LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち⑥JFEグループ

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専任部署新設し1年で現場のミス半減、トラブルを力に“変換”

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2013年7月号「物流クレーム」特集で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名などの内容は掲載当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

JFEスチール子会社のJFE物流では、主力の鉄鋼製品で物流品質の改善活動が停滞していた。危機感を覚えた経営トップが自ら先頭に立ち、2011 年に専任部署を新設。3つのKPI を設定してミス撲滅を目指す「CS/QAトリプルゼロ」活動を進めている。物流現場のクレームやトラブルの情報を遅滞なく本社に上げる体制も確立した。 

誤納入、商品落下、傷付けを解消へ

JFE物流の小俣一夫社長(記事掲載当時)は、2011年4月に親会社のJFEスチールから物流子会社トップに赴任した。着任早々、看過できない問題を目の当たりにした。親会社が主力とする鉄鋼製品で、届け先を間違ったり、トラックの荷台から落としたり、クレーン作業の不手際で表面に傷を付けてしまったりといったミスが頻発していた。改善活動には取り組んでいるものの、ミスの発生件数が減っていなかった。

JFEスチール時代には東日本製鉄所長を務めるなど、製品やサービスの品質を高めることがいかに重要かを現場で肌身に染みて感じてきただけに、この事態に強い危機感を覚えた。

「これまで日本は高級鋼で勝負してきたが、海外メーカーも最新設備を稼働させて力を付けている。日本のメーカーが差別化できる商品は今やそう多くない。われわれ々が勝負できるのは品質、サービスだ。このような大競争時代に品質やデリバリーのトラブルを起こすことは自らの仕事をなくす行為だと認識してほしい」。

全国の各事業所を回り、従業員を前にCS(顧客満足)・QA(品質保証)の重要性について自ら講話した。会社のためという「内向き」ではなく顧客のためという「外向き」思考を徹底することなど、従業員に意識の刷新とトラブルゼロへの協力を求めた。

11年の10月には、本社に専任部署「CS/QA部」を新設。全国の事業所に置かれているCS/QAの担当者と連携し、施策を末端まで浸透させる司令塔の役割を担わせた。

CS/QA部の香月秀彦部長は「運んでいるのが重量物のため、多少の汚れや傷には不感症になっていた部分があったかもしれない。じゃんじゃんクレームが寄せられていたというわけではないが、お客さまにご迷惑をお掛けしていた」と振り返る。

同社では鉄鋼製品の物流の安全・品質に関するトラブルの中でも、配送先や配送すべき商品、個数を間違える「誤納入」、「商品落下」、取り扱いのミスで一度に多くの商品を傷付ける「大量不適合」の3つを最優先課題と位置付け、その全てを撲滅することを目標に掲げた「CS/QAトリプルゼロ」活動を開始した。

3つのトラブルの中でも特に防止へ力を注いでいるのが誤納入だ。CS/QA部が中心となって過去に起こった誤納入の要因を分析した結果、運転手の勘違い、配送先を指示する際の間違い、倉庫での商品引き当てミスの3つに分類することができた。

この結果を踏まえ、JFE物流グループ一体となって改善策を練り上げた。運転手の勘違いや配送先の指示ミスを繰り返さないために、営業所からトラックで出発する前に、ドライバーと営業所の担当者が納入先の会社名、住所を点呼し合ってうろ覚えを解消するなどのダブルチェックを強化している。

引き当てミス対策としては、JFE物流グループで商品出荷時のバーコードによる最終照合の拡大に取り組んでいる。既に物流現場で在庫管理のツールとして広く使われているバーコードだが、鉄鋼製品は形状や長さ、厚さがまちまちなことなどが原因で、バーコードを製品に貼り付けるのが難しいものが多い。そうした製品は担当者が2人掛かりで出荷先などを確認し合い、引き当てミスを防いでいるが、人手を要するのがネックだ。

香月部長は「まだバーコード活用が進んでいない商品の一部については13年度中に技術的な問題を解消し、バーコードによる最終照合を可能にしていきたい」と説明する。

併せて、JFEスチールが09年8月に稼働したウェブによる鉄鋼商品の納入指示受付システムの利用を、顧客に働き掛けている。電話やファクスによる受付では連絡を受けた担当者が内容を聞き間違えたり、JFE物流の仕様書に転記する際に書き誤ったりすることが起きていた。同システムを使うことでこうした初歩的なミスを一掃したいと考えている。


就任後に事業所で物流品質向上や安全確保について講話する小俣一夫社長(記事掲載当時、JFE物流提供)

全社的取り組みで誤納入3分の1

全社的に「CS/QA」への取り組みを強化する前は、取引先からのクレームが荷主のJFEスチールやJFE商事へ先に伝わり、肝心のJFE物流やグループ企業の担当者の把握が遅れるということが起こっていた。

CS/QA部発足後は、グループ企業を含め、物流現場でトラブルが起こればすみやかにJFE物流へ情報を上げるよう徹底。そうした事態は解消された。取引先の信頼を損ないかねない事態を早急に察知し、迅速に対応するよう努めている。

また、社長や担当役員、グループ企業の幹部らが集まって毎月1回開催している全社CSR会議に、11年度から「トリプルゼロ」にかかわるトラブルがあった場合、担当者から報告させるようにしている。幹部も交えて全社的に情報を共有することで、現場の緊張感を高め、各部署で対策を素早く講じられるようにするのが狙いだ。トラブルから6カ月後には再発防止がきちんと図られているかフォローもしている。

安全や物流品質向上へ従業員の意識を高める新たな試みにも着手している。その一環が11年10月に始まった「MVP-Q表彰制度」だ。個人やチームで地道に取り組んでいる業務改善活動のうち、全社的に模範となるものを毎月選んで表彰、社内に周知している。

一例を挙げると、東北事業所では、薄板コイルを出荷する際、梱包紙の破れや製品の折れ曲がりが頻繁に起き、さびの原因になっていることが判明した。このため、JFEスチールや顧客企業と協力して、薄板コイルの仕様を折れ曲がりにくいものに変えたり、梱包紙を見直したりした結果、折れ曲がりはほぼ解消、梱包紙の破れも発生率が半減したという。東北事業所が主体的に改善への取り組みを進めた点などを評価した。

さらに、13年1月には「CS/QAポイント制度」を開始した。全国の各事業所やグループ会社などを対象とし、配送先間違いといった事故が1カ月間ゼロであったり、「MVP-Q」で役員や社長から表彰されたりするごとに一定のポイントを付与。ポイントがある程度貯まれば、対象区分の従業員が表彰金などのメリットを享受できる仕組みだ。

逆に事故を起こしてしまった場合はポイントが減らされるほか、過去に各事業所間で情報を共有して再発防止を誓ったはずの事故を再び起こしてしまった場合は減点幅が拡大。さらに、誤納入、商品落下、大量不適合のいずれかを犯した時は貯めていたポイントが一気にゼロとなる。「トリプルゼロ」実現のためのインセンティブを設定し、従業員の意欲を高める狙いだ。

こうした改善努力を地道に積み上げてきた結果、12年度のトラブルは前年度の半分程度の水準に減少。特に誤納入は3分の1程度まで大きく減らすことができた。香月部長は「クレームがあったから直すというのではなく、お客さまからクレームが寄せられる前に、責任を持って自発的に改善に取り組んでいる」と強調する。

同社は13年度の課題として、バーコード適用拡大による手作業縮小、CS/QAポイント導入に伴うトラブル情報や優れた対策の水平展開などを挙げる。そうした情報をデータベース化して従業員が自由に業務改善へ活かせるようにし、今後ともあくまで「トリプルゼロ」を目指す構えだ。


薄板コイルに貼られているバーコードで出荷の最終照合を行う

顧客に利用を働き掛けているウェブ納入指示受付システム(いずれもJFE物流提供)

(藤原秀行)

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