楽天物流、早過ぎた見切り [2014年7月16日 執筆]

楽天物流、早過ぎた見切り [2014年7月16日 執筆]

※この記事は2014年7月16日に執筆されたコラムを再掲載したものとなります。

楽天は7月1日、100%出資の物流子会社、楽天物流を吸収合併し、同社を解散した。今年2月には、昨年10月に稼働したばかりの千葉県柏市の物流センターを急遽閉鎖。東京、中京、九州に予定していた新センターの建設計画も撤回している。

取引先に対して同社は「物流事業の縮小や撤退の計画は一切ない」と説明しているが、08年から進めてきた物流戦略を大きく転換したのは明らかだ。

楽天物流は2013年12月期決算で売上高64億1900万円に対し。38億6800万円の営業損失を計上。53億7500万円の債務超過に陥っていた。インフラやシステムへの先行投資が原因だという。

しかし、ライバルのアマゾンは創業以来、配当も出さずに利益のすべてをインフラ整備に注ぎ込んできた。それに対して楽天は10年3月に楽天物流を設立するまで、物流にはほとんど投資してこなかった。“打倒アマゾン”を旗印に反撃に出た以上、当初の赤字は折り込んでいたはずだ。

物流インフラの整備はIT投資とは勝手が違う。物流はアナログかつリアルな現場業務がベースになるため、仕組みを設計して組み立てることよりも、運用を安定させてパフォーマンスを向上していくことのほうがずっと大きな意味を持つ。

実際、同じ仕組みでも運用レベルによって生産性には3倍から6倍の違いが出てくる。投資の回収には手間と時間がかかるが、それだけ優位性は長く続く。

しかも、楽天が取り組んできたのは通常のネット通販のBtoBではなく、全国のテナント→楽天→消費者を結ぶBtoBtoCの物流プラットフォームだ。世界でも例のないチャレンジで成功すればネット通販の事業構造を塗り替える可能性がある。一方でそれを諦めれば、ネット通販の物流インフラを主催する“胴元”に市場の上がりを総取りされてしまう恐れがある。

物流の赤字に短期株主や財務部門は良い顔はしないだろう。しかし、見切りは早過ぎたのではないだろうか。

(大矢昌浩)

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