【独自取材】お好み焼きやソース「海外の現地食に根付かせたい」

【独自取材】お好み焼きやソース「海外の現地食に根付かせたい」

CREセミナーでオタフクソース国際事業本部長が文化の違いへの対応を説明

広島を地盤とするソース・調味料メーカー、オタフクソースの宮田裕也執行役員国際事業本部長は9月20日、シーアールイー(CRE)が東京都内で開いたフォーラムで海外進出をテーマに講演した。

宮田氏は同社の海外戦略として、創業100周年を迎える2022年度(22年10月~23年9月)に海外の売上高を40億円まで高めることを目指していると解説。お好み焼きやソースといった日本独自のものを文化や習慣が大きく異なる海外の現地社会に受け入れてもらうため、「現地食と日本食が混じった“フュージョン系”との位置付けで日本独自のテイストを現地食に根付かせたい」とのスタンスを取っていることを明らかにし、日本の製品を現地の嗜好に基づいて柔軟に変えていくことが肝要との認識をにじませた。


約70人が集まったフォーラム会場


講演する宮田氏

バランス取って進出先の嗜好に合わせる

宮田氏は、海外を意識している事例として、英字ロゴを導入していることに言及。「OTAFUKU」の文字の独特なデザインで商品の安定感や強さ、ふくよかさを体現しているなどと説明した。

同社は1997年に国際事業部を開設し、98年には米国のロサンゼルスに現地法人を立ち上げ、北米を中心に調味料の販売とお好み焼きの普及促進を担ってきた。12年には中国・青島に現地法人を創設し、13年に青島とロサンゼルスで現地工場を建設。それまでの輸出販売から現地生産へとかじを切った。

米中両国に続いて東南アジアに照準を合わせ、16年にマレーシアで現地法人を設置、同国で工場も完成した。18年には国際事業本部へと改組し、台湾に支店を展開。着々と事業拡大の布石を打っている。

製品カテゴリーの販売比率では、全社ベースでは家庭用と業務用が5対5なのに対し、海外は業務用が75%で、家庭用の25%を大きく上回っている。宮田氏はその背景として、アジアの一般家庭は外食する傾向が強く、家庭であまり調理していないことや、業務用調味料のオーダーメード対応の構成比が高いことなどを挙げた。

市場へのアプローチは、まず現地の日本人社会から、日本食市場へ移り、さらに現地食の中で日本のテイストとして親しまれるようになることを想定していると強調。「現地の人の嗜好に合わせる必要があるが、合わせ過ぎると、オタフクソースとしてのスタンダードな味が失われてしまう恐れがある」として、適度にバランスを保つことを重視している姿勢を示した。


オタフクソースの英字ロゴ導入※クリックで拡大

「どう伝えるか」から「伝わるようにするにはどうするか」に転換

現在の課題として、米国や中国は単体で黒字を出せるようになるなど一定の進捗はあるものの、事業展開にスピード感が足りないことや、競合より自社の製品を選んでもらうために不可欠な強みがまだ持てていないことなどを列挙。各国・地域の異文化への対応力を高めるため、海外部門でマーケティング機能を国内と分離・独立し、それぞれのエリアの事情に合ったマーケティングがより確実に行えるような体制としていることをアピールした。

今後の施策は、海外でお好み焼き屋を開く顧客に同社から食材販売などの面で積極的に関与していくことや、菜食主義の人など多様な嗜好に対応できる統一の家庭用ソースを開発することなどを計画。冷凍食品も手掛けるという。

海外事業拡大の目標達成には「当社の商品や理念を『どう伝えるか』から『伝わるようにするにはどうするか』への発想の転換が重要」と分析。多様化している価値に対応できる商品を迅速に提供していける環境整備と人財育成を図るとの決意を示した。

(藤原秀行)

経営/業界動向カテゴリの最新記事