稲作・畑作で利用促進図る
Terra Drone(テラドローン)は8月28日、ヤンマーホールディングスグループのインドネシア現地法人Yanmar Diesel Indonesia(ヤンマーディーゼルインドネシア)と、自社開発の農業用ドローンに関する販売パートナー契約を締結したと発表した。
テラドローンは、ヤンマーディーゼルインドネシアを現地代理店として、テラドローンの子会社でインドネシアに拠点を置くTerra Drone Indonesia(テラドローン・インドネシア)を通じてインドネシア政府や同国の農業従事者向けにドローンを使ったソリューションを展開する。
ヤンマーグループが世界に張り巡らせている顧客ネットワークを生かし、インドネシアの農業分野でより多くの顧客にドローンを用いたソリューションを提供していきたい考え。
インドネシアは全人口の約3割が農業に従事し、GDP(国内総生産)の1割以上を同分野が占めるなど、農業は経済と食料安全保障を支える重要な基幹産業となっている。その一方、広大な農地を有するインドネシアの農業現場は害虫被害による収穫量の低下や経済的損失に加え、人手不足も深刻な課題となっている。
限られた人手で広範囲を対応するには手作業では限界があり、農薬や肥料の過剰散布やむらが生じるなど、作業の非効率性も解決が強く求められている。
テラドローンはこれまで、世界の約6割を占めるパーム油の主要生産国インドネシアで、パームヤシに対するドローンを活用した農薬・肥料散布事業を提供してきた。パーム油の原料となるアブラヤシの育成や害虫防除を目的として、テラドローンが自社開発したスポット散布技術を用いることで、特定エリアへの的確な散布を可能にしている。
ドローンの活用により、人手作業に比べてむらや過剰散布を抑え、農薬・肥料を効率的に使用できるため、収穫量の向上や生産性の改善が見込めるほか、限られた労働力で広範囲に対応することが可能になり、人手不足対策につながると期待している。
さらに、作業者が農薬に直接触れるリスクを低減するなど、安全性の面でも大きな効果を発揮すると想定。既存農地の収量改善により、新たな農地開発の必要性が減るため、森林伐採の抑制にも寄与するとみている。
テラドローンは今年2月、農林水産省「東南アジアにおけるスマート農業の実証支援委託事業」に採択され、インドネシアにおける農業用ドローンの実証と社会実装を進めている。今年5月には、インドネシア国内の大学2校と覚書(MOU)を締結し、ドローンの実地訓練および雇用創出にも携わり同国のドローン産業基盤の強化を図っている。
ヤンマーディーゼルインドネシアは、ヤンマーグループのインドネシアでの製造拠点の1つ。農機のリーディングカンパニーとしてディーゼルエンジンやパワーティラーの製造・輸出、農機の販売を手掛け、インドネシア国内への販売とグローバルな製品供給を担ってきた。
今回の提携で、ヤンマーディーゼルインドネシアは既存の製品群に農業用ドローンを加え、農業従事者に対するソリューションの幅をさらに広げたい考え。ヤンマーディーゼルインドネシアがドローンを取り扱うのは今回が初めてという。
テラドローンはこれまで取り組んできたパーム農園向け事業に加えて、稲作・畑作向け事業をインドネシア国内で展開する新たな一歩になると位置付けている。これまでパーム農園で培った散布技術の開発ノウハウを活かし、稲作や畑作でも農薬散布による害虫防除に加えて、種まきによる作付けにも対応する。
インドネシアで販売する機体は、高性能農業用ドローン「G20」および「E16」で、2025年中に約120台をヤンマーディーゼルインドネシアへ導入し、現地での展開を進めていく予定。
「G20」は液体に加えて粒状の農薬・肥料散布が可能なため、種まきを行うコメ農家による水田での活用が想定できる。最大20kg/20Lの積載が可能なため、広範囲にわたる水田で主にウンカやカメムシなどの害虫防除を目的とした使用が見込まれる。
一方、「E16」は「G20」に比べて積載量は小さいものの、持ち運びのしやすさに優れており、小規模なコメ農家など、コンパクトさが求められる農業現場でのニーズが期待されている。
両機体とも、自動航行ルート生成、障害物回避、地形追従飛行などの飛行モードを備え、不規則な形状の段々畑・丘陵地にも対応可能。さらに、防水・防塵性能や、プラグイン方式によるタンク・バッテリーの迅速交換など、現場での使いやすさを重視した機能も搭載している。
G20が農薬を散布している様子(プレスリリースより引用)
テラドローンは、ヤンマーディーゼルインドネシアの研究開発チームおよびインドネシアの大学とも連携し、「直播(ちょくは)ドローン」の共同開発も進める。直播は田んぼに苗を植えず、種子をそのまま直接まく栽培方法で、テラドローンのスポット散布技術を応用することにより、一定の間隔を保ちながら種まきを行う高性能ドローンの開発にこぎ着けたい考え。
(藤原秀行)