東京五輪時、輸配送や保管への影響懸念根強く

東京五輪時、輸配送や保管への影響懸念根強く

JILSが荷主・物流企業向けアンケート調査

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)はこのほど、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた物流課題」をテーマとする企業向けのアンケート調査結果をまとめた。

選手や大会関係者らの輸送などで大会期間中は都心を中心に交通混雑が予想されていることに関連し、物流面の対策を社内で検討しているのは約4割、取引先と検討しているのは約3割に上った半面、検討していないとの回答も3割強に上った。他にも、具体的な行動計画(アクションプラン)の策定に着手したのは1割に満たないなど、対応が必ずしも進んでいないことをうかがわせた。

また、大会に関連し、トラックやドライバー、荷役作業員を確保できないと答えたのが2割前後に上り、倉庫スペースの不足を心配する声も4割近くに達したことが明らかになった。輸配送や保管が影響を受けることを懸念する向きが根強いことが浮き彫りとなった。

JILSは「今年のゴールデンウィークの状況では、在庫積み増しなどによる影響で商品・製品の在庫・保管スペースおよびパレットが不足するという事態が一部で起きており、早期に関係者の間で情報を共有した上で計画を立て、実証することが求められる」と指摘した。

必要とされる対策は「大会期間中避けた配送計画」が最多

調査は今年7月、インターネットを介して実施。JILS会員企業などから463件の有効回答を得た。内訳は荷主企業272、物流事業者144、その他47だった。設問は全て複数回答が可能。

大会期間中の物流対策について尋ねたところ、「社内で検討している」が42・1%、「取引先と検討している」が32・0%、「共同配送等に向けて同業他社と検討している」が4・8%だった。

一方、「検討していない」は36・3%となった。業種別に見ると、荷主は40・1%で、物流事業者の26・4%と差が開いた。

アクションプランの作成に関しては、「作成に取り掛かった」が5・0%、「トライアルを予定している」が2・8%、「トライアルを始めている」が0・9%で、合わせても1割に満たなかった。「検討中で、まだ着手していない」が最も多く54・6%だった。

必要とされる物流対策は「大会期間中を避けた配送の計画(事前・事後の配送)」が最多で42・5%。「混雑予想地域の配送の回避・迂回」(41・3%)、「納品時間の変更」(36・3%)、「出荷・配送時間の変更」(35・6%)、「納品頻度の変更」(29・4%)、「在庫の積み増し」(28・7%)などと続いた。


業種別の物流対策検討状況(JILS資料より引用)※クリックで拡大

「港湾エリアの渋滞」心配は過半数に

しかし、輸配送に関しては「トラックが確保できない可能性がある」が24・2%、「ドライバーが確保できない可能性がある」が19・2%、「荷役作業員が確保できない可能性がある」が17・3%になった。「現時点では分からない」は18・6%。

倉庫・保管スペースについても「提供できない(不足する)可能性がある」は38・5%となり、「余裕があるので不足しない」の15・6%を大きく上回った。「新設を進めている」は7・8%だった。

輸出入について懸念する事項を聞いた結果、「港湾エリアの渋滞」が最多で53・3%。「通関等の手続きに時間がかかる可能性がある」(35・4%)、「積み下ろしに時間がかかる可能性がある」(32・8%)、「港湾エリアの倉庫スペースが足りなくなる可能性がある」(23・3%)と続いた。「現時点では分からない」は23・3%、「影響はない」は8・2%だった。

(藤原秀行)

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