業績不振で自主再建困難と判断、一部事業譲渡の可能性も
日本郵政が子会社でオーストラリアの国際物流大手トールホールディングスの売却を検討していることが明らかになった。
トールは国際物流を強化するため日本郵政が2015年に約6200億円を投じて買収したが、業績の不振が続いている。日本郵政は新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に早期の物流需要回復が期待しづらいこともあって、トールの自主再建は困難との判断に傾いている。
既に複数の大手証券会社に対し、売却交渉を進める上で助言を得るアドバイザーへの就任打診を始めているもようだ。トールが展開している事業分野ごとに収益性などを精査した上で、会社全体を譲渡するか、事業単位で売却するかの方針を詰める見通し。ただ、新型コロナウイルス禍で世界経済が低迷する中、適正な価格で売却先を見つけるのは容易ではなさそうだ。
日本郵政は8月13日夜、「現在、経営改善に向けたさまざまな可能性について検討しているが、具体的に決定したものはない。今後、開示すべき事実が決定された場合には速やかに公表する」との談話を発表した。
日本郵政はトールを傘下に収めることでアジア・太平洋地域の物流網拡充を図ったが、17年3月期には約4000億円の減損損失を計上、日本郵政は民営化後初の赤字となった。
18年には日本郵政とトールが折半出資して日本で物流会社を設立、トールの経営資源を日本国内で有効活用しようと取り組んできたが、トールを軸とした国際物流事業は20年3月期が86億円の営業赤字に陥り、浮上の兆しが見えないままとなっている。トールの経営陣刷新や人員削減などにも取り組んできたが、収益面で大きな成果は表れていない。国際物流強化の戦略は練り直しを迫られる。
(藤原秀行)