待遇改善の強化、採用活動対象地域の岡山以外への拡大を図っていく考えを示した。
会見で両備グループのトランスポーテーション&トラベル部門の大上真司 副部門長は「物価高に負けないような賃上げを実現していくことが至上命題だ。賃上げを実現していきながらも利益が落ちていかない構造をしっかりとつくっていく」と強調。ドライバーの採用促進の一環で賃上げを継続していく姿勢をアピールした。
会見する大上氏(オンライン中継画面をキャプチャー)
両備グループは今年4月、岡山地区のトラックやバスなどの部門で、賃金の総支給額を平均5%以上引き上げており、賃上げは3年連続という。大上氏は「誇れる」「稼げる」「続けられる」会社を目指すと説明した。
プロジェクトのシーズン1は、グループ各社の交通運輸部門が協力して一括採用する方式に変更し、就職説明会を800回以上開くなど採用活動を強化した結果、大幅に採用人数を伸ばせた。その経験を生かし、シーズン2も参加者が最新のトラックやバスなどの車両を見学したり、ドライバーと交流したりできる「プロドライバーなりきり体験会」を開催するなど、ドライバー職の魅力発信に努めている。
両備グループは人材獲得競争が激しくなっている上、岡山県内で就職希望者を一定程度掘り起こしたこともシーズン1からの採用数のペースダウンに影響していると推定。中四国エリアを中心に採用活動の範囲を広げていくことにした。
具体的には、6月中にプロドライバーを対象とした相談会を岡山市内で実施。さらに、7月21日に広島県福山市で、岡山県外では初めて、実際に事業で使っている車両の運転を体験できるイベントを開き、岡山県周辺にも運輸交通サービスの意義を訴えていく予定。7月26日には岡山県内で新たな体験イベントを開催することを企画している。
並行して、SNSを活用して求人情報を公開するほか、特設のウェブサイトでイベントを告知したり、動画投稿サイトのYouTubeにPR動画を載せたりしていく活動を継続する。こうした活動を広げて、従業員が「誇れる」会社に進化させていく方針だ。
併せて、賃上げにも注力する方針を明示。トラック、バス、鉄軌道(路面電車)、バスの各分野で全てベースアップ(ベア)を実施しており、岡山の同業の平均を上回る年収を確保している。働けば「稼げる」会社であり続けるよう配慮している。
大上氏は、5%のベアを実施すると人件費が10億円近く膨らむことを明らかにした上で「社員の幸せを考えた時に一生懸命仕事をしても生活が苦しいということがあってはならない」と語り、業務の生産性向上などで人件費アップを吸収できるよう日々経営努力していることを強調した。
加えて、「続けられる」会社とするため、2030年までに高速バスの車両の100%を衝突被害軽減ブレーキなど最新の安全装置を装備しているものにすることなどを進め、働きやすい環境を整備する方向性を解説した。
(藤原秀行)