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LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち⑮TOTO&クリナップ

LOGI-BIZ記事レビュー・物流を変えた匠たち⑮TOTO&クリナップ

慣習の差を乗り越え「協同配送」に成功

※この記事は月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)2016年11月号「荷主主導の共同物流」特集で紹介したものを一部修正の上、再掲載しています。役職名や組織名、数値などの内容は掲載当時から変わっている場合があります。あらかじめご了承ください。

住宅設備機器業界の競合が2013年、システムキッチン製品の物流で手を組む「協同配送」を本格的に開始。双方で大きく異なっていた慣習を変革、クリナップグループの配送網にTOTO の製品を取り入れ、高積載を維持しつつ配送先の時間要望にも応じられる体制を築くことに成功した。

納品条件に大きな違い

トイレや洗面器などの衛生陶器で国内シェアトップを誇るTOTOと、システムキッチンやバスルームを得意とするクリナップ。両社は住宅設備機器の大手メーカーとして日々しのぎを削るライバルであると同時に、物流面で手を組むパートナーとして活動している。

両社は2013年、システムキッチン製品で共同配送を本格的にスタートした。クリナップグループの配送網にTOTOの商品を取り込み、「協同配送」と呼ぶ混載を実現。現在は北海道と沖縄を除く全国で展開し、双方が配送業務の効率化や物流コスト削減で着々と成果を挙げている。

15年には物流分野の環境負荷低減に貢献した企業などを対象とする「グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰」で、両社グループがそろって「経済産業省商務流通保安審議官表彰」を獲得。共同配送は社会的にも評価されている。


各社の役割(TOTO、クリナップ資料を基に当社作成)※クリックで拡大

クリナップグループはプラットフォーム(PF)と称する通過型の積み替え基地を全国に70カ所配置。物流業務を担うクリナップロジスティクス(東京)が協力物流会社とともに運営を手掛け、工場から各地のPFへ大型車で幹線輸送した後、PFから戸建て住宅の施工現場などに製品や各種部材を運んでいる。

納品の遅れで住宅の建設が滞らないよう、クリナップロジの情報システム「SLIM」がきめ細かく配車計画を管理。さらに、形状や荷姿が異なる多種類の住宅設備機器や部品をうまく組み合わせて、荷台にすき間なく積み込んでいく独自のノウハウを駆使し、高い積載率を達成してきた。

クリナップはグループで磨き上げてきた物流ネットワークを自らの事業に活用するだけでなく、異業種向けに共同配送を提案している。そうした経験を積み重ねてきた中で、同業のTOTOから荷物を獲得するに至った。もともと、TOTOとクリナップは競合同士ながら販売面などで協力関係にあり、物流分野でも連携し合える土壌が存在していた。

クリナップで共同配送を担当する芳賀信平CS推進部長は「物流業界は若い人がなかなか新しく入ってこなくて、大変厳しい時代を迎えている。当社が日々走らせている物流網をどのように使っていただけるかを考えていった中で、TOTOさんとお互いに助け合えることがあれば協力しようと一致し、現在の活動に広がっていった」と力説する。

ただ、TOTOとクリナップでは、配送の組み立てが大きく異なっていた。TOTOはグループ会社でシステムキッチンや洗面化粧台を製造しているTOTOハイリビング(千葉県茂原市)の工場から出荷する際、1台のトラックに1カ所の配送先の荷物だけを積み込む「1車1現場」を原則とし、ワンマン配送を実施。時間指定はピンポイントの時刻で受け付けていた。

一方、クリナップは配送時間に一定の幅を持たせていたほか、1台のトラックが複数の現場を回って荷物を届け、ツーマンでの配送が主流だった。他にも、TOTOは現場の状況によって納品時に2トンショートのトラックを使うことがあったが、クリナップは2トンロングの利用が基本。物流の共同化実現にはお互いの慣習を抜本的に見直す必要があり、TOTOとクリナップの双方にとって、社内外の調整に困難が伴うことが予想された。しかし、そんな難題を前にしても両社は歩み寄る努力をやめようとしなかった。

TOTO物流本部の安武正文グローバル物流推進部長は「当社は荷量がそれほどなくても『1車1現場』で届けていただけに、トラックは積載率が40%という低水準で走らざるを得なかった。トラックドライバー不足など輸送環境が厳しい中、当社の配送形態が今後もずっと成り立っていくとは思えず、やり方を変えなければならないと感じていた」といきさつを説明する。


PFの概要※クリックで拡大

荷受人にSMSで到着時間連絡

物流で協力するに当たり、TOTOとクリナップの現場担当者による調整だけでなく、双方の物流部門幹部とクリナップロジの社長が定期的に顔を合わせ、意見のすり合わせを進めた。現場で決着が付かない事柄は3者が理解し合い調整、前進させていった。

TOTOは配送時間指定の見直しを決断した。製品をクリナップグループの配送ネットワークに載せるのに伴い、従来のピンポイントで時刻を指定するやり方から、1時間の幅を持たせた時間帯で注文を受け付けるようルールを変更。社内の受発注システムも新ルールに対応するよう改修した。

また、施工現場サイドからはどうしても早朝に製品の納入希望が集中しがちだったため、TOTOの製品を扱う工務店などを対象に「配送の手引き」を作成した。ルール変更の内容説明だけでなく、例えば新築の工事現場であれば朝早い時間帯に届ける、リフォームの場合は施主の都合に合わせてもう少し遅らせてもらう、といった具合に相手方へ届ける時間帯の目安を提示。施工現場での運用に反映するよう地道に理解を求めていった。

配達時間に幅を持たせることと併せて、施工現場などへ製品が到着する時間を荷受人の携帯電話へSMS(ショートメッセージ)で連絡することにも取り組んだ。荷受人に直接正確な情報を伝え、ルール変更で生じる顧客の不安を解消することに努めた。さらにTOTOは自らの配送現場を実際にチェックし、2トンロングでも進入可能で配送に支障がないことを確認、2トンショートの車種指定を廃止した。

クリナップ側も配送の手法を再検討した。物流共同化を契機に、それまでのツーマン配送のうち、ワンマンでも対応可能なところがないかをチェック。その情報を基に、荷物の重量などによってワンマン配送とする条件を明確にした結果、ワンマン配送の比率を高められた。ケースによっては、ワンマン車両同士が同じ現場で作業することで、実質的にツーマン配送とする運用も行っている。

芳賀部長は「われわれも全てのトラックで積載率を80~90%台にできているわけではなかった。TOTOさんの荷物を扱うことで積載効率をさらに上げることができた」と共同配送のメリットを指摘する。

さまざまな試行錯誤を経て、11年末に群馬県でトライアルの開始にこぎ着けた。その後は北関東などに順次エリアを広げ、ほぼ全国を網羅した。これまでに高積載を維持しつつ、車両台数の約2割削減、CO2排出量を年間約340トン抑制などの効果を挙げている。


「協同配送」の流れ(TOTO、クリナップ資料を基に当社作成)※クリックで拡大

担当者が協議し改善ヒントくみ上げ

クリナップは年に2回、全国のブロックごとに「支線会議」を開き、作業効率向上や安全確保で現場担当者らが意見交換しているほか、各PFでも問題点や解決方法などを随時話し合っている。そうした場にTOTOも担当者を派遣、クリナップ側から協同物流に際して現場改善のヒントをくみ上げている。TOTOからはシステムキッチン以外にも、温水便座などの物流担当が協議の場に加わっているという。

TOTOハイリビング生産管理部茂原物流課の計野洋志業務係長は、双方の協議の場からつかんだ改善のヒントの一例として「クリナップさんの製品は物流用のラベルが1つだけだが、当社の製品は外部からの調達の関係でラベルが複数貼られていて、PFで一見すると分かりづらいとの声が出ていた。そのため、現場でどのラベルを確認すればいいかをすぐに見分けられるよう色を変える工夫を施し、チェックしやすくなったとの評価をいただいた」と説明する。

クリナップロジの富田龍二代表取締役は「当社にとって荷主であるTOTOさんにも忌憚なく率直に意見を伝えていることが、“協同配送”における双方の一体感と円滑な業務を生み出しているようだ」とパートナーシップの強化に手応えを感じている。

現在は共同配送の安定運用の完成度を高めることが最優先のため、他製品への拡大や他社への参加呼び掛けは今のところ白紙という。配送時にトラブルが発生した場合、より迅速に関係者が情報共有し対応できる仕組みの構築などに取り組んでいる。クリナップロジCS情報部の富樫巧副部長は「ドライバーの方々に到着する時間などの正確な情報を伝えることが負荷軽減になる。荷受人が不在だった場合の対応なども考えていかないといけない」と意欲を示す。

芳賀部長は「今後は施工現場の作業効率を高められるタイミングで製品をお届けし、物流側から業務の全体最適に貢献できるよう進化していきたい」と語る。TOTOとクリナップの物流における協力関係の深化は住宅施工のプロセス全体を改善していく原動力となる可能性を秘めている。

(藤原秀行)

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