KYBデータ改ざん問題、全国では22件
油圧機器大手KYBと子会社のカヤバシステムマシナリーが建築物用の免震・制振装置に関する性能検査記録データを改ざんし、国の基準や顧客との契約内容に適合しない装置を出荷していた問題で、埼玉と千葉、愛知の3県と神戸市で合わせて11件の物流施設に当該の免震装置が使われている疑いがあることが10月18日、ロジビズ・オンラインの調査で明らかになった。
各県の報道発表資料によると、愛知県は同日時点で、所管している公共施設と民間施設の計40件で問題の装置が使われている可能性があると説明。このうち物流施設は2件となっている。
埼玉県は今月17日、県内の公共施設と民間施設の計38件で、当該製品が使われている疑いがあると発表。県都市整備部建築安全課によれば、この中には物流施設が6件含まれている。
千葉県も17日、36件の各種施設に当該製品が使用され、このうち物流施設は2件と説明。神戸市も17日、市内の各種施設17件に当該製品が導入され、物流施設1件が該当すると発表した。
各自治体は所有者の了解を得られていないことなどを理由に、具体的な施設名は公表していない。
また、この3県以外の都道府県について18日夕時点で詳細はまだ確認できていない。ただ、島根県に関しては該当する物流施設がないことが分かっている。
19日午後に了解得られた施設の具体名発表へ
KYBは今月16日、不適合の製品について、調査中のものを含めて全国のマンションやオフィスビル、病院、庁舎など986の物件に免震・制振装置を設置したと発表(不適合かどうか現時点で不明のものを含む)。このうち、物流施設は免震装置が22件あった。都道府県別の内訳は18日夕時点で不明。
問題があったのは、免震・制振装置に使われているオイルダンパー。性能検査で国や顧客企業が求める数値内に収まっているようデータを改ざんし、出荷していた。不正は2003年から約15年続いていたもようだ。
管轄する国土交通省は震度7程度の地震でも倒壊する恐れはないと説明しているが、KYBに対し不適合製品の迅速な交換、原因究明と再発防止策の報告、相談窓口の設置などを指示した。KYBは19日午後、不適合製品を納品した建築物のうち、所有者らの了解を得られた施設の具体名を公表する見込み。
15年にも東洋ゴム工業が免震装置の性能に関するデータを偽っていたことが発覚しているが、今回は該当する建築物の規模が同社を上回っている。物流施設以外にも、東京都庁などさまざまな建物で当該製品が使われているとみられる。近年地震が頻発し、災害対応の重要性が増す中で明らかになったKYBの問題行為だけに、同社のモラルが厳しく問われそうだ。
(藤原秀行)