パナソニック子会社ATOUN・藤本社長、活躍の領域拡大に強い意欲
パナソニック子会社で物流現場などの作業負荷を軽減する着用型ロボット「パワードウェア」を手掛けるATOUN(アトウン、奈良市)の藤本弘道社長は10月6日、東京都内の鈴与拠点で新たなパワードウェア「ATOUN MODEL Y+kote」のメディア向け発表会を行った際、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。
藤本社長は、パワードウェアの普及促進の狙いとして、物流現場の生産性改善と併せて、作業負荷軽減による働きやすさの実現にも主眼を置いていると強調。今後は動作などのデータを蓄積し、作業時の安全性向上につなげていきたいとの意向を明かした。
また、将来はパワードウェアを利用して作業の技能伝承をサポートできるようにすることも目指していく考えを示し、パワードウェアが活躍できる領域の拡大に強い意欲をのぞかせた。
藤本社長
「日本の物流現場は細かいスキルが求められる」
パワードウェア「ATOUN MODEL Y」はベストのように背中に羽織ることで腰をサポートするタイプ。既に日本航空(JAL)グループで空港の地上業務を手掛けるJALグランドサービスなど、力作業が日常的に行われている現場で採用が広がっている。ATOUNは腕に装着して作業を助ける「kote」も組み合わせることで、腰と腕への負荷を同時に減らせるようになるとアピールしている。
藤本社長はパワードウェアの活用に関し「もちろん作業の効率を上げるという意味もあるが、その前段として、腰や腕などへの負荷を減らすことでずっと働き続けたいと思っていただけるような環境整備に貢献したい。定着率を上げることが可能になる」と述べ、物流現場の人手不足緩和を後押ししたいとの思いをアピールした。
併せて、「物流業界は結構なスキルが要求される。パレタイズにしても、荷物がずれないよう細かく調整しながら積み上げている。さまざまな荷物に目配りしながら作業を進めるというのが特に日本の現場の特徴。そうしたニーズに応えられるようにしていきたい」と語った。
今後の展開として、藤本社長は各現場でのパワードウェアの動作に関するデータを蓄積・分析し、作業をより安全に行えるよう支援していくことを視野に入れていると説明。
さらに、ATOUNが今年6月に発表した、10年後の2030年を見据えてパワードウェアの活用方法を展望したビジョン「ATOUN Vision 2030」でも言及している通り、物流現場などで収集した動作データを有効活用し、将来は基本的な作業の進め方をパワードウェア経由で身に付けられるようにしていきたいとの構想をあらためて明らかにした。
具体的には、基本的な動作のデータをクラウドのサーバーから利用者がダウンロードし、パワードウェアに取り込むことで、初めての人でも短期間で物流現場の動きを習得できるようにすることなどを想定していると解説。「鈴与さんの拠点での実地試験も通じて、作業効率の改善や安全性向上のデータを蓄積し、2030年くらいにはある程度、現場作業の最初のスキルをパワードウェアで学びやすくする環境を実現していきたい」と語った。
「ATOUN MODEL Y+kote」のデモの様子※クリックで拡大
(藤原秀行)