国交省が検討会に最終取りまとめ案提示、基本ルートの東京~大阪以外にも拡大検討
国土交通省は7月31日、既存の道路インフラを活用して自動で荷物を輸送する「自動物流道路」の実現に向け、必要な機能や克服すべき課題などを議論する有識者らの検討会(座長・羽藤英二東京大学大学院工学系研究科教授)を開催した。
自動物流道路は国交省などが高速道路の地下や中央分離帯などに専用空間を設け、特別の物流機器に荷物を積み込んで輸送することを想定している。国交省がこれまでの議論を踏まえ、自動物流道路の機能などに関する最終取りまとめ案を提示、出席者から座長一任の形で了承を得た。近く、正式決定の上、あらためて公表する。
今夏にロードマップ作成開始
最終取りまとめ案は自動物流道路について、2027年度までに新東名高速道路の未開通区間を使って実地で実験した後、30年代半ばまでに小規模な改良で実装が可能な区間で自動物流道路の運用を開始することを目指す方向性を明記。その前段として、11月から2026年2月にかけて、茨城県つくば市の国土技術政策総合研究所の試験走路で実証実験を行うことも予定している。
運用は24時間稼働とし、小ロットの輸送に対応できるようにすることなどでトラックドライバーの負荷を低減することを表明。稼働に当たっては脱炭素技術を駆使し、負荷の低い輸送手段にすることもあらためて打ち出している。
輸送はT11型の標準仕様パレット(平面サイズ)に統一し、荷姿は高さを2.2mまでに抑えることを基本に設定。保冷機能を持たせたり、自動仕分け機能を取り入れたりすることも検討する。
また、展開する区間は既に検討会の中間取りまとめでも示している通り、最も荷物の輸送量が多い東京~大阪間を基本にしながら、関東・東関東や兵庫などに拡大することについても検討する旨を提示。時速70~80kmで移動することを目指す方針も盛り込んでいる。これまでは30kmをイメージしていたが、より高速で荷物を運べるようにし、トラックの機能を十分代替することを目指す。
以下の4区間で、2025年度中に整備のイメージに関するケーススタディーを行うことも提唱している。周辺道路の整備に向けた簡易なルート設計や中間地点設置などで接続の技術を検討するほか、うまく物流が機能するかどうかシミュレーションを実施することも予定している。周辺道路の渋滞状況なども確認する。
①東名厚木IC周辺(伊勢原JCTなど) ~ 東名駒門PA または愛鷹PA(沼津IC)
②東名厚木IC周辺(伊勢原JCTなど) ~ 新東名駿河湾沼津SA
③名神養老JCT周辺 ~ 名神関ヶ原IC周辺
④新名神城陽IC ~ 八幡京田辺IC
自動物流道路の効果として、2030年時点で見込まれている輸送量(トラック)不足分の8~22%程度をカバーできるとの試算を出している。
国交省は自動物流道路の実現に向けたロードマップ(行程表)を作成する考えを示しており、今年の夏にスタートする予定。
(藤原秀行、安藤照乃)