定期コンテナ船会社ONEの業績悪化響く
邦船大手3社に逆風が吹き付けている。10月31日に各社が発表した2019年3月期の連結業績予想は、日本郵船と川崎汽船が純損益で赤字を計上、商船三井も大幅な下方修正を強いられた。
その背景にあるのが、3社の定期コンテナ船事業を統合、17年に誕生した「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」(ONE)の業績悪化だ。
19年3月期の税引き後損益が当初計画していた1億1000万ドル(約124億円)の黒字から6億ドル(約680億円)の赤字に転落する見通しとなった。
ONEは3社が足並みをそろえて事業規模を拡大することで海外勢に対抗するのが狙いだった。しかし、今年4月の営業開始直後から必要な書類を顧客に発行できなくなるなど事務作業が混乱。獲得した積み荷が計画を下回り、燃料油の高騰への対応にも追われた。堅調な海運市況とは裏腹の幸先悪い船出となった。
3社は「ONEで導入したITシステムに対するスタッフの習熟度が十分でなかったことや、対応するスタッフ自体の不足を背景として、ブッキング受け付けやドキュメンテーション業務が滞り、お客さまに多大なご不便をお掛けする事態が生じた」と釈明。
「既に習熟度、スタッフ不足の問題は対処されており、正常な状態に復帰している。ONE発足初年度のシナジー効果は期初の想定を上回るペースで現れている」と強調している。
世界経済は米中両国の貿易摩擦などが先行きに影を落としている。ONEの事業基盤強化や業務効率化が遅れれば、さらなる業績悪化にもつながりかねないだけに、構造改革が急がれている。
2019年3月期の連結業績予想
売上高 純損益
日本郵船 18,100(▲17・1) ▲60 (前期 201)
商船三井 12,000(▲27・4) 170(前期▲473)
川崎汽船 8,200(▲29・4) ▲200(前期 103)
※単位は億円、以下切り捨て。売上高のかっこ内は前期比増減率%。▲はマイナスもしくは赤字
(藤原秀行)