スタートアップ企業の資金調達、「バリュエーション30億円以上」案件が2・6倍に

スタートアップ企業の資金調達、「バリュエーション30億円以上」案件が2・6倍に

Coral Capital実態調査で判明

日本の有望なスタートアップ企業に投資する独立系ベンチャーキャピタルのCoral Capital(コーラル・キャピタル)は8月14日、国内スタートアップ企業による資金調達の実態に関するリポートを公表した。

ITによる行政手続き効率化を手掛けるグラファー(東京)の協力を得て、2018年に資金調達を行った約600社の商業登記簿謄本を基に、調達の詳細条件を調査。その結果、18年の資金調達件数は累計で828件に上った。

18年の第4四半期(10~12月)は前年同期比8・0%増の206件。前期(7~9月)比では6・8%減っているものの、全体としては緩やかな増加基調が続いており、スタートアップ企業の資金需要が旺盛なことを示していると言えそうだ。

一方、各企業が資金調達した際のバリュエーション(時価総額)を見ると、18年第4四半期は30億円以上が計58件となり、前年同期の22件から約2・6倍に達した。


調達時のポスト時価総額別の資金調達件数(Coral Capitalリポートより引用)※クリックで拡大

リポートは「(新規事業が軌道に乗り始めた)ミドルや(事業が順調に伸びて株式上場が視野に入る)レイターのステージの(スタートアップ企業を対象とする)投資家が増え、スタートアップが未上場のまま数十億円を超えるバリュエーションで調達を続けることが可能になった影響が大きい」と推測。スタートアップ企業の資金調達の環境整備が進んでいることをうかがわせた。

Coral Capitalの澤山陽平創業パートナーは「過去の先達たちが行ってきたさまざまな交渉の結果である資金調達の条件を学ぶことには価値があるはず。真っ暗闇の中をやみくもに進むのではなく、かがり火に照らされた先人たちの足跡をしっかり見据えながら、自分が進むべき新たな道を切り開いていく、それこそが私たちCoral Capitalが考える、『戦略的に未来へ』進んでいく起業家像。この調査が起業家のため、そしてそうした起業家を支える投資家のために、少しでもお役に立てば幸い」とコメントしている。

条件が起業家有利の傾向

資金調達の手段を見ると、1億円以下の案件509件では普通株式が48・9%(249件)、配当や剰余金を優先的に受け取ることができる権利を持つ「優先株式」が40・9%(208件)、転換時の特殊な条項を付けている新株予約権を利用した「コンバーティブル」が10・2%(52件)となった。

半面、1億~30億円の案件では優先株式を使う割合が高くなり、30億円以上の大型案件3件は全て普通株式を活用していた。

四半期ごとの推移を見ると、1億円以下の案件はおおまかに見て5~6割が普通株式、3~4割が優先株式、残る1割がコンバーティブルとの比率になった。事業開始を準備している「シード期」のスタートアップ企業がより迅速に資金調達できる手法として新たに開発されたコンバーティブルが一定程度受け入れられているとみられる。

優先株式使用時に設定される、エグジット(投資回収)の段階で普通株主に先立って当初投資金額の倍数分だけ分配を受けられる「残余財産分配権」については、倍率を「1倍」とした案件が全体の89・8%、「1・2倍」と「1・5倍」がともに5・1%となり、圧倒的に1倍が多数を占めた。リポートは「条件が起業家有利になっている」との見方を示した。

(藤原秀行)

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