【独自】ホルムズ海峡封鎖で物流施設開発への逆風強まる

【独自】ホルムズ海峡封鎖で物流施設開発への逆風強まる

資材高騰に拍車、棟数絞り込みの公算大きく

イランがホルムズ海峡を事実上封鎖していることで原油やナフサ(粗製ガソリン)などの調達が厳しくなり、さまざまな原材料の高騰を招いている。建材の領域でもメーカーが相次ぎ値上げや受注制限を発表している。

もともと不動産業界では足元の建築コスト上昇を受け、賃貸物流施設開発のペースダウンを織り込んでいたが、さらに逆風が強まり、開発棟数がより絞り込まれる公算が大きくなってきた。賃貸物流施設を使う荷主企業や3PL事業者らも今後、対応を迫られそうだ。



「躯体、仕上げ、設備等幅広い分野で納期遅延が発生しています」「一部の建築設備工事については、工事の集中により職人さんの手配がタイトになっており、資材調達の問題と相俟って、工期への影響が出ています」。建設の業界団体、日本建設業連合会(日建連)が3月31日に更新した、工事を発注する民間の事業者らを対象に建設資材高騰・労務費上昇への理解を求めるパンフレットには、窮状を訴えるメッセージが並んでいる。

日建連の試算では、工事費の5~6割を材料費、3割を労務費と仮定した場合、この5年で平均の全建設コストは28~32%上昇した。ほとんどの工事で5年前の2021年1月当時の契約金額相当額を、労務費と原材料費だけで上回っているという。この労務費も現場で働いている技能労働者らの賃金の原資で現場監督らの分は含んでいないことなどから、実情はさらにコストが膨らんでいることも考えられる。

ただ、パンフレットが言及しているコスト上昇の現状には、まだ中東情勢緊迫化の影響は明確に反映されていないため、上昇傾向に拍車が掛かっている可能性がある。


(日建連パンフレットより引用)

米系不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)が4月1日に公表した日本の賃貸物流施設市場の動向調査によれば、首都圏で過去12カ月間の新規供給量は前年比31%減少した。今後12カ月についても、過去5年の平均に比べて6.6%減ると見積もっている。建築コストの高騰が如実に影響している。

シービーアールイー(CBRE)が昨年8月にまとめたリポートは、建設工事費の高騰が新規の物流施設開発の足かせになっていると指摘している。27年には首都圏で大規模なマルチテナント型案件の新規供給が26年までから急速にペースダウンして約15年ぶりの低水準にとどまり、6年ぶりに需要が供給を上回る「需要超過」に転じると予想している。



リポートの中では、27年は約15.2万坪で、過去最大の約90万坪の供給を記録した23年からは8割減になるとの見方を示している。EC市場の成長などを背景に拡大してきた賃貸物流施設市場は、需要自体は引き続き堅調だが、供給側の制約で局面が変わろうとしている。半年が経過し、中東情勢緊迫化の影響が上乗せされている現状では、27年の実績がどの程度で着地するかはなかなか見通しにくい。

そうした状況に、中東情勢の緊迫化による混乱がさらに影響している。田島ルーフィングは4月6日、ウレタン防水材とポリスチレンフォーム断熱材の受注を同日から一時停止すると発表。「受注数量が弊社の供給キャパシティを著しく超過していることに加え、一部関連材料の品薄も重なり、現在の受注体制では適正な納期での製品お届けが極めて困難な状況」と説明している。受注再開の時期は未定だ。

マグ・イゾベールは4月6日、取り扱っている断熱材のグラスウール全製品や部材などについて、7月1日出荷分より25%以上値上げすると公表。今後の国際情勢や中東地域の状況によっては、追加の価格改定の可能性もあると理解を求めている。

塗料の希釈などに使われるシンナー製品についても、大手の日本ペイントは7割超の値上げに踏み切り、関西ペイントも5割超の値上げを決めた。主原料のナフサの高騰が影響している。建築物に関連する広範な製品に値上げが浸透していくのは避けられそうにない。

半面、メーカーや小売業は製品や原材料が調達できなくなるリスクに備え、物流施設の確保を迫られる場面もありそうだ。C&Wもリポートで「手元に保有すべきバッファー在庫(安全在庫)の基準が引き上げられることで、追加の倉庫床面積(拡張需要)が必要となる可能性もある」との見方を示す。

物流施設デベロッパーの関係者からは中東情勢緊迫化の以前より「建設コストが大きく下がることは当面考えにくい。今後はかなりプロジェクトを絞り込む必要がある」との声が聞かれていた。需要が見込めるエリアでは積極的に事業化を模索する一方、そうではないエリアでは開発がペースダウンする二極化の動きが強まることも見込まれる。



人気のエリアは需給がタイトになり賃料が上昇することも想定されるだけに、荷主や3PL事業者らは新たな倉庫スペースを探すだけではなく、難しい局面を乗り切るために既に保有していたり賃借していたりする物件のスペースの有効活用をさらに検討することが求められそうだ。また、原油価格の上昇などで電気代が上がる可能性も大きいだけに、使用電力を自前で賄う太陽光発電設備の需要もさらに伸びることが想定される。

(藤原秀行)

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