地元貢献に注力、完成後に災害時の住民避難受け入れも想定
総合不動産事業に参入したアライプロバンス(東京都墨田区江東橋)は、第1号の自社開発案件として今夏に千葉県浦安市で着工した物流施設に続き、近隣の東京都江戸川区東葛西で2件目の開発計画の検討を本格化させている。
現状では浦安と同じく、物流施設の建設が検討の軸となっているが、他のアセットも選択肢に含めている。約1・7万坪(約5・6万平方メートル)の敷地は南北の方向に細長い形状をしているため、2分割してそれぞれに物流施設を開発することなどを視野に入れており、最初の工事開始は2022年ごろとなる見通しだ。
用地の有効活用を徹底するため、着工するまでの間は「一時使用賃貸借」の利用を募集している。工業地帯の一角に位置しており、周辺企業など向けに、大規模工事に伴う資機材置き場といった多様な用途で貸し出したい考え。アライプロバンスとしては一時使用してもらった後、将来物流施設を開発した場合のテナント企業候補となってもらえるよう、優良な関係を構築したいとの思いもある。
東京・東葛西の開発予定地。現在は一時使用を受け付けている(2019年撮影・アライプロバンス提供)※クリックで拡大
アライプロバンスは1903年創業の金属加工業「新井鉄工所」が前身。油井管の継ぎ手(カップリング)を得意としてきたが、経営環境の変化などを踏まえ16年に工場の稼働を終了。保有している不動産を基にした総合不動産業への転換を進めている。
マルチテナント型物流施設「(仮称)浦安市港物流センター」の建設を進めている千葉県浦安市の用地は新井鉄工所時代の旧工場跡地。地上4階建て、延べ床面積は約3・5万平方メートルを計画している。竣工は21年10月の予定。東京都心へのアクセスに強みがある立地だけに、既に引き合いが活発に寄せられているという。
東葛西も同様に新井鉄工所時代の工場跡地だ。土地区画整理事業に参画する前提で地元の江戸川区と調整を始めている。開発の進め方としては、南側にマルチテナント型物流施設、北側によりコンパクトなサイズのBTS型物流施設をそれぞれ建てるといった有効活用策を日々検討している。仮に2分割して開発を展開した場合、全体の工事が完了するのは6年後の26年ごろになるとみられる。
着工に至る過程で、今後4年間を区切りとして、用地を最低30坪から貸し出すことを開始。用地内の南側のスロープから24時間入出場を可能にしている。アライプロバンスは車やトラック、建設用資材の置き場などとして使用することを提案しており、申し込みも寄せられている。成約時には同社が広告宣伝費を補助する特典も準備している。
併せて、敷地には地上2階建て、延べ床面積約145坪(約480平方メートル)の事務所が残っており、倉庫や一時的な事務所としての利用を受け付けている。
新たな営業部長も内定、事業拡大へ着実に布石
アライプロバンスの新井嘉喜雄社長は「浦安の1号案件に着工してようやく一安心できた。事業転換に伴う社名変更など、新たに始めたことがいろいろと軌道に乗ってきた」と説明。新井太郎専務は、今年12月に新たな営業部長の入社が決まるなど、総合不動産事業の拡大に向けて着実に布石を打っていると強調。「城東エリアで長年事業を続け、地域の歴史と文化を知り尽くしているのは大きなアドバンテージ。物流施設などの開発でも地域のお役に立ちたい」と語り、城東エリアでの優良な用地取得に強い意欲を見せた。
田草川直樹取締役は、東葛西の案件について「雇用や税収の面で地元に貢献できる。単純に当社の収益を伸ばすという話ではなく、開発プランに関しても地域貢献できる要素を盛り込めれば非常に面白く、意義のあるものとなる。例えば(物流施設を開発した場合は)災害時の一時避難場所に使えればいいかなという考えもある」と語り、地域への貢献を重視した開発にしたいとの思いをあらためてアピールした。
取材に応じる新井社長
新井専務
田草川取締役
(文・藤原秀行、写真・川本真希)