東南アジアも着実に布石、コールドチェーンなどの需要開拓
大和ハウス工業は中核事業の一角を占める物流施設開発に関し、日本国内での規模拡大と併せて、海外でも成長の基盤整備に取り組んでいる。既にプロジェクトを複数展開している東南アジアに加え、米国やオーストラリアでも第1号案件の事業化に向けた準備を進めている。
米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で世界経済の先行きに不透明感が広がっているが、基本的には米国や東南アジア、オーストラリアといった国々ではeコマースの成長などで、引き続き清潔で使い勝手に優れた物流施設のニーズが見込めると判断。現地の不動産デベロッパーとも必要に応じて連携しながら、国際展開している日系企業だけにとどまらず、将来は現地企業の需要も獲得したい考えだ。
ベトナムやインドネシア、マレーシアで新たな開発用地確保
大和ハウスは2023年春までに先進的な物流施設の開発へ総額約5000億円を投じることを計画。現状では20~22年に首都圏を中心として「DPL」ブランドを冠したマルチテナント型物流施設44棟の工事を開始する計画を公表している。
製造業のグローバル展開が進み、サプライチェーンが国内外に広がる中、日本流の高品質な物流施設を海外にも展開、荷主企業や物流事業者の要請に応えていく必要があると判断。現在はベトナム、インドネシア、タイ、マレーシアで物流施設開発を手掛けている。
ベトナムやインドネシアは大規模な工業団地に関連してレンタル倉庫を提供、両国で既に新たな開発プロジェクトに着手している。タイも現地で物流施設や工場など産業用施設の開発を担うWHAと合弁を組み、同国最大の貿易港・レムチャバン港周辺などで物流施設の建設に携わってきている。
18年に進出し、マルチテナント型物流施設の開発をスタートしたマレーシアでも、クアラルンプール郊外の第1号案件に続く第2、第3の開発用地を押さえているという。4カ国で手掛ける物流施設の中には日系の食品卸など向けに低温設備を備えているものも含まれる。
大和ハウスは同時に、米国やオーストラリアでも事業機会を探しており、米国はeコマースなど向けの物流施設需要が見込める東部と西部の両エリアで物流施設建設を行いたい考えだ。以前にも用地を押さえることに成功したが、現状はあらためて仕切り直しとなっており、早ければ20年中の事業化にこぎ着けようと取り組んでいる。オーストラリアも大規模森林火災や中国経済減速による観光客減といったリスクが存在するものの、物流施設の需要は期待できると予想している。
同社で物流施設開発の陣頭指揮を執る浦川竜哉取締役常務執行役員は、東南アジアの市場動向に関し「人件費がまだ非常に安いので、そんなには自動化、AI(人工知能)活用といった動きが盛んにはなっていないが、食品などを海外で加工、調達する日系企業のコールドチェーンのニーズは非常に強い。デベロッパーとしてサプライチェーンの広がりに対応していかなければならない」と着実な成果を挙げることに強い意欲を示す。
米国に関しても「経済と人口が伸びている上に通貨も強い。3拍子そろっている。海外展開する上で米国を抜きにしては語れない」と早期の事業化を目指している。オーストラリアは米国の事業化に道筋を付けた上で第1号の開発にこぎ着けられるよう取り組む方針とみられる。
大和ハウスとEC向けフルフィルメントサービスを担うアッカ・インターナショナルは、千葉県市川市でESRが開発した物流施設「ESR市川ディストリビューションセンター」内で米ナイキ日本法人が構えている物流センターの運営に協力。新興ロボットメーカーGEEK+(ギークプラス)の物流ロボット「EVE」を200台以上導入し、入出荷業務のスピードアップと効率化で成果を挙げている。
大和ハウスとアッカはナイキの海外拠点でも同様に物流ロボット運営をサポートすることを目指しているほか、他の企業が海外に置く物流拠点でも同様に物流ロボットの運営を担うことを視野に入れている。日々のオペレーションでノウハウを蓄積、物流施設開発のグローバル展開を確実なものにしていきたい考えだ。
(藤原秀行)