日本初、LIFULL ArchiTechがドローン使ったインスタントハウスの空輸実験に成功

日本初、LIFULL ArchiTechがドローン使ったインスタントハウスの空輸実験に成功

災害時に孤立集落や山間地域へ迅速に居住空間提供可能と見込む

不動産関連事業を手掛けるLIFULLのグループ会社で住環境改善技術の開発などを担っているLIFULL ArchiTechは10月22日、情報処理サービスを展開しているODCと9月26日、ドローンによるインスタントハウスの空輸送実験を実施、成功したと発表した。

インスタントハウスはLIFULL ArchiTechが提供しており、テントシートを空気で膨らませながら内側から断熱材を吹き付けるシンプルな工法で、1棟当たり3~4時間で設置可能という。



LIFULL ArchiTechによれば、高い断熱性能を持つ居住空間を丸ごとドローンで運搬する試みは日本で初めてという。同社は災害発生時に孤立した集落などの陸上輸送が困難な場所に、短時間で居住空間を提供することが可能になるとみている。


ODC実証実験の様子

インスタントハウスは断熱性や遮音性が高く、快適に過ごすことができるほか、耐震性や耐風性を合わせ持つため、被災地支援でも数多く活用されている。トルコ・シリア大地震や能登半島地震では、指定避難所へ行けない人や支援を必要とする人の避難スペース、感染症隔離の医務室、応急物資の管理や行政職員・運営チームの宿泊を含む支援拠点など多様な用途で使われてきた。

ただ、インスタントハウスを設置するには施工用トラックが現地へ入る必要があるため、大雨や地震による土砂災害によって孤立した集落や、山間地域への支援においては、道路が復旧するまで支援が難しいという課題を抱えていた。

課題を解決するため、実証実験では、インスタントハウスの強くて軽いという特徴を活かし、部材ではなく完成した居住空間をそのまま空中輸送することに挑み、無事輸送・設置を終えた。

現地で部材の組み立てを行う必要がないため、被災地に建築の専門知識がある人がいなくても簡単に設置できる上、届いたらすぐに活用することができる。道路復旧に時間がかかる場合でも、迅速に必要な場所へ快適な居住空間を届けることができるようになると見込む。



また、9月28日に富山県南砺市で行われた富山県総合防災訓練では、孤立集落への快適空間の提供を想定したドローンによる空輸送デモ飛行にインスタントハウスが使われ、その様子が公開された。


9月28日に富山県南砺市で行われた富山県総合防災訓練の様子

LIFULL ArchiTechはこれまで、インスタントハウスをそのまま海に浮かべて船で牽引する海上輸送の実証実験や、分割してトラックで陸上配送できるパージ型の開発にも取り組んできた。今回の実証実験の成功により、空・海・陸上経由での輸送が可能になり、災害支援だけでなく、離島や山小屋など、これまで施工用トラックが到達できなかった場所へ、状況に合わせて最適な手段で輸送することができるようになると想定している。

(藤原秀行)※いずれもLIFULL ArchiTech提供

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