物流センターの共同構築にも意欲

物流センターの共同構築にも意欲

楽天と日本郵便の提携合意発表会見詳報(後編)

楽天と日本郵便は12月24日、物流領域の戦略的提携に向けた基本合意書を締結したと発表した。両社首脳らが同日開いた記者会見の詳報の後編を掲載する。


会見に臨む楽天・三木谷会長兼社長(両社提供、以下いずれもクリックで拡大)

【質疑応答】

「情報を早い段階で得られれば、今と同じ体制でも発送の処理が可能」

――今回の提携の背景は何か。人手不足やデータ分断など、どういう課題があり、今までの提携でできていなかったことは何と分析しているのか。これから具体的にどのような効果を見込むか。楽天は今年に入って実店舗のアライアンスが増えている。金融、モバイルを含めた提携で、郵便局のネットワークをどう活用していくのか。

日本郵便・衣川和秀社長
「人手不足という話があり、先ほど来、お話ししているように、eコマース市場の拡大、いわゆる新型コロナウイルス禍に端を発した、インターネットでの買い物の需要の高まりということで、物量は今後もかなり早いスピードで増加していくのではないかと考えている。そうした中で、現在のところ、人手不足が実際上の問題として現れているということではないが、このペースで増加していくと、やはりいろんなところで処理能力が、今のままでいいのかという話は出てくるんだろうと思っている。そういった中で、私ども自身が持っている情報を、いわゆる早い段階で利用することができないか今検討している」
「早い段階とは、最初に荷物をお引き受けした段階で、その情報が次の段階、さらに次の段階、最終的には配達をする段階まで早い時期に、事前に伝えることができれば、あらかじめいろんな準備をしていくことができるので、今と同じ体制、今と同じ労働力でもいろんな処理ができるということになる。それをさらに上流工程までさかのぼり、楽天さんのお客様が商品をお買いになる段階で、いろんなデータを連携していただくことができれば、もっと早く準備できるし、さらには楽天さん自体がいろんな需要予測をやられていると思うが、そういった需要のデータ、ニーズのデータが分かれば、私どもとしても、この時期には楽天さんからこれくらいの荷物が出てくるのかなということが、あらかじめ分かるのではないかということを期待している。こういったことを来年3月に向けて、実際にどこまで効果として期待できるかを詰めていきたいというのが趣旨だ」

楽天・小森紀昭執行役員コマースカンパニー ロジスティクス事業 ヴァイスプレジデント
「先ほども少し背景を説明させていただいたが、やはりコロナ下の急拡大というか、ここまで拡大していくことをあまり予想していなかったくらいの勢いで(eコマースの需要が)拡大している。そこでやはり、初めて買っていただいたお客様が、その後コロナの時だけかと思ったが、しっかりとリピートにつながっているというか、一度ECで買っていただけたらそのままつながって(その後も)ECで買っていただけそうだなということを考えると、やはり使っていただいている母数が増えていて、このままの形でどんどん使っていただけると、今は大丈夫でも、将来、3~4年後にどれくらいの(荷物の)個数になっていくのかということを考えた時に、もっと深い提携をすべきじゃないかというのが発端だ」
「今はまだ一桁のEC化率、7%とか8%とか言われている中で、将来的にはそれが、例えば他の国と同じく20%くらいまで高まっていく時に、そうするとECの物量は今から単純に考えても3倍増になっていくので、こういう増える前にしっかりと準備をしていきたいというのが大前提としてあるのかなと思う」
「もう1つが、われわれが2018年からデリバリー構想ということで、独自の物流網の構築をやっていく中で、やはりどんどん、先ほど来、衣川社長からも言及があった通り、情報が早めに分かれば分かるほど、後工程の準備が楽になるので、そういう面では、これまでは今日こういう荷物が出ますという情報をお渡ししていただけだったが、将来このような荷物が出ていきます、あるいは今やっている需要予測もしっかりやりながら、もっと密な情報連携をすることで、配送も全体が効率化していくのではないか。その効率化をしていくためには、システムをお互い、分断するのではなくて、やはりある程度共有化したようなものを持った方がいいんじゃないかというあたりを、ぜひ検討させていただきたいというのが背景になっている」

楽天・三木谷浩史会長兼社長
「今の物流面に関しては、スーパーセールになると私も10個くらい商品を買って、翌日から玄関のチャイムが鳴りまくるというような状況になるが、必ずしも今週必要というものではなかったり、例えば『鬼滅の刃』の新刊が出るとなると、だいたい誰が新刊を買うかは分かっているので、そうすると全て大本の物流センターに戻らなくても、あらかじめそういうところに確保しておくというようなこと、データが物流の勝負になっている中で、新しい取り組みがさまざま出てくるのではないかと思っている」
「金融とモバイルに関しても、キャッシュレス化がすごい勢いで進んでいく。例えばスウェーデンでは紙ベースのカレンシー(通貨)はやめようみたいな話がある中で、われわれの方はそこを中心にやってきたが、どうしてもやはり(物流の)足回りが脆弱。一方、JPさんにとっては、おそらくデジタル化に対して、われわれは金融もカードもデジタルでやってきているので、そのプラットフォームをいろいろご活用いただけるんじゃないかということで、広範に参加するということでご相談させていただきたい」


会見後の撮影に応じる(左から)楽天・小森氏、三木谷氏、日本郵政・増田寛也社長、日本郵便・衣川社長(両社提供)

「ワンデリバリー構想をさらに拡大・加速」

――今回の提携はいつごろ、どちらから持ち掛けたのか。楽天は18年から物流強化に取り組んでいるが、今回の提携があっても、そちらの投資強化は続けるのか。

日本郵便・衣川社長
「今年の7月に楽天様から次世代に向けて一緒に検討しませんかというお話をいただき、本日に至っている」

楽天・小森執行役員
「(包括的な物流サービスを出店者に提供する)ワンデリバリー構想自体はもちろん、楽天のみで全てやっていくというものではなく、もともといろんなパートナーさんと一緒にやらせていただきたいというような中で始まった構想。そういう面では、今回の件も含めて、楽天サイドから見ればワンデリバリー構想のさらなる拡大、加速というような位置付けになると思っている。そういう面ではまだまだ、われわれの物流センターも物流網も今、しっかり構築中ではあるが、カバーできる範囲が先ほど申し上げた通り、今後ますます伸びていく中で言うと、まだまだカバーできていない部分があるんじゃないかということを考えると、もちろんここから先は共同で、一緒にやらせていただくようなセンター構築も出てくるんじゃないかと思っている。そのあたりも含めて、単独でやるというよりもいろんな方々と共同投資も含めて、構築できていければいいんじゃないかと思っている」

――今回の協業は、楽天市場の出店者によってどういうメリットがあるのか。オープンプラットフォームは、楽天の場合は物流でKDDIと提携しているが、他社の仮想モールに出展する店舗にもメリットがあるのか。

楽天・三木谷会長兼社長
「当然、物流は品質、速さ、値段の3つが大きな要素だと思うが、それをより効率的なネットワークを構築することによってできると、そのためには先ほど申し上げたような、今までのように、オーダーが来たらそれを逐一、というよりはまとめて配送するとか、あるいは今おっしゃったように、楽天市場以外の店舗さんの荷物をまとめてお持ちするというようなことも、当然今回の提携のビジョンの中に入っている」

楽天・小森執行役員
「少し捕捉すると、オープンプラットフォームのところについては、店舗さんの他の、受注された商品の配達に加えて、やはり他の事業者の方々やそういうところともしっかりと組んでいけると思っている。配送に携わっている方々、もしくは店舗の物流業務をされている方々としっかりと協業できれば、と思っている」

(藤原秀行)

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