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【独自取材】物流の知見をユーザーと共有できる仕組み構築を提案

【独自取材】物流の知見をユーザーと共有できる仕組み構築を提案

souco新COO ティエンテック・ティオ氏独占インタビュー(後編)

倉庫の空きスペースと保管を希望する荷物のマッチングサービスを展開しているスタートアップ企業soucoのCOO(最高執行責任者)に9月1日付で就任したシンガポール出身でヒューレットパッカード(HP)やDHLサプライチェーンなどに在籍したティエンテック・ティオ氏はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

同氏はマッチングサービスに対するユーザーのロイヤルティー(愛着度合い)を高めるため、soucoとユーザーの間で物流業界の動向などに関する有益な情報の共有が可能な仕組みを構築するとのアイデアを披露。マッチング自体も倉庫スペースだけにとどまらず、周辺領域の輸配送や庫内作業労働力確保などに広げていくことに強い意欲を見せた。

インタビューに同席した同社の中原久根人CEO(最高経営責任者)は物流の知識や経験が豊富なティエンテック氏を起用することで、今後の成長に不可欠な物流に精通した人材を物流業界から招きやすくなるとの期待を語った。インタビュー内容の後編を掲載する。


インタビューに応じるティエンテック氏

物流業界と同じ“周波数”で伝わる言葉を発したい

――お互いに初めて顔を合わせた時の相手の印象はどうでしたか。
中原氏
「最初に会ったのは今年の7月終わりごろでしたが、すごい方だなと感じました。われわれが事業拡大していく上で非常に必要な経験、知識、マネジメントのバックグラウンドを備えていて、こんな方に当社のビジネスへの関心を持っていただければいいなと思っていました。まさかわれわれのようなスタートアップ企業に来てくれるとは、と驚きましたが、将来的にこういうサービスを展開していきたい、マーケットをこういうふうに考えているなどとお話をさせていただく中で、かなり方向感が一致しました。早い段階で、ビジョンの共有ができたのかなと思っています」

ティエンテック氏
「最初は一緒に食事をしながら、今後のビジネスモデルを考えているという話を聞きましたが、倉庫スペースのマッチングは私自身、20年間のロジスティクスの経験の中でもそこまで考えは及びませんでした。非常にいいアイデアだなと思いました。ただ、物流業界に詳しくなければ、アイデアがあっても実現するには時間が掛かります。物流業界の方々に伝わるような言葉で、いわば同一の周波数で一緒に関係される方々と話をしていかないと、やはり意思疎通が難しいことがあります。現場の業務効率化や生産性向上で経験を重ねてきた私が協力することで、今後も新たに実現できるアイデアがかなりあるのではないかと感じました」

――soucoで今後どのようなことにトライしていきたいですか。
ティエンテック氏
「マッチングサービスはユーザーの数がとても大事です。多ければ多いほどマッチングできる確率が高まりますから。マッチングサービスは短期間の倉庫スペース利用が多いですが、ユーザーの皆さまには短期間の使用で終わらず、常に倉庫スペースマッチングのプラットフォームに参加していただきたい。次に倉庫スペースが必要となった時に当社のことをすぐに思い出してもらえるよう、サービスのUI(ユーザーインターフェース)をさらに改良していく必要があるでしょう」
「マッチングサービスに対するユーザーのロイヤルティー(愛着度合い)を高めていかなければなりません。海外出張に行った時に国は異なってもいつもお気に入りの同じ系列のホテルを使ってもらえる、というのと同じような感じにするのが理想です。倉庫スペースを押さえる必要がある時に使っていただくのはもちろん、そうでない時にもお客さまにsoucoのサービスへの満足度を高めるため、例えば物流業界の情報などを発信したり、ナレッジシェアリング(知見の共有)をしたりできるような仕組みを作ることも1つのアイデアだと思います。今後、マッチングサービスで競合との競争が激しくなってきても差別化できるポイントを考えておく必要があります」
「マッチング自体も倉庫スペースにとどまらず、周辺領域に拡大していけばさらに需要を高めていくことにつながるでしょう。輸配送や庫内作業の労働力確保といったところが考えられるのではないか。そこは私自身の物流に関する経験を生かせる部分だと思います」

――ナレッジシェアは具体的に考えているイメージはありますか。
ティエンテック氏
「まだ具体的に検討しているわけではなくて、私自身が個人的にイメージしている段階ではありますが、物流業界のトレンドや、海外でどのようなことがはやっているのかといったようなことを紹介する、しかも単に当社から情報発信するだけでなく、もっとインタラクティブ(双方向)な形でできないかと考えています。メールを発信するだけではなかなか読んでいただけないでしょう。いかにアクティブなユーザーを数多く生み出していくかを今後の課題として考える必要があります」


取材に応じる中原CEO

まずは日本で足場を固める

――ティエンテック氏をCOOに招聘したということはマッチングサービスの海外展開も念頭に置いているということでしょうか。
中原氏
「やはりサービスをより深めていく、あるいはこれから組織を大きくしていく中でしっかりとマネジメントできる体制を構築していくために、ティエンテック氏がCOOに就任することで、より業界経験者の方に来ていただきやすい環境を作り出せるのではないかと思っています」
「もしかしたら今後海外展開が視野に入ってくるかもしれませんが、向こう数年は日本国内で成長を持続できるサービスやマネジメントの在り方を設計し、物流業界の方がフィットしやすい環境をつくっていくことを優先していかなければならないと感じています。日本の市場はまだまだ大きいですし、優先順位は今のところ日本が先です。海外というよりはむしろ日本で事業基盤をしっかり強化し、足場を固めていくためにティエンテック氏に来てもらったということです。もちろん今後については、例えば倉庫スペースではない部分からマッチングサービスを海外で展開していくこともあり得るかもしれません」

ティエンテック氏
「もちろん海外展開していく可能性はあります。まずはわれわれが日本で事業を成長させていった上で、じゃあ次はどこの国に倉庫スペースのマッチング需要が出てくるタイミングがあるかと見ていく段階になるでしょう。東南アジアはまだまだ物価も安いため、現状では倉庫スペースが欲しいとなれば、マッチングを利用するのではなく倉庫自体を新築しようという話になるでしょう。成長が続いて建築などのコストが上昇すれば、無駄なものはより意識されるようになりますから、マッチングという考え方が非常に着目されるようになる。成長している国ではシェアリングサービスを始めるタイミングを見極めるのが難しいですね」

――物流業界自体に関して感じるところはありますか。
ティエンテック氏
「既に指摘はされていますが、プロセスの標準化ですね。センターの庫内作業を見ても非常に複雑で、個々の現場によってやり方が異なっている。3PL事業者が業務を改善しようとしてもかなり時間が掛かります。最近注目されている『フィジカルインターネット』(トラックや倉庫、パレットといった物流のフィジカル=物理的=な要素をあらゆる事業者や利用者が共有、その都度最適なアセットを使えるようにし、輸送・保管効率向上などにつなげる手法)も取り入れるなどして、少しずつでも着実に課題を解決していければいいなと思います」


連携の握手

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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