供用中道路を初活用、トンネル内でGPSに頼らず移動試す
千葉県と成田国際空港株式会社(NAA)は12月15日、同空港の構内や周辺道路で、政府が取り組んでいる「自動物流道路」の実現に向けた実証実験を開始した。
自動物流道路は国土交通省が主導し、民間企業などと連携して高速道路の地下や中央分離帯などに専用空間を設け、専用の機器に荷物を積み込んで自動的に輸送することを目指している。2030年代半ばまでに小規模な改良で実装可能な区間で運用を開始したい考え。
実証実験は国土交通省が事業に採択。千葉県とNAAが民間企業と組み、自動物流道路が想定しているのと類似した環境で自動搬送機器を走らせ、安定して輸送できるかどうかや、機器自身が自らの位置を正確に把握できるかどうかといった点を検証する。26年3月まで実験を続けて知見を蓄積し、自動物流道路の社会実装を後押しすることを狙っている。
千葉県とNAAは12月15日、実験の様子をメディアに公開した。この日は千葉県成田市の空港近隣の県道に自動物流道路をイメージして設置した約700mの走行レーンを2種類の自動搬送機器が走行した。
長瀬産業子会社で流通加工・物流代行や各種センサー開発などを手掛けるナガセテクノサービスは、空港で航空機や貨物コンテナなどをけん引するトーイングトラクターを投入。GPSが使いづらい閉鎖空間のトンネル内でも自律走行できるよう、地図データと高性能センサーのLiDARを組み合わせて現在地を把握、自動で移動した。同社は長距離を走行する際の精度をどのように確保するかをクリアしていく考え。


走行レーンを自動で動くトーイングトラクター。運転席は無人
大成建設は低速・小型の自動運転EV(電気自動車)を活用。トンネル内に一定間隔で特殊塗料を塗布したシール状の「反射体」を貼り、搭載したLiDARで反射体を自動検出して、GPSの代わりに車両位置を推定、安定的に走行できるようにした。実際に走行した際は、安全確保のためドライバーが同乗した。
同社は現状では路面の凹凸などによる車体の上下移動で少しずつ自己位置推定にずれが生じるため、より長距離で安定して自己位置を高精度で割り出せるようにするのが課題と説明、取り組みを続ける。

トンネル内を移動する自動運転EV
実証実験には他にも大林組と子会社のPLiBOT(プライボット)、スタートアップのCUEBUSなどが参加し、計5種類の専用機器を投入する予定。

PLiBOTの自動カート「タフ・ドンキー」
自動物流道路の技術に関する実証を実験用の施設ではなく供用している公道で行うのは国内で初めてという。県とNAAは貨物輸送現場の人手不足がより深刻になるのを前に、自動化につなげていくことを期待している。
実験開始に際して現地で開催した式典で、千葉県の熊谷俊人知事は「成田空港では第3滑走路の建設を含む『第2の開港プロジェクト』が進んでおり、千葉県では空港を核とした国際的な産業拠点の形成、暮らしの拠点となる地域づくりを進めている。物流の面では、成田空港はわが国最大の国際貿易港。第2の開港プロジェクトで貨物の取扱量は1.5倍の年間300万tになることが見込まれている。自動物流道路は物流の効率化・高度化の中核を担い、近年のドライバー不足にも対応するものとして、わが国の国際競争力を高める上でも必要不可欠」とあいさつ。県としても自動物流道路の実現に継続して協力していくことに強い意欲を見せた。
NAAの藤井直樹社長は「自動運転には企業側の努力だけでなくインフラ側の協力も必要不可欠で、中でも自動物流道路は道路そのものを物流インフラとする取り組みだ。成田空港は非常に大規模なその中には道路も含めてさまざまなインフラを整備しているので、それらを実証実験に活用し、自動物流の実装に1日でも早くつながるように支援していきたい」と述べた。

式典前に実証実験の説明を受ける熊谷知事(手前の右から2人目)と藤井社長(手前左端)
(石原達也、藤原秀行)










