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【独自取材】「物流施設も南海トラフ地震対策でリスク分散を急ぐべき」

【独自取材】「物流施設も南海トラフ地震対策でリスク分散を急ぐべき」

大和ハウス工業・浦川取締役常務執行役員 独占インタビュー(後編)

大和ハウス工業で物流施設開発の陣頭指揮を執る浦川竜哉取締役常務執行役員はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

浦川氏は同社が現行の第6次中期経営計画(2019~21年度)の期間中に物流施設を中心とした事業施設の不動産開発に3500億円を投じる方針を示していることなどに言及し、物流施設の建設を都市部と地方の双方で積極的に手掛けていく意向を強調。同時に、需要が見込めるエリアを絞り込んで適地を探すなどの工夫も必要と指摘、物流施設の大量供給が続く現状を慎重に見極めていく姿勢ものぞかせた。

また、直近で留意すべきポイントとして、発生が危惧されている南海トラフ大地震への対応を挙げ、製造や物流の拠点分散などサプライチェーンを守るための対策を早急に講じる必要性を訴えた。前編に続き、浦川氏の発言内容を詳報する。

前編:【独自取材】「先行き予想しづらい今は柔軟性や可変性そなえた物流施設が理にかなう」


浦川氏(2019年4月・中島祐撮影)

混雑続く東京港回避の需要を開拓

――物流施設開発に関しては、2023年春までに総額5000億円超を投資する方針を打ち出しています。用地の取得競争が激しい中、積極的な開発を続けていけるのでしょうか。
「現行の第6次中期経営計画(19~21年度)でも物流施設を中心とした事業施設の不動産開発に3500億円を投じる方針を示していますし、かなりの数を手掛けていくことになるでしょう。ただ、これだけの規模になるとやり方を工夫しないと、なかなか次から次へというわけにはいきません。エリアをきっちりと絞り込むことなどを進めないといけないでしょう」

――工夫の具体策は?
「例えば、当社は今、茨城県の阿見町で2棟目の物流施設開発に着手しています。都心部から離れた内陸方面ということもあり、一見すると需要が本当に見込めるのかと思われるかもしれません。しかし、延べ床面積が4万坪の1棟目はおかげさまで既に満床です。圏央道沿いですが各社が積極的に手掛けられている埼玉の内陸などからは離れており、このエリアで物流施設を開発しているのは当社くらいでしょう」
「今、東京港の荷物受け入れ能力が限界に近付いており、港湾周辺はトラックで非常に混雑するなどパンク状態になっているため、茨城県の常陸那珂港を利用する荷主企業が増えています。当社の阿見の物流施設を使われているお客さまなども同港を利用されている。そうしたニーズもあります。自分たちでさまざまな状況を見ながら率先して需要を開拓し、新たなマーケットをつくり上げていくことが重要でしょう」

――御社は都市部に加えて、地方エリアでも物流施設の開発を盛んに手掛けています。ニーズはこれからも見込めるのでしょうか。
「以前より工業団地を開発して製造業を誘致するとともに、必要となる物流施設を敷地内に組み合わせて建てるという手法を数多く進めてきました。物流施設単独では開発の収益が見込みづらい場所でも、そうして産業を集積できるようにすることで企業の進出機会をつくり上げていく。工業団地の敷地の3分の2程度はさまざまな企業の生産拠点などが占め、物流施設は残る3分の1程度です。地方自治体の方々のご協力も得て開発を進め、地元に雇用と税収を生み出していくことで地方創生にも貢献が可能です」
「当社はデベロッパーであると同時にゼネコンでもあることから、そうした工業団地と物流施設を組み合わせた大規模な開発が可能です。他のデベロッパーではそうした手法はなかなか難しいでしょう。ここは地方創生にも貢献できる。地域をじっくりと見ていけば、例えば物流施設が20年以上新築されていないようなエリアも存在しています。需要がないと思われているような場所に物流の適正な需要を生み出し、物流施設を開発していくやり方はこれからも続けていきたい」

――ただ、日本は既に労働力が減少に転じていることなどを踏まえれば、生産拠点を海外に構える動きは今後も続くと思われます。そうした潮流にはどのように対応していきますか。
「確かに日本の人口減少、労働力減少の傾向を考えていけば、生産拠点を海外に構える傾向は今後も続いていくでしょう。既にアパレル製品や家具の多くが海外で生産されるようになっていることからも分かる通り、日本と世界のサプライチェーンの結び付きは非常に強くなっていますし、海外で生産して日本へ輸出するような動きはさらに活発化すると思います。そういう意味からも、グローバル展開している日系企業向けに海外で物流施設を開発していくことの重要性がいっそう大きくなってくる。国内の産業団地とセットで海外の物流施設を提供していくことも重要でしょう」


「DPLつくば阿見」の外観。地上5階建て、賃貸面積は約12万平方メートル(大和ハウス工業ウェブサイトより引用)

360度全方位で適地を探していきたい

――新型コロナウイルスの感染拡大に伴って中国は生産や物流が大混乱し、さまざまな商品の製造にも影響が出ています。産業界では中国依存を見直すべきとの声も聞かれます。製造工場として中国に大きく頼っている日本企業のサプライチェーンは今後在り方が変わっていくでしょうか。
「将来の姿を予測して申し上げるのは非常に難しいのですが、過去を振り返ると2011年に起きた東日本大震災の時もそうしたことが盛んに言われていました。最近の米中貿易摩擦の時も同様です。ただ、結構皆さん見直しの必要性を理解されていても、なかなか対応は進んでいないのが実情です」
「サプライチェーンの見直しという観点から言っても、今一番準備しなければいけないのは南海トラフ地震への対策だと思います。今後30年間の発生確率が70~80%といわれており、直撃されれば被害額がGDP5年分くらいの壊滅的な大打撃を受ける可能性がある。サプライチェーンがズタズタに分断される恐れもあります。今からサプライチェーンの分散をそれぞれの企業や自治体が真剣に考え、対応を急いで進めるべきだと思います」
「物流を見ても、東日本大震災の後、医薬品などメディカル分野の倉庫は全て免震になりました。震災前は免震倉庫自体が非常に珍しい存在でしたが、今は当たり前になった。やはり、免震装置の導入や沿岸部から高台への移転など、各企業が国内外にリスク分散していくべきでしょう。自動車などの分野は生産量が国内と海外で比率が逆転しています。今は食料自給率も4割を切り、6割を輸入に頼る計算となっている。そうすると、海外とのサプライチェーンが途絶えないようにしないといけない。当社も物流施設など事業施設のデベロッパーとして、物流が社会でどのような役割を果たしているかを十分考えて開発を進めていかなければならないとあらためて肝に銘じています」

――千葉県流山市で大型物流施設4棟を集中して開発するプロジェクトが注目されていますが、こうした大規模開発にこれからもチャレンジしますか。
「流山の周辺の千葉・松戸で複数の物流施設を開発したり、既に実績のある埼玉・三郷で追加して開発したりと、物流施設が流山に集中し過ぎないよう適度に周辺エリアとバランスを取り、分散しています。圏央道や常磐道といった基幹の高速道路沿いなどのエリアで物流適地を散らばせて開発していく方がリスク分散にもなります。今は労働力確保も難しくなっていますし、さすがに流山のようなプロジェクトをあちこちでやろうと思っても厳しい。360度全方位で適地を探していきたいと考えています」

――先ほどの食料自給率などの話にも関連しますが、コールドチェーンへの対応はどのように進めていきますか。
「ドライと組み合わせた4温度帯倉庫のように先進的な機能を持つ設備はまだまだ国内では全然足りていません。東南アジアで加工した食品を日本に輸出するなど、特に国内と海外を結ぶコールドチェーンの整備はこれからどんどんやっていかないといけない。手間は掛かりますし、技術的にも難しいことが多いですが、デベロッパーとしてだけではなく、ゼネコンとして複数の温度帯に対応できる倉庫の建設を請け負うことでも、コールドチェーンのニーズに対応していきたい」

(藤原秀行)

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