アイ・グリッド・ソリューションズ
「再エネは付加価値というより必須条件」
環境性能が実現する物流起点の共創社会
環境設備を備えた物流施設は珍しい存在ではなくなった。太陽光など再生可能エネルギー(再エネ)や蓄電池を活用することで、投資家に企業姿勢をアピールしたい荷主の要請に応え、地政学リスクの影響を受けやすいエネルギー価格の変動リスクを回避。災害時における事業継続の予見性も高める。Eコマース時代に不可欠な地域共生への道筋も見えてくる。 (本誌編集部)
施設間の優勝劣敗を左右
──グリーン電力の活用を意識した物流施設の供給が目立つようになってきました。
日本GLP 田中英樹 プロパティーマネジメント部担当部長(以下、田中)「小規模物件を除けば、新規供給物件の8~9割は、太陽光パネルを設置している肌感覚です。荷主が再エネの活用やEV(電気自動車)に対応する充電設備などを求めるケースが多くなりました。投資家の視線が厳しさを増す中、環境課題に積極的に取り組む企業姿勢のアピールが不可欠となっているためです」
日本GLP 田中氏
アイ・グリッド・ソリューションズ 櫻井明大 アカウント営業部部長(以下、櫻井)「二酸化炭素(CO2)排出割合が全業種の約2割を占める運輸部門にとって、物流施設のグリーン化は、国内のEV化が進まない中、数少ない環境施策の選択肢です。荷主からも『この施設ではどのような環境配慮を行っていますか』と聞かれるのが当たり前になりつつあります」
アイ・グリッド 櫻井氏
──首都圏エリアで空室率10%とされる物流不動産の市況も影響しているのでしょうか。
田中「日本GLPの物流施設に限れば、直近8年間の稼働率は99%で、入居企業の移転のタイミングなどを除けば空室はほぼ発生していません。一方、市況全体では物流不動産領域に参入する企業が年々増加したことで供給が増えており、一部では『選ばれる施設』と『選ばれない施設』の選別が起こり始めています」
「そしてこの明暗を分ける要因の一つに、環境設備に関連した部分が含まれているとは感じます。投資家目線で言えば、環境設備の有無はもはや『付加価値』というよりも、『必須条件』といったレベル感ではないでしょうか」
──環境性能は必須になってきたと。アイ・グリッド・ソリューションズと日本GLPとの協業が始まった経緯を教えてください。
櫻井「アイ・グリッド・ソリューションズは、物流施設の屋上スペースなどに太陽光パネルを設置し、発電した電力を施設内に供給して消費分の料金を支払っていただく『オンサイトPPA』事業で国内最大規模の実績を持ちます。協業では日本GLPさんの物流施設の屋上に、当社が投資したパネルを設置するケースのほか、入居テナントさまの要望で既存施設をアップグレードした『GLP 平塚Ⅰ』のように、日本GLPさんが投資した太陽光パネルを当社施工で設置し、日本GLP自身が発電事業者となるケースの両面で対応しています」
田中「日本GLPが物流施設に環境価値を付加していく取り組みに着手し、2023年ごろから既存施設への自家消費太陽光電力供給のために屋上などへの太陽光パネル設置を検討し始めた時、アイ・グリッドさんを紹介いただいたのが協業のきっかけです。AIで発電量や消費量を予測してエネルギーを循環させる仕組みの優秀さに加え、蓄電池導入や補助金活用の手法にも明るく、PPAを本業とする事業者としての強みを感じています」
──物流施設は最新マテハン機器による庫内自動化が進むなど、電力消費が増える傾向にありますが、こうした中で再エネ電力の比率を高めるメリットを挙げていただけますか。
櫻井「脱炭素化の文脈以外に、経済合理性でもメリットが生まれつつあります。大手電力会社の電気料金は化石燃料の相場に影響を受けますが、この相場は為替や地政学リスクなど一企業ではコントロールできない要因で変動します。少なくとも長期トレンドとして右肩下がりになるとは考えにくい。電力の再エネ比率を高めることでリスクヘッジが図れれば、経営の安定化にもつながると理解しています」
「太陽光パネルと併せて蓄電池を導入することで、経済合理性はさらに高まります。発電量が多い昼間に余った電力を蓄電して夜間に放出すれば、再エネ自給率を高められます。また大手電力会社の基本料金は、過去1年間の電力使用量が最も多かった30分間の平均使用電力(デマンド)で決まりますので、蓄電池からの放電によってデマンドを抑えられれば、基本料金を抑えることにつながります」
「新たな社会インフラ」の一翼に
──蓄電池が導入されていれば、有事における事業継続の観点からも安心感が違いますね。
田中「おっしゃる通りで、物流は有事の時こそ機能しなければなりません。食品や日用品の流通はもちろんのこと、医療物資が止まれば医療機関も回らなくなりますので、こうした商品を取り扱う荷主企業は、いずれも事業継続性に向けては強い思いをお持ちです」
「日本GLPの物流施設は免震構造を採用しているところも多いので、停電時の電源が確保されれば事業継続の予見性がさらに高まります。これまで災害対策として非常用発電機を整備してきましたが、設置できない物件もありますので、今後は蓄電池の存在は大きいと考えます」
──近年は『地域との共生』も、大型の物流施設を中心として重要な観点となっています。
田中「日本GLPが展開する『ALFALINK(アルファリンク)』ブランドの大規模物流施設は、多くの企業が一つの敷地内に集うことで、これまでにない価値を創造する『ビジネス共創拠点』となることを目指しています。レストランや託児所、コンビニエンスストアといった施設は1社単独で整備したら採算が合いませんが、シェアすることで機能を充実できます。屋上で発電する再エネ電力もこうした機能の一つと考えています」
「また相模原(神奈川県)や流山(千葉県)の施設は、年間約300件の交流イベントが開かれるほか、学生やリモートワーカーが勉強や仕事に使用するなど、地域に開かれた施設として活用いただいています。これまで縁遠かった物流施設を身近に感じてもらうことで、業界全体のイメージ向上につながりますし、災害時における避難施設として意識していただければ、堅牢な構造に加えて緊急電源まで確保されている価値が生きてきます」
櫻井「アイ・グリッドも、地域発の電力で地域のビジネスや生活を支える『GX CITY』の事業構想を掲げています。再エネを生み出す分散型の拠点がネットワーク状につながることで、地域全体の脱炭素化を進める構想です。電気は食品と同様、生活に欠かせない存在です。だからこそ一極集中型の大手電力会社の電力に依存しない街づくりをすることによって、地域の強靭性が高まっていくと思います」
「〝経済の血流〟を支える物流施設はこれまでも重要な社会インフラでしたが、これからは企業同士が『共創』する舞台として、また地域住民が集う場として、発展的な役割を担うようになるでしょう。当社が提供する再エネの〝地産地消〟も、こうしたつながりを支える役割を担っていければうれしいですね」
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