【独自取材】「物流を考慮した建築物の設計・運用」、広がり見られず

【独自取材】「物流を考慮した建築物の設計・運用」、広がり見られず

「ホワイト物流」運動賛同企業、選択したのはわずか2社

政府は物流の生産性向上の一環として、商業施設など大規模な建築物を建てる際は円滑な物流を確保する観点から設計・運用することを推奨している。2017年3月には国土交通省が手引きを作成、物流事業者らに「デザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)」の対応を呼び掛けている。

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しかし、政府が物流事業者や荷主企業と連携してトラックドライバーの就労環境改善などを目指す「ホワイト物流」推進運動に賛同した企業・組合・団体が提出した自主行動宣言をロジビズ・オンラインが確認したところ、取り組む項目として「物流を考慮した建築物の設計・運用」を選んだのは現時点でわずか2社にとどまっている。

現在は同運動に関する専用ウェブサイトで、宣言を作成する際の選択肢から「物流を考慮した建築物の設計・運用」自体が消えてしまっている。広がりが見られない状況だけに、国交省などは今後一層の対応を迫られそうだ。

手引きは荷さばき用駐車場考慮や館内配送共同化の検討を訴え

国交省や経済産業省と警察庁、不動産や物流の業界団体、学識経験者らで構成する「物流を考慮した建築物の設計・運用検討会」(座長・苦瀬博仁流通経済大教授)が16~17年に計6回会議を開き、議論の集大成として「大規模建築物に係る物流の円滑化の手引き」を作成した。

この中で、商業施設などを開発する際は人が円滑に移動できるかどうかの観点を中心に設計が検討されてきたため、屋内駐車場にトラックが入れなかったり、荷役用のエレベーターが足りなかったりするなどの課題があったと指摘。建築物内への荷物の搬入や屋内の移動を円滑に行えるようにするとともに、周辺で交通渋滞を引き起こしたりしないよう配慮することを提唱している。

その上で、具体策として、基本設計段階で荷さばき用駐車場の位置を考慮したり、館内配送の共同化を検討したりするよう訴えている。

だが、ホワイト物流運動の自主行動計画を提出した659の企業・組合・団体(19年11月末時点)のうち、昨年10月に宣言を出した京都の機械器具卸の光伝導機が、自社が新規に建築する本社ビルについては手引きを参考にして設計・運用する方針を示したことが確認できるのみとなっている。

現状では同運動の専用ウェブサイトでまだ公開されていないが、名港海運も昨年12月、宣言の中で新規に建築する倉庫施設は総合物流効率化法への対応など作業効率向上を考慮して設計・運用することを盛り込んだと発表している。

関係者からは、手引きの存在自体がまだまだ知られていないとの見方も出ている。まずはホワイト物流の推進運動の中で重視すべき項目として再評価した上で、荷主企業と運送事業者の双方に成功事例とメリットを明確に周知していくことが不可欠のようだ。

(藤原秀行)

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