ヤフーの岩田社長退任要求「上場企業のガバナンスを無視」

ヤフーの岩田社長退任要求「上場企業のガバナンスを無視」

アスクル独立役員会メンバーらが強く非難

アスクルの社外取締役と社外監査役で構成する「独立役員会」のメンバーが7月23日、東京都内で記者会見し、資本・業務提携相手のヤフーがアスクルの岩田彰一郎社長の退陣を求めていることに関して見解を表明した。戸田一雄独立社外取締役(元松下電器産業=現パナソニック=副社長)は「上場企業のガバナンスを無視している」とヤフーの行動に強い懸念を明らかにした。

アスクルはヤフーに対し、アスクルの個人向けインターネット通販「LOHACO(ロハコ)」成長という目的を達成できる状況になくなったことなどを理由として、提携解消の協議入りを求めている。戸田氏の発言はヤフーに反発するアスクルの姿勢を支持し、ヤフーを強く非難したものだ。


会見する戸田氏

戸田氏は会見で、「アスクルの指名・報酬委員会で決定した取締役を選任し、来年のキャビネット(経営陣)がどうあるべきか時間をかけてしっかり議論、結論を出していくのが日本の正しい企業の在り方」と指摘。アスクルの指名・報酬委が岩田氏ら再任との結論を出した後、定時株主総会直前になり同氏に直接辞任を迫ったヤフーの対応は問題があるとの見方を強調した。

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ヤフーがロハコ事業の譲渡を求めたとしていることについても、ヤフーがアスクル株式の約45%を握る筆頭株主という関係の下、ヤフーも展開しており競業に該当するECの譲渡をアスクルに要請するのは「透明性があるのか、少数株主の利益が担保されるのか、といった点に全く頓着がない」と批判した。

一連のヤフーの行動をめぐり「資本市場には最低限のモラルが存在していると過信していた。大変反省している」と失望感もあらわにした。

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アスクルの第2位株主のプラスが岩田氏退任要求でヤフーと足並みをそろえていることには「プラスはもともとアスクルを生んだ親会社。親は子どもが困っていたら子どものことを考えないといけないのではないか。一緒の仲間として考えてほしかった」と不満を表明。

会見に同席したアスクルの安本隆晴独立社外監査役(ファーストリテイリング社外監査役兼務)も「非常にがっかりした。もうちょっと長い目で見てほしかったのが正直な気持ち」とプラスの反応に失望を隠さなかった。

独立役員会のアドバイザーを務める久保利英明弁護士は「ガバナンスは資本市場を機能させるための重要なファクター。『過半数を持っているから何をやってもいい』という考え方は適切ではなく、乱用的買収者と見ることもできる」と語り、ヤフーの行動を問題視した。

ただ、記者からヤフーによる岩田氏再任拒否への対抗策を問われたのには「どういう手があるのか考えるのは現実に業務執行している取締役会の問題。何か申し上げるのは業務執行への介入になりかねない」として明言を避けた。また、定時株主総会延期の可能性に関する質問には「(アスクルの)独立役員会や執行部から相談は全くない」と明らかにした。

同じくアドバイザーの松山遥弁護士は、指名・報酬委を経ず定時株主総会1カ月前になって『トップには辞めてもらう。後任は好きに選んでほしい』と言うのはいかがなものか」と疑念を呈した。併せて、「これまでの経緯を見ると、ヤフーとアスクルの経営陣の信頼関係は損なわれている。ロハコ事業で協力できる状況にはない」と従来の見解をあらためて示した。


会見に臨む(右から)戸田、安本、久保利、松山の各氏

(藤原秀行)

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