【新型ウイルス】「緊急事態宣言」発令後も医薬品や食料の確実な物流確保

【新型ウイルス】「緊急事態宣言」発令後も医薬品や食料の確実な物流確保

大手運送会社など「指定公共機関」に要請可能、担当者の安全・健康確保が課題

※これまでの政府などの動きを踏まえ、「宣言発令までの大まかな流れ」の内容を一部差し換えました

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府による「緊急事態宣言」発令の機運が高まっている。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて初めて宣言が出された場合、対象地域の都道府県知事が感染拡大防止のため住民に不要不急の外出自粛を要請したり、学校や映画館といった人が集まる施設の使用を制限したりするなどの対応が可能になる。現状では感染事例が多い東京都を含む首都圏や大阪府などが対象地域の有力候補とみられる。

同法は感染拡大防止の対策を的確に行うには行政機関だけでは困難との立場から、医薬品や医療機器の製造、電気・ガス・水道の供給といった公益的な事業を営む法人をあらかじめ「指定公共機関」と定め、緊急時の対応協力を義務付けている。この中には大手運送会社など主要な物流関連企業26社が名を連ねており、国や対象地域の都道府県知事は緊急物資の運送を要請できると規定。医薬品や食料など物資の確実な輸送を担保するのが狙いだ。

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指定公共機関に含まれる物流関連企業は既に対応の方針を策定、緊急事態宣言が出されれば社内に統括本部を立ち上げ、貨物運送を適切に進めることなどを決めている。このため、緊急事態宣言が出ても物流が急にストップするような異常事態が起こることはないと見込まれる。

指定公共機関と併せて、都道府県は各地のトラック協会などを「指定地方公共機関」に指定していれば、やはり知事から緊急物資輸送の要請が可能。緊急事態宣言が発令された場合、最も機会が多いとみられる陸上物資輸送を行う際は指定公共機関の大手運送会社に要請するパターンと、各地のトラック協会を通じて対応可能な輸送能力を持つ会員の運送事業者に要請するパターンの2通りが想定される。状況に応じてそれぞれのパターンが使い分けられたり、併用されたりすることになりそうだ。

輸送を進める上で最も重要な課題となるのが、緊急物資輸送に携わる担当者の健康・安全確保だ。仮に担当者が新型コロナウイルスに感染した場合、輸送に混乱が出る恐れが大きいだけに、マスク着用やこまめな消毒などの対策を積極的に講じることが不可欠。政府や都道府県にも緊急輸送を担う物流業界への手厚いバックアップが求められる。

★「緊急事態宣言」発令までの想定される大まかな流れ※政府などの動きを踏まえ、4月6日朝の時点から一部変更しました。今後も適宜修正する可能性があります

①(4月7日?)
政府が専門家らの諮問委員会を招集、改正特措法で宣言発令の条件として規定している「国民の生命、健康に著しく重大な被害を与える恐れがある」「全国的で急速な蔓延により国民の生活・経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」の要件を満たしているかどうかを正式に諮問
②(4月7~8日?)
委員会が適当と判断すれば、政府が安倍晋三首相をトップとする対策本部で準備を加速。併せて、宣言前に衆参両院の議員運営委員会で報告
③(4月7~8日?)
対象となるエリア(都道府県単位)や期間を決めた上で安倍首相が宣言の発令を発表
④(4月8日~?)
対象となった都道府県が対策本部を開き、知事が具体的な対策を発表

★緊急事態宣言で可能になる主な対策

・住民への不要不急の外出自粛要請
・予防接種の実施
・人が集まる学校や保育所、福祉施設、映画館、百貨店などの使用制限・停止の要請、指示
・医薬品や食品などの売り渡しを業者に要請(同意が得られない場合は収用が可能)
・スポーツや音楽のイベントなどの開催制限の要請、指示
・物流関連企業への医薬品などの緊急輸送要請、指示
・臨時の医療施設開設のための土地、建物の提供要請(所有者の同意が得られない場合でも利用可能)
・政府系金融機関による融資
・行政手続きの申請期限延長

★緊急事態宣言の対象外の主な対策

・住民への強制的な外出禁止指示
・鉄道など公共交通機関の停止指示
・一般企業への強制的な営業禁止指示

(藤原秀行)

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