全体と同傾向、「中国向け輸出激減」などコロナの影響言及増える
内閣府が3月9日発表した2月の景気ウオッチャー調査結果は、景気の現状、先行きの判断指数(DI)がともに1月から急激に悪化しており、東日本大震災直後以来の低い水準まで落ち込んだ。内閣府は同調査を基にした景況判断を「このところ回復に弱い動きがみられる。先行きについては、新型コロナウイルス感染症の拡大等に対する懸念がみられる」と説明。1月時点の「新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に厳しい状況となっている。先行きについては、一段と厳しい状況になるとみている」から引き下げた。
同調査に関しては、輸送業の間でも景気の現状、先行きに対する見方が1月から急速に悪化していることが浮き彫りとなった。回答者からは「中国向け輸出が激減している」などの厳しい声が聞かれた。
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先行きは悪化予想の割合が拡大
同調査は全国を12ブロックに分け、飲食店や小売店の経営者、タクシー運転手など景気の動向に敏感な業種・職種の計2050人を対象に、毎月景況感をヒアリングし、指数を算出するとともに景況感に関するコメントを抜粋して紹介している。エコノミストなどの間ではより景気の実感に近い「街角景気」を把握できるとして注目度が高い経済統計だ。
輸送業は12ブロックで計40人が協力。人数は小規模だが各ブロックで景況感を定点観測できるのが利点だ。2月分の全体調査は同月25日から月末にかけて実施、約89%の1827人が有効回答を寄せた。
輸送業は前月と比較した現状の景気判断について、具体的なコメントが紹介されている23人のうち7割強の18人が「やや悪い」か「悪い」を選択。1月時点は21人中、4割強の11人だった。半面、1月には2人いた「やや良い」が2月はゼロとなった。
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コメントに関しては「国内物量は前年並みだが、日中間の輸出入は激減している」(東海、経営者)、「中国向けの輸出が激減している」(中国、総務・人事担当)、「中国製品や原料が入荷せず、販売延期が続出している。化粧品容器類の入荷遅れによる製造遅延が顕著であり、景気低迷している」(九州、従業員)といった新型コロナウイルス感染拡大で中国関連の物流が打撃を受けていると指摘する声が複数挙がった。
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2~3カ月先の景気判断に関しても、具体的なコメントが取り上げられている25人のうち、「やや悪くなる」「悪くなる」が7割超の18人。1月時点の20人中7人(3割強)から増加した。1月は3人いた「やや良くなる」がやはり2月はゼロとなった。
コメントは「新型コロナウイルス感染拡大の影響が輸出入貨物の動きにも出てくることが懸念される」(北海道、支店長)、「新型コロナウイルスの影響がどこまで広がるか分からないことが不安」(南関東、経理担当)、「中国などで製造される製品は減産気味となり、輸入量は確実に減ってくる。また、各地へのまん延や、国内のさまざまな場所での自粛ムードが高まることで景気に影響が出て、物量の低下が懸念される」(四国、経理担当)といった不安を訴える向きが目立った。
(藤原秀行)