【新型ウイルス】経産省、生産の国内回帰などグローバルサプライチェーンの見直しを審議会で提言

【新型ウイルス】経産省、生産の国内回帰などグローバルサプライチェーンの見直しを審議会で提言

医療関係の「緊急物資」は立地補助など支援を課題に列挙

経済産業省は5月26日、産業構造審議会(経産相の諮問機関)の通商・貿易分科会を開催した。

席上、同省は新型コロナウイルスの感染拡大で海外の製造拠点が一時稼働をストップし、製品や部品の調達が混乱したことなどを問題視。物資の用途や性質ごとに分類し、それぞれ生産拠点の日本国内回帰を検討するなどグローバルサプライチェーンを見直すべきだと提言する見解を示した。

提言は「今次の危機の経験・反省を踏まえ、新たな危機にも柔軟に対応できる強靭(レジリエント)なサプライチェーンへの変革が不可欠」と指摘。「製品の用途や性質に応じてボトルネックとなる事態を想定し、その解消のためにどのような措置を講じるのか、製品の類型ごとに精緻な議論が必要ではないか」との問題意識を表明した。

物資の類型として、マスクや医療従事者向け防護服、ワクチン、人工呼吸器、テント、毛布といった「緊急物資」と「その他の物資」に分け、このうち緊急物資については「国際情勢に左右されない緊急時の確実な供給システムを補完的に構築」するよう提案した。

さらに、緊急物資の安定的供給体制確保へ取り組むべき課題として、
・生産・在庫管理で企業間連携を支える対話の枠組みの在り方
・国内生産拠点への立地補助などの支援
・関連部素材のリサイクル推進
・さまざまな主体による国内備蓄の仕組みの検討
・各国間での平時からの情報共有の枠組み、貿易制限措置の扱いについての検討
・国際的な相互融通などの検討も含めた第三国支援の在り方
――を列挙した。

自動車や電子部品は調達先多様化と国際物流確保を提唱

一方、「その他の物資」については、緊急時に供給の混乱が生じるため「平時の競争領域での効率性との両立が必要」と説明。一概に日本への生産回帰を進めるのではなく、特定の国・地域に偏らない調達先の多様化などを推進することへの期待をにじませた。

このうち、自動車や電子部品、素材などは「チョークポイント(戦略的に重要な箇所)を精緻に把握し、調達多様化で途絶しにくいシステムを構築」と提示。食料やエネルギー、重要鉱物についても調達多様化や国際物流確保が重要との見解を示した。機微に関わる重要技術に関しては経済安全保障の国内体制強化や有志国との連携を明記した。

(藤原秀行)

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